1960年代後半のファッションの特徴は機能美を追求するものだった。「女性は(従来のようなスタイルで)女性らしく振る舞わなくてもいいのではないか」という発想は女性の服装美学の中でははじめて出てきたものだった。
やや伝統的な手法でマニッシュなデザインがイヴ・サンローラン。前衛的な手法で表現したのがクレージュ、エマニュエル ウンガロなど。いずれも機能美の追求が根底にある。ピエール カルダンは、験的でアヴァンギャルドなものが多く、実用的でないものも多くあった。そして「シルエットの変化」を高級ファッションの主流にはできなくなったのも60年代。一つのシルエットがシーズンの流行の基本パターンというようには行かなくなった。
イヴ・サンローランは1960年代後半にパンツスタイルを積極的に提案。シティ・パンツと名づけられ、パーティーに着用するようなドレスウェアとしてではなく、日常着としてスカートに代わる女性の基本的な服装スタイルに定着させようという意味が込められていた。
パンツの特徴はストレートになだらかな線をもつシルエットである点。非常に既製服しやすい形でもあり、一般的に普及させる上でも全く問題なかった。このエレガントなパンツ・スタイルは、始めは大きな流行にはならなかったが、徐々にミニ・スカートに代わる新しい女性服のスタイルになって行く。そして、徐々にマスファッションの世界に取り込まれていく。アメリカで売れ始めたことがきっかけだった。
パンタロンとは長ズボンやパンツ類をさすフランス語。日本では裾広がりの長ズボンを呼ぶ。ここで書いてあるパンタロンはフランス語定義、パンツ類を指している。また、パンタロン自体はクレージュが1960年代前半に提案しているが、どちらかというとイヴニングドレス的な傾向が強く、「日常着」を意図したイヴサンローランとは意図が異なる。
アメメリカントラッド(通称:アメトラ)はイギリスの伝統的なスタイルの影響を強く受けている。二度の大戦での従軍兵士や、欧州への旅行者の増加で、イギリスのスタイルを目にしたアメリカ人が影響を受け、アメリカで形成されていった。
アメリカントラッドのブランドとして有名なのが、ブルックスブラザーズとラルフローレン。ラルフローレンが活躍しだしたのは、60年代も終わりに差し掛かった頃だが、ブルックスブラザーズは、19世紀に誕生。(ブルックスブラザーズは自社ではトラッドとは言わず、クラッシックと表現する)
アメリカントラッドは1960年代のアイビーファッションブームが有名だが、そのスタイルは、主にアメリカの伝統的なスタイルを指す。安定したライフスタイルを表現、流行に左右されることがない保守的かつ、ノストラジックなものだった・
ブルックスブラザーズはアイビーリーグの学生、比較的高い所得層をターゲットに、1960年代にはトラディッショナルスタイルを普及させた。
1960年代のトラッドスタイルの特徴は肩パッドをいれないナチュラルショルダー、シュルエッとは寸胴型のゆったりしたジャケットに細身のパンツ、シャツは襟をボタンで留めるものが特徴。