特に田中圭さんは、『図書館戦争』や『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』といった作品でも共演した、信頼の厚い俳優さんなので、その存在は私にとって非常に大きかったですね。
■土屋さんというと、明るく爽やかなイメージがあるのですが、本作のようなダークなキャラクターを演じることに、難しさを感じることはありますか?
土屋:実は私10代後半の頃は、割とエキセントリックな役柄を多く引き受けていたので、その類の演技に対して難しさはあまり感じてないんです。むしろそういった感情を爆発させる役柄を通して、自分の表現力も増幅できていると思うので、演じている最中は楽しさを感じるほど。
■具体的に、そんなダークな役柄を通して、演技に変化が出たと感じた作品は?
土屋:今思いかえしてみると、『人狼ゲーム ビーストサイド』。周りからも「今までの太鳳ちゃんとイメージが変わって良かった!」と、褒めていただいたのを覚えています。でも実際現場では、監督に対して、私がすごく反抗的な態度をとっていたかもしれません(笑)小春役同様、演技自体ではなく、その“狂っていく”役柄や物語に対して、当時から抵抗していたのだと思います。
■そういった役柄を演じる際に、心のケアやモチベーション維持で取り組まれていることは?
土屋:現場に入っている際は、その役を生きるのが私の役目なので、モチベーション維持というよりも、共演者の方といかに繋がれることを意識しています。そしてオフの時は、心のケアも含めて、自分の好きな食べ物をたっぷりと食べること!
それからダークな役柄に入り込みたいときは、『累-かさね-』で演じたサロメ役の台本や香水を持ち歩くこともあります。特に香水は、サロメの役になりきる為に、当時購入した“お守りアイテム”。たしか“好きな人を水にしちゃう”っていう、少し怖いストーリーを持つ香水なんですけど、シュっと吹きかけるだけで、当時の感覚が蘇って、自然と大丈夫だと思えるんですよね。
■明るいキャラクターからダークな役柄まで、幅広くこなす土屋さんですが、これまでの俳優生活で最も挫折を感じたことはなんでしょう?
土屋:私25歳になったのですが(2020年11月当時)、仕事を始めた当初は、俳優・モデルのオーディションが全く受からなくて、それが一番挫折を感じた瞬間だったかもしれません。
ある時、オーディションがあると聞いて現場に行った際、2時間以上待った挙句に「ごめん忘れてた」なんて連絡がきたこともあって。あの時は、涙を必死で我慢したけれど、お仕事で自分の存在が忘れられたことが、本当に苦しかった。そんな挫けそうな時は、“絶対見返してやる”って自分の心に誓うんですけどね。
■その悔しさを、演じる事へのバネにした?
土屋:はい。私は今でも1つの作品に対して、一度は挫折を感じるし、できないことに対して悩むことも沢山あるけれど、“仕事で悩んだことは、仕事でしか解決できない”と感じているのです。それをいかにエネルギーに変えられるかが大事。そうじゃないと、自分にとって意味がないじゃないですか。
落ち込むことは誰にでもできるけど、それだけだと凄く勿体ないので、これからもお仕事で挫けた経験は、自分の演技の糧として頑張っていきたいと思っています。
メガホンを取るのは、日本テレビ系列ドラマ「時をかける少女」、映画『3月のライオン』『ビブリア古書堂の事件手帖』などの脚本を手掛けた渡部亮平。自主製作映画『かしこい狗は、吠えずに笑う』では、2012年「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」をはじめ多くの映画賞を受賞するなど、脚本家としてだけででなく、監督としても高い評価を得た。
『哀愁しんでれら』の企画は、渡部亮平が次世代のクリエイター発掘のためのコンペティションである TSUTAYA CREATORS’ PROGRAMに出品し、2016年のグランプリを受賞したもの。今回、自身の完全オリジナル脚本で映画化される。
児童相談所で働く小春は、自転車屋を営む実家で父と妹と祖父と4人暮らし。幸せでも不幸せでもない平凡な毎日を送っていた。しかしある夜、怒涛の不幸に襲われる。祖父が倒れ、車で病院に向かうも事故に遭い、父が飲酒運転で連行され、火の不始末が原因で自宅は火事になり、家業は廃業に追い込まれ、彼氏の浮気を目撃(しかも相手は自分の同僚)…一晩ですべてを失う。そんな時に出会ったのが、8歳の娘・ヒカリを男手ひとつで育てる開業医の大悟。優しく、裕福な大悟は、まさに王子様のよう。彼のプロポーズを小春は受け入れ、不幸のどん底から一気に幸せの頂点へ。しかしその先には、想像もつかない日々が待っていた――
【詳細】
映画『哀愁しんでれら』
公開日:2021年2月5日(金)
監督:渡部亮平
脚本:渡部亮平
出演:土屋太鳳、田中圭、COCO、山田杏奈、ティーチャ、安藤輪子、金澤美穂、中村靖日、正名僕蔵、銀粉蝶、石橋凌 他
配給:クロックワークス