展覧会「篠田桃紅展 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち」が、横浜のそごう美術館にて、2021年4月3日(土)から5月9日(日)まで開催される。
篠田桃紅は、文字の形に囚われない“水墨抽象画”という独自のスタイルを確立した美術家だ。幼少期に父から書を学び、以後独学で書を極めた桃紅は、戦後、文字を離れて墨による抽象画を展開。1956年には単身で渡米して欧米のアートシーンを牽引し、現在に至るまで活動を続けている。
展覧会「篠田桃紅展 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち」では、初期作品、文字を解体して墨の色や線を追求することで独自の抽象表現を打ち立てたニューヨークでの挑戦とその後、そして極限まで切り詰めた表現を追求する現在にまで至る桃紅の変遷を、作品や資料など約80点からたどる。
幼少期より書と古典の素養を身に付けてきた桃紅は、22歳で独立。27歳の個展では、既存の書の枠に囚われない自由な作品を発表して「根無し草」と評されるも、自ら希求するものが書の枠組みから離れたものであることを自覚し、終戦後は墨による抽象に本格的に取り組み始める。第1章では、《伝》や《萩原朔太郎 詩》など、渡米以前に制作された初期作品を展示する。
日本人は書の作品を見るさい、文字の形と意味を捉えようとする。そこで桃紅は、1956年、文字に意味が入り込まない海外で作品を発表するべく単身で渡米。ジャクソン・ポロックらの抽象表現主義が興るニューヨークを拠点に、欧米各地で発表を続けた桃紅の作品は、伝統的な「書」から墨線による抽象へと展開した「絵画」として高く評価されることとなる。第2章では、渡米、そして帰国後から1960年代までの時期にフォーカス。《時間》や《行人》など、墨の飛沫や激しい筆勢に特徴付けられる水墨抽象画を目にすることができる。
桃紅のアメリカでの活動は充実していたものの、2年で終わった。それは、アメリカの乾いた気候では、墨が紙の上でかすれるためであった。日本の湿潤な環境でのみ墨の滲みと広がりが生きると悟った桃紅は、日本での制作を開始。墨の特性を活かした太い線が、緊張感を湛えた面を構成する抽象画を手掛けるようになる。第3章では、《秘抄》や《月読み》など、画面の左右分割、明暗の対象、朱の効果が現れる1970年代から、洗練の度合いを深めてゆく1980年代までの作品を紹介する。
1990年代以降、金や銀、朱などが加わり、桃紅の画面はより穏やかに、奥行きあるものへと変わった。そして、画面上の余分なものを徹底的に削ぎ落とすことで、ひと筋の線の存在感、墨の面と余白が織りなす多彩な表情が際立つようになる。第4章では、1990年代以降の桃紅作品を展示。金泥や銀泥、朱も使用した《風の影》や、2000年代以降に手掛けられるようになる、金地や銀地を背景とした《永劫》と《一瞬》などの作品から、新たな造形を探求し続ける桃紅の“いま”を紹介する。
展覧会「篠田桃紅展 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち」
会期:2021年4月3日(土)〜5月9日(日) 会期中無休
会場:そごう美術館
住所:神奈川県横浜市西区高島2丁目18-1 そごう横浜店 6階
開館時間:10:00~20:00(入館は閉館30分前まで)
※そごう横浜店の営業時間に準じて、変更となる場合あり
料金:一般 1,200円(1,000円)、大学・高校生 1,000円(800円)、中学生以下 無料
※いずれも税込
※( )内は前売料金、およびミレニアム/クラブ・オンカード、セブンカード・プラス、セブンカードのいずれかの提示者の料金
※前売券の販売に関しては、美術館ホームページを確認
※障がい者手帳各種の所持者、および同伴者1名は無料
※事前予約不要(入場制限を行う場合あり)
※展覧会の中止や延期、内容が変更となる場合あり(最新情報は、そごう横浜店ないしそごう美術館ホームページを確認のこと
【問い合わせ先】
そごう美術館
TEL:045-465-5515 (美術館直通)