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■そんな素敵なタッグで今回は親友役を演じられましたが、おふたりご自身にとっての親友とはどのような存在でしょうか。

安田:僕には、舞台に出演する度に劇場まで足を運んでくれる、高校以来の友人がふたりいますが、彼らは親友と呼べる人たちだなと思っています。

過去に定職に就かず、アルバイトもしないで生活していた時期、家賃さえも払えなくなってしまったことがありました。親もお金を貸してくれなかったので、仕方がなくそのふたりに「お金貸してくれないか?」と電話しました。

そうすると、ひとりは、「今、君にお金を貸してしまうと、今後付き合えなくなるかもしれない。君とはこれからもずっと友達でいたいから、本当に申し訳ないけれどお金を貸すことはできない」と言い、もう一方の友人は何も言わずに、ポストに1万円札を入れてくれました。

ふたりが僕にしてくれた行為は全く異なりますが、どちらも僕の為を思ってしてくれたことには違いないですし、実際に自分の為になっているので、心の底から“親友”と呼べる人たちだなと思っています。

阿部:親友というか、僕には素晴らしい友人何人かいます。その人たちは何十年来、僕の仕事が上手くいかない時からずっと支えてくれていた。つくづく僕は人に恵まれてきたと思います。

阿部寛, 瀬々敬久, 北村匠海 インタビュー|写真20

■『とんび』は家族の絆を描いた作品でもありますね。おふたりご自身が“家族愛”を感じたエピソードがあれば教えてください。

阿部:“家族愛”に関連することですと、中学時代に体験した出来事が今でも印象に残っています。当時、父親が大怪我をしてしまって半年程入院することになりました。病院があるのは、自宅から40分程度掛かる遠い場所。それでも母親は毎日病院に通って父親のケアをしていました。

父と母は特別仲が良かったわけではなく、いたって普通の夫婦。だから熱心に見舞いする姿にその時の僕は驚きましたし、この出来事があってから家族という繋がりをより一層強く感じるようになりました。

安田:阿部さんのお話を伺って思い出したのですが、僕の父親も大怪我をしたことがあります。僕が小学校4年生の時だったと思うのですが、父親が泥酔して帰ってきて、机の角に後頭部をぶつけてしまったんです。

しかも頭からすごい量の血を流して、起きなくなってしまって。母が泣きながら父のもとに駆け寄って行ったので、「救急車呼ぶね」って声を掛けたら、「お父さん、昨日から下着変えてないから、救急車は恥ずかしくて呼べない」と言い出して。結局呼ばなかったんですよ(笑)。

阿部:そっち(笑)?

安田:はい(笑)。自分の夫が下着を変えてないことをわかっているというのが、本当にすごいことだなと思いまして。深い家族愛を感じましたね(笑)。

“懐かしくて温かい気持ちになれる作品”

阿部寛, 瀬々敬久, 北村匠海 インタビュー|写真8

■それでは最後に、この作品を通しておふたりの中に残ったことがあれば教えて下さい。

安田:すべての作品に共通することなのですが、僕は感じたことをすぐに忘れてしまうタイプなんです。だから『とんび』においても、作品に触れている間は家族や助け合いの大切さを再認識したり、離れた場所にいる人とも連絡して繋がっていたいなとか思ったりしましたが、やっぱりすぐに忘れてしまうので、大きく変わったことはないですね。

ただ、今でも鮮明に覚えているのは、成長したアキラが故郷に帰ってくるシーン。年を重ねたヤスがアキラの帰りを待っているのですが、昔と変わらずに一升瓶を両手に持って歩いているんです。その姿は単純におかしいですし、切なくもあるし、自分の生き方を貫いているようにも感じるし、本当に好きなんですよね。

阿部:僕も色んな作品に関わってきたので、今回の作品で大きく変わったことはないかもしれません。でも、久しぶりに『男はつらいよ』シリーズの“寅さん”を見ている時のような、懐かしくて温かい気持ちになりましたし、こういう作品を見たかったんだなと気付きました。

人は国籍や年代問わず、いつの時代も“温かい気持ち”になれる作品を求めているところがあると思うんです。しかも、きっと“人の温かさ”というものは世界各国共通。だから、昭和作品に見られるような“人の温かさ”に溢れた『とんび』という映画は、誰が見ても感動する作品だと思います。

監督に瀬々敬久

監督を務めるのは、『64(ロクヨン)』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『』など多くのヒット作を手掛けてきた瀬々敬久。主演に阿部寛を選んだ理由には、「明るさと、優しさ、パワフルな男らしさを兼ね備え、昭和の香りを知っている阿部さんとならば、活気に満ち溢れた作品に出来る」と、厚い信頼を寄せたコメントを残している。

主題歌はゆずの新曲「風信子(ヒヤシンス)」

阿部寛, 瀬々敬久, 北村匠海 インタビュー|写真17

主題歌は、ゆずが書き下ろした新曲「風信子(ヒヤシンス)」。“出来ることなら あなたに返したい「ありがとう」” のフレーズが、『とんび』で描かれる親子の絆や家族の愛をより感動的に彩る。

映画『とんび』あらすじ

阿部寛, 瀬々敬久, 北村匠海 インタビュー|写真7

昭和37 年、瀬戸内海に面した備後市。運送業者で働くヤスは、今日も元気にオート三輪を暴走させていた。愛妻・美佐子の妊娠に嬉しさを隠せず、姉貴分のたえ子や幼馴染の照雲に茶化される日々。幼い頃に両親と離別したヤスにとって家庭を築けるということはこの上ない幸せだった。遂に息子・アキラが誕生し「とんびが鷹を生んだ」と皆口々に騒ぎ立てた。しかしようやく手に入れた幸せは、妻の事故死で無残にも打ち砕かれてしまう。こうして、父子二人きりの生活が始まる。母の死を理解できないアキラに、自分を責めるヤス。和尚の海雲は、アキラに皆が母親代わりなってやると説き、雪が降っても黙って呑み込む広い海のようにアキラに悲しみを降り積もらすな 「お前は海になれ」と、ヤスに叱咤激 励するのであった。親の愛を知らずして父になったヤスは、仲間達に助けられながら、我が子の幸せだけを願い、不器用にも愛し育て続けた。そんなある日、誰も語ろうとしない母の死の真相を知りたがるアキラに、ヤスは大きな嘘をついた ── 。

詳細

映画『 とんび 』
公開日:2022年4月8日(金)
監督:瀬々敬久
脚本:港岳彦
出演:阿部寛、北村匠海、杏、安田顕、大島優子、濱田岳、宇梶剛士、尾美としのり、吉岡睦雄、宇野祥平、木竜麻生、田中哲司、豊原功補、嶋田久作、村上淳、麿赤兒、麻生久美子、薬師丸ひろ子
原作:重松清「とんび」(角川文庫刊)

©2022『とんび』製作委員会

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