まず、宝石の「美しさ」は、輝き・煌めき・彩りの3つの要素によって規定される。たとえば宝石の「輝き」は光の反射によるもので、会場ではそれを生み出す宝石の光学的な性質を実例とともに紹介。また、ダイヤモンドのカラットによる輝きの違いを、比較しつつ目にすることもできる。
一方、宝石の「強さ」とは何か。端正に磨き上げられた宝石であろうとも、傷や破損によってその美しさは損なわれる。したがって宝石には、日常において使用するうえで美しさが保たれる耐久性が求められる。会場では、宝石の硬さを表す指標・モース硬度の基準となる鉱物や、物質の性質を活かして浮き彫りを表現したカメオなど、耐久性の諸性質に着目しつつ宝石などを展示している。
加えて、生物や化石に由来する宝石も紹介。真珠貝から取られる真珠、樹木が分泌する樹脂が化石化した琥珀(アンバー)、そして虹色の輝きを放つアンモナイトの化石・アンモライトなど、鉱物にとどまらない宝石の多様性にふれることができる。
カットされてきらびやかな輝きを放つルースは、貴金属製のベゼルに収めることでジュエリーとなる。宝石のラフとルースを紹介してきた第3章までとは打って変わって、第4章では豪華絢爛なジュエリーを展示。ルースをジュエリーに仕立てる技術とともに、ヴァン クリーフ&アーペルやギメルによるジュエリーの技巧の粋を紹介する。
ヴァン クリーフ&アーペルは、1906年にパリで創業したハイジュエリーメゾン。自然やクチュール、空想の世界を着想源に、革新的技術と精緻な職人技に支えられたジュエリーを手がけている。会場では、きらびやかな宝石を贅沢に使用し、緻密でありつつ華やかに仕上げられたネックレスなどを楽しむことができる。
一方、兵庫・芦屋発のジュエリーブランド・ギメルからは、四季折々のモチーフを繊細なジュエリーデザインで表現した「Four Seasons」を紹介。たとえば冬ならば、冷え冷えと吹きすさぶ風や澄んだ空気を表すためにダイヤモンドを使用し、その輝きをもっとも良く引き立てるブリリアントカットや、シャンデリアなどに使われるブリオレットカット、あるいはアンティークによく見られるローズカットなど、カットを駆使してダイヤモンドの多彩な魅力を引き出したジュエリーを展示する。
最終章では、宝石を用いたジュエリーの極致にフォーカス。世界的な宝飾コレクションを誇るアルビオン アートのコレクションから、古代から現代に至る珠玉の宝飾作品約60点を展示する。その展示作品は多岐にわたるが、たとえばアール・ヌーヴォー最盛期の宝飾の巨匠フレデリック・ブシュロンによるバタフライをモチーフとしたブローチは、極上のミャンマー産ルビーとダイヤモンドをボディに使用し、可動式のダイヤモンドの羽を組み合わせたもの。その高度な技術と芸術性において、ブシュロンの作品の最高傑作と称される。
また、同じくアール・ヌーヴォーの作例に、宝飾界の革命を志したジョルジュ・フーケがアルフォンス・ミュシャとともに制作したオーナメントが挙げられる。ミュシャ独特の様式で手がけられた乙女の像を中心に、宝石やエナメルをセットした金の装飾をあしらい、アール・ヌーヴォーらしい作品に仕上げている。
そのほか、まばゆいばかりの光を放つティアラの数々をはじめ、精緻な技術によって制作された宝飾芸術の粋にふれられそうだ。
特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」
会期:2022年2月19日(土)〜6月19日(日)
会場:国立科学博物館 地球館地下1階 特別展示室
住所:東京都台東区上野公園7-20
開館時間:9:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日休館)
※3月28日(月)、5月2日(月)、6月13日(月)は開館
※会期・開館時間・休館日・展示内容などは変更になる場合あり
〈チケット詳細〉
入場にはオンラインでの日時指定予約が必要。
入場料:一般・大学生 2,000円、小・中・高校生 600円
※未就学児、障害者手帳持参者とその介護者1名は無料(無料対象者も日時指定予約は必要)
※学生、各種手帳持参者は入場時に証明できるものの提示が必要な場合あり
※購入方法は公式サイトを参照
※博物館で当日券も販売(入場待ち、予定枚数終了となる場合あり)
※本展を観覧者は、同日に限り常設展(地球館・日本館)も観覧可能(日時指定日の指定時刻よりも前に常設展を観覧することは不可)
※購入したチケットのキャンセル・券種変更・払い戻し・再発行は不可
※再入場不可
■巡回情報
・名古屋市科学館
会期:2022年7月9日(土)〜9月19日(月・祝)
住所:愛知県名古屋市中区栄2-17-1 芸術と科学の杜・白川公園内
【問い合わせ先】
ハローダイヤル
TEL:050-5541-8600