特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」が、東京の国立科学博物館にて、2022年2月19日(土)から6月19日(日)まで開催される。その後、7月9日(土)から9月19日(月・祝)まで名古屋市科学館に巡回する。
古代より宝石は、魔除けやお守り、地位や立場を示すシンボルとして世界中で使用されてきた。また、現在では宝飾品としても広く親しまれている。特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」では、宝石の科学と文化に光をあてつつ、原石からジュエリーに至るまで紹介。多種多様な宝石に加えて、ヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)やギメル(Gimel)などによる華麗なジュエリーを一堂に集めて展示する。
本展は、全5章から構成。第1章では宝石の生い立ちを科学的視点から紹介し、第2章では原石から眩いきらめきを引き出す工程「カット」に着目、豊富な指輪から宝石のカットの歴史もたどる。第3章では宝石の美を科学的に解説しつつ、多種多様な宝石を展示、そして第4章ではジュエリーの精緻な技巧に、第5章では贅を尽くした宝飾芸術に光をあて、ジュエリーの数々を一挙に紹介する。
宝石は、さまざまな形状や大きさの原石として産出される。原石は地球の地下深くで生まれる鉱物であり、さまざまな化学反応、融解や結晶化の繰り返しにより、多様な化学組成をもつ鉱物が生まれる。その形成過程を知る手がかりとなるのが、宝石の原石を含む“母岩”と呼ばれる岩石だ。第1章では、母岩の種類を4つのタイプに分けて、宝石の元となる原石を展示する。
たとえば火成岩。これはマグマが冷えて固まることで形成される岩石であり、これに由来する宝石の代表例にダイヤモンドが挙げられる。一方、既存の岩石が熱や圧力を受けて、再結晶によって生まれるのが変成岩。その宝石の例がルビーやエメラルドであるが、こうした濃い色彩は、宝石も熱や圧力とともに鮮やかな色のもととなる成分がもたらされることによる。
多種多様な形状と色、大きさの原石が展示されるなかで、注目したいのは高さ2.5mに及ぶ巨大なアメシストドーム。鮮やかな紫色を帯びた結晶のきらめきと迫力を、間近で楽しみたい。
原石から、輝きや彩りといった宝石としての特性を最大限に引き出す工程が「カット」だ。第2章では、成形や研磨といった「カット」工程に着目しつつ、原石とカット加工を経た宝石を紹介する。
宝石のカットスタイルは、多数の研磨面=ファセットで囲まれた多面体に仕上げるファセットカットと、ファセットをつけないカットの2種類に大別される。ファセットカットは、石の中に入った光をファセットで反射させることにより、宝石を最大限に輝かせるもの。無色透明な結晶がもつ輝きと煌めきを極限まで引き出すダイヤモンドのラウンドブリリアントカットはその一例だ。
一方でファセットをつけないカットには、上部をなめらかなドーム状に整えるカボションや、球形のビーズなどが挙げられる。透明度が高い宝石の輝きを引き立てるファセットカットに対して、こちらは半透明や不透明な石に採用され、輝きの代わりに石の色や艶、表面に浮かび上がる光の筋を引き出す。会場では、これら代表的なカットのスタイルを、多彩な宝石の例とともに楽しむことができる。
また、本章では、国立西洋美術館から特別出品される「橋本コレクション」の約200点の指輪から、宝石のカットの歴史を概観。古代エジプトではスカラベを模した宝石があしらわれるというように、16世紀までは彫刻の施された宝石やカポションカットされたものなどが中心であるが、ブリリアントカットが登場した18世紀になると、宝石の眩いばかりの輝きが際立つ指輪が一気に増加することが見て取れるだろう。
第3章では、宝石がもつ「美しさ」や「強さ」に科学的な視点から光をあてつつ、原石(ラフ)とルース(磨いた石)を中心に200種類以上の宝石を展示。ダイヤモンドやオパール、ラピズラズリといったよく知られた宝石から、アンモライトや琥珀のように化石に由来する宝石、そしてフォスフォフィライトなどのレアストーンまで、色彩も形状も多様性に富んだ宝石を一堂に集める。