──先ほどのお話にもありましたが、ジェンダーレスは、多かれ少なかれ現在のいち傾向です。レディースとメンズのデザインをどのように進めていこうとお考えでしょうか。
基本的に、コレクションでメンズ、レディースとして発表している場合も、商品化するときには、メンズで発表したものをレディースでも商品化するということがあったりしますね。
先ほどの考え方からすると、要するにメンズのもの作りは“ゼロイチ”ではないのです。どちらかというと、どうやって1から1.5にしていくか、ということです。最近、そういった考え方をすごく学んで、それを女性服にも活かしていきたいと考えています。
反対に、“ゼロイチ”的なレディースのもの作りをメンズに活かし、いかに男性が魅力的に感じられるものを作ることができるか、ということもチャレンジです。そういう意味では、レディースとメンズとを両方手がけることはすごくバランスが取れている気がして、本当に面白いです。
──さて、芦田さんはデザイナーの活動を続けてきて、2021年で30年になります。デザイナーとして活動を続けるモチベーションは何でしょうか。
毎回コレクションを制作するときには、全力で作るけれども、後から見るとやっぱりいろんな反省点があります。デザイナーという仕事では、今回は完璧だから次にやることがない、ということが絶対に起きません。それを次のシーズンで絶対晴らしたいんですよね(笑)。そんなことをずっと続けています。
──それでは、芦田さんにとって衣服を作るということは何でしょうか。
結局、それしかできないんです(笑)。ファッションデザイナーになると自他ともに思って育ってきた私にとって、洋服を作ることとは呼吸することと同じくらい自然なことでした。
また、父のもの作りの信念を引き継ぐのは、最終的に私でなければわからないことがたくさんあると思うのです。父は長年、今とは違ってファッションがそれほど一般的なビジネスではないという時代に、信念を持ってプレタポルテに携わり、品質の高いもの作りを続けてきました。それを今の時代にも引き継いでいければと思っています。
──最後に、これからの展望をお伺いしたいです。
実は、私には昔から展望というものがないのです。よく聞かれるのだけれども、いつも困ってしまって(笑)。毎シーズン必死だということもありますけど。
いつも、これは絶対今やらなきゃダメ、といったように突然思いつくんですよね(笑)。普通は、10年後にこういうことができたら良いな、などと思うのかもしれませんが、私は思いついた時がやる時だと思っています。たとえば10年前に、「10年後にこんな人になりたい」と思っていたとしても、そんな自分に今、本当になりたいかと言ったら絶対違いますよね。ですから、自分にとって将来の展望というものはあまり意味がないと思っています。
確信を持っていると、どの方向性に行くべきだとか、こういう形であるべきだとかがクリアに見えてきます。だから、確信が自分の中で芽生えている時とは、絶対的にそのタイミングだと思います。たとえそうではないとしても、私はそのように信じて前に進んでいきたいと思っています。