ケンゾー(KENZO)は、2022-23年秋冬ウィメンズ&メンズコレクションを発表した。
今季は、新たにケンゾーのアーティスティック ディレクターに就任したNIGOによるデビューコレクション。ケンゾー創始者である髙田賢三がパリでメゾンを立ち上げるちょうどその頃に、1980年代のサブカルチャーや1950年代アメリカーナのリバイバルに影響を受けてきたNIGOが、自身のルーツとキャリア、そして髙田賢三の築いたヘリテージとを融合させ、ケンゾーの未来を見据えたビジョンを提示する。
展開されるのは、テーラリングを解体し、現代的なアプローチで再解釈した“非実用的な作業服”。フォーマル、スポーツ、ストリートウェアといったそれぞれのカテゴリーにおけるアイディアを1つの論理に結び付け、従来のドレスコードを超越した文脈でウェアを生み出していく。
たとえば、タフなオールインワンには、アーカイブのポピープリント地を採用し、ワークウェアにエレガントなエッセンスをプラス。ポピープリントと小花模様、ストライプを切り替えたシャツワンピースは、生地の配置によってグラフィカルな佇まいを見せている。ハリのある日本産デニムで仕立てたジャケットやサロペットは、ゆとりを持たせたワーク感のあるシルエットに。ストーンウォッシュによる顔料プリントの花が全面を飾り、プレイフルなムードを演出する。
プリンスオブウェールズのチェック柄スーツやピンストライプスーツには、洗いをかけた柔らかなウォッシュドウールを採用。端正な仕立てのスーツでありながら、日常の中で着倒した服であるかのように、親近感のある表情に仕上げている。
加えて、髙田賢三やNIGOが自身のクリエーションの中で継続して取り組んできたように、“日本と西洋”、それぞれのワードローブの系譜を統合している点も重要なポイントだ。作務衣のようなシルエットのウールジャケットやコートは、着物を思わせる和風の造形ながらスーツやワンピースに自然となじんでいるのが印象的。さらに、合わせの部分で左右の身頃を重ね合わせる、和服のような形状はサロペットやドレスにも応用されている。
加えて、フランスと日本の地図を裏表に刺繍で施したスーベニアジャケットや、アニメーションのような絵柄に仕上げたフェアアイルニット、フラワーモチーフのセーターなど、従来のウェアが持つ特徴を踏襲しながらも、日本の系譜や成分がバランスよく取り込まれている。
NIGO自身が師事し赤絵の芸術を学んでいるという陶芸家・藤村州二による手描きのモチーフも登場。赤、緑、黄色、橙色といった鮮やかな色彩とともにコートやシャツ、パンツに総柄で用いられ、まるでアクションペインティングであるかのような躍動感とともに衣服を彩っている。