・音楽を通して、Mrs. GREEN APPLEが伝えたいメッセージとは?
大森:大事にしているのは、ただ楽しい明るいだけで終わらないというところ。僕たちって一見、爽やかな楽曲に聴こえると思うし、ポップなバンドって思ってもらえることが多いんですけど、実は歌詞は内省的というか、インナーに寄っていたりするので。人の情緒、陰と陽、躁と鬱、喜びと悲しみ…そういったコントラストは1曲の中でも大切にしたいと思っています。
そして嘘は書かない。思ってもいないことは書かないというところも、曲を作る上で大切なポイントです。
なのでリスナーには、歌詞を見ながら、聞いてくれるとうれしいなって思いますね。メロディや雰囲気だけで見るととても明るい曲が多いのですが、歌詞を見ながら聞くと、きっと印象が変わると思います。
Mrs. GREEN APPLEは、2022年春、約2年の休止期間を経て活動を再開。大森元貴(ボーカル/ギター)、若井滉斗(ギター)、藤澤涼架(キーボード)の新体制で「フェーズ2」としてスタートを切ったばかりだ。
・フェーズ2がはじまり、周りの環境や心境に変化はありましたか。
大森:僕たち自身は大きな変化を感じていないのですが、外見でいうとビジュアルが大きく変化しました。フェーズ2を開始するにあたって「ビジュアルをこうしよう」という話はしていないですけど、自然な形でここに辿りつきました。
若井:僕はずっと黒髪だったんですけど、人生初の金髪に。そして休止期間中にボディメイクを始めました。一度10キロくらい体重を増加させて筋トレをして、ステージ映えするように身体をがっしりとさせました。2年前のライブ映像と比較すると、変化がわかるかも。当時は本当にヒョロヒョロだったので。
大森:若井だけでなく、2年間みんなトレーナーについてもらって、ボディメイクを始めたんですよ。やったことのないことを1度やってみようという思いが強かったのかもしれないですね。
また外見でいうと、ジェンダー感がなくなった。いつも用意していただいている衣装が、女性ものが多いんですよ。僕はこういうスタイルが好きなので嬉しいんですけど、ファッションも含めて外見は何かに捉われることがあんまりなくなりました。
若井:(藤澤)涼ちゃんはすごく美しくなったよね。
藤澤:みんなそうなんですけどね。ビジュアルの変化に伴って、よりそれぞれの個性が際立つようなものが自ずと出てきたんじゃないかと思います。
大森:ビジュアルの部分で「変わった」という印象がとても大きいので、楽曲では「あ、変わってないんだな」というのが伝わるといいなと思っています。
外見でのアウトプットが強くなった代わりに、楽曲の密度は強まった印象。より内側に目を向けた曲作りが出来ていると思うので、昔からMrs. GREEN APPLEを見てくれている方も、休止中に知ってくれた方もぜひ聴いてみて欲しいですね。
・フェーズ2初となるミニアルバム『Unity(ユニティー)』が発売されますね。
大森:Mrs. GREEN APPLEとして走り出すのが約2年ぶりだったので、嘘がない中でもっとインナーに寄った楽曲を作りたいなって思っていました。『Unity(ユニティー)』の中でも、6曲目「Part of me」は思い入れのある楽曲です。
僕は、曲を作るのが早い方で。歌詞が思いついたと同時にメロディが浮かんできて、わーっと作っていく。歌詞を作ったら、メロディをつけて、コードをつけて…という工程を挟まないので、時間的にあまりかからない方なんですけど、「Part of me」は違った。
「本当にこの言い回しで正しいんだろうか」「自分の思っていることは表現できているんだろうか」「言いたいことは何なんだろうか」と自問自答を繰り返して、歌詞を書くのもかなり熟考しました。Mrs. GREEN APPLE結成10年目前にして初めて、曲が書けなくてレコーディングスケジュールを飛ばした曲でもあります。
これまで思いついた言葉やその時に出てきたメロディーを大切に、鮮度に重きを置いていた自分とは違う。そういう初めての経験を経て「作れてよかった」と思えた楽曲です。「頑張れ」という言葉ではなく、弱い人や自分に負けそうな人を救うには、どういう表現、言葉が必要なんだろう?と考えて制作しました。
・『Unity(ユニティー)』内で他にも制作ストーリーをお話できる楽曲があれば、教えてください。
大森:1曲目の「ニュー・マイ・ノーマル」は、活動再開後1作目=フェーズ2初の楽曲だったので、地に足のついた楽曲が書けたらいいなと思っていました。「これからやっていくぞ」という意志表明というよりは、今までの感謝やこれからの希望、ファンへのメッセージを歌いたかったんです。
・今のメンバー編成だからこそできる音楽とは?
大森:約2年経って、それぞれがスキルアップしているのはもちろん、人として経験も積んで、違った考え方ができるようになっているので、表現の自由度は増したように思います。
そしてもう10年も一緒にいるメンバーだけなので、スタジオのリハーサルも含めて、質の高いコミュニケーションで済むようなりましたね。
藤澤:以前は、曲作りの前の組み立てのときとか言語化していましたし、確認作業を多くしていました。今は家族みたいな感じ。
大森:間の取り方とか、楽曲に関する考えとかもみんなわかっているんで、このメンバーじゃないとスムーズにいかないなと思います。