映画『ファイアbyルブタン』が、2013年12月21日(土)に公開された。パリ3大ナイトショーの最高峰「クレイジー・ホース」が舞台となったクリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)演出のショー「FIRE」が映画化された本作品。ルブタン本人も登場するほか、音楽は映画界の鬼才デヴィッド・リンチ(David Lynch)が手掛けている。
ルブタンは「靴の魔術師」と呼ばれるシューズデザイナーで、ニコール・キッドマン、カトリーヌ・ドヌーヴ、アンジェリーナ・ジョリー、マドンナ、レディー・ガガなど、世界の名だたるセレブ達を顧客に持つ。クレイジーホースに少年時代から憧れていたといルブタンは、ダンサーたちにインスパイアされてシューズのデザインを始めたという。
そんなクリスチャン・ルブタンが、本映画の公開とともに、普段はめったに応じないという動画インタビューに応じた。公式サイトにて限定公開された動画インタビューを抜粋して紹介する。
-ナイトショーに影響されて靴のデザイナーになったと伺いました。
子どものころから靴のデザイナーになりたかったです。最初に影響を受けたのはステージに立つダンサーたちで、ミュージカルやバレエダンサーのシューズを作りたかったのです。もちろんクレイジーホースのようなショーの。
-初のゲストクリエイターとしてクレイジーホースに招かれたことについて教えてください。
私が「FIRE」の演出を頼まれた時は、とても興奮していて、自分らしくないのですが、考える前にすぐ"イエス"と言いました。私はフランス人だから、普通はまず"ノー"と言います。決して二つ返事で受けたりはしません。
今回は、瞬間的にOKの返事をしていました。あとから考えたとき、とてもやりがいのある仕事だと感じましたが、大きな責任を伴う挑戦であると気づきました。
でも私はこの仕事が好きだったし、楽しんで取り組みました。
-ショーの「FIRE」という名前の由来を教えてください。
ショーのタイトルを決めるのは、とても難しかったです。閃きが必要で、直感的な言葉で覚えやすいタイトルにしたいと思いました。それに靴のデザインとショーの演出を絡めて、同じ"香り"を感じられる言葉にしたかったのです。例えばフレグランスの香りに名前をつけるように。
最初は「RED」という案がありましたが、靴のソールはすでに赤だったため、私は違うと思いました。クレイジーホースを正しく表現するもの、クレイジーホースの"香り"とは何か、それを考えたとき、「FIRE」だと思いました。
-ショーを映画化するとき、製作にはどのように関わったのでしょうか。
『ファイアbyルブタン』にとって一番大切だったのは、主人公たちが最も美しい人々であること。クレイジーホースは最高のキャバレーでありながら、最も優れたパフォーマーです。元々、クレイジーホースは映画的な要素を含んでいて、唯一無二のショーであることを表現することが大切でした。そこで魅せてくれるものは、映画的な光と音の演出で、これまでのショーとは違っています。
クレイジーホースのダンサーは女優のような存在で、単なるダンサーではありません。だから当然、この映画は僕についてではなく、彼女たちが持っている才能や魅力、ステージ上でのパフォーマンス、スターの素質や美しさを伝えることを、何よりも尊重して撮影をしました。
-デヴィッド・リンチとのコラボレーションについて教えてください。
デヴィッドには作曲をお願いしました。彼の映画の中で表現されている独特の想像力に、僕は物心ついた頃からとても惹かれるものがありました。デヴィッドは素晴らしい監督であると同時に作曲家でもあります。だから僕から彼に、ミステリアスな曲を作ってほしいと頼みました。
-リンチと一緒に仕事をした印象は?
一緒に仕事をするのは初めてではないので、クリエイティブで面白い人物であることは知っていました。デヴィッドは、多くを求めるような仕事の仕方はしていないし、大規模な製作を望んでいません。彼はアイデアや考えに基づいて、頭の中でそれを構築していきます。それは映画や音楽を作ったり、ドキュメンタリーを撮るときも同じ。最初はものすごく小さなアイデアから始まって、大きなゴールにたどり着きます。
-この映画では女性の美しさを描いていると言いましたが、私たち女性にとってハイヒールが持つ意味とは何でしょうか。
ハイヒールは女性にとって、とても大切な物だと信じています。ボディラインを決める大切なパーツであり、体の表現力を広げてくれるものでもあります。音楽性もあり、身体を変化させてくれるハイヒールは、ほんの小さな面積で足を覆うだけのオブジェクトにも関わらず、身体の見え方をすべて変えてしまいます。
そういった観点から考えると、ハイヒールは素晴らしい装飾品だと思っています。
-レッドソールの由来について教えてください。
レッドソールにこだわるのは、靴が赤い炎のように、熱く燃えていることを表現したいからです。
-本作の製作に影響を受けた映画や舞台などはありますか?好きな映画でもよいので、教えてください。
好きな映画を挙げたら、数えきれないくらいあります。だけどこの映画に関しては、単純にクレイジーホースのショーから刺激を受けています。ダンサーとしても女性としても出演者たちの素質は素晴らしいから、他の映画や舞台などを参考に必要はありませんでした。
リハーサルを重ねるごとに、ショーの演目からどんどん想像力が掻き立てられました。創造するということが、こんなに簡単だった仕事はこれまでにありません。彼女たちの素晴らしいダンスのおかげで、楽に仕事をすることができました(笑)。
-日本の観客にメッセージをお願いします。
僕が持っているイメージとして、日本人は芸術を愛する心や、音楽を心から聴くということに長けていると思います。日本人は一つのことに集中するのが得意で、そういった素晴らしい感性は、庭園の中に置かれてる石をずっと眺めることからも分かります。そんな皆さんだからこそ、この映画は合っていると思います。作品の中に散りばめられた細かい工夫や演出を全部楽しんでもらえるのではないでしょうか。日本でも、この映画は皆さんに愛してもらえるはずです。
【映画概要】
映画『ファイアbyルブタン』
出演:クリスチャン・ルブタン & Crazy Horseダンサーたち
監督:Bruno Hullin ブルノ・ユラン(映画初監督)
音楽:デヴィッド・リンチ『エレファント・マン』「ツイン・ピークス」
撮影:『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』撮影チーム
フランス映画/2012/80分/3D・2D/フランス語 [ジャンル:ライブパフォーマンス]
2013年12月21日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町他 全国順次公開
(C) Antoine Poupel
公式サイト
URL:http://fire.gaga.ne.jp/
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