井上さんや水樹さんの視点からみた、月野うさぎの魅力は何でしょう?
井上:人を愛する気持ちをベースにしていて、それが周囲にも愛の連鎖が届いていくパワーを持ったキャラクターであるところ。“銀河の母”だなあって(笑)。今回劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」の制作が決まった時も、漫画を読み返していたんですけど、最終的にうさぎちゃんは愛の塊なんですよ。その愛の広さや深さというものが、うさぎちゃんの強さなのかなとも感じます。
水樹:私は“完璧じゃないところ”だと思います。最初から優等生でなんでもできるタイプだと、自分の限界値のようなものに自分で気づいてしまうと思うんです。
でもうさぎちゃんは、良い意味で完璧じゃないからこそ、同時に底知れぬ可能性にも溢れている。だからその一生懸命な姿が凄く胸を打つし、その不完全さに共感するし、ほっとけないから気付けば周りに人が集まっている。そうやって周囲との気持ちの連鎖が生まれて、“一人で強くなったわけではない”というところも、うさぎちゃんの魅力です。
銀河の母のようでもあり、共感できるキャラクターでもあると。
水樹:そうなんです!だからこそ皆大好きなんだと思います。
一方、月野うさぎから変身後のセーラームーンの強さに、三石さんご自身、共感できる要素はあったりしますか?
三石:私は全然強くないんですけど、“うさぎちゃんだったら強くいられる”という感覚があります。どこか熱くなりきれない、熱くなると格好が悪いといわれるような空気の中でも、アニメーションの世界だったら、それが出来るというか。堂々と見栄を切って、「愛が大事。未来を信じる。」って声高に言えることができるんですね。私自身ができないことを叶えてくれる、そんな素敵な作品に関われていることに感謝の気持ちでいっぱいです。
これまで数々のキャラクターを演じられてきたと思いますが、“キャラクターと一心同体になった”と感じられる瞬間について、お話を伺いたいです。
三石:なかなか長くやっていても、実はあまりそういった瞬間ってあまりないものなんですよ。私が初めて味わったのは、初代の「美少女戦士セーラームーン」の作品だったと思います。普通はアニメーションの映像に合わせて、台本をみながら尺やブレスとかを気にして本番に臨むのですが、何故かその“瞬間”が訪れた時は、こちらが喋っているのに、アニメの画が私に合わせてくれているという“逆転した感覚”がありました。けれど、そういった瞬間は、なかなか巡り合えないんです。
井上:そういった経験がない役者さんも、実際沢山いらっしゃると思います。おそらく皆さんが想像している以上に、声優という職業は“計算”をしながら声を吹き込んでいるんですよ(笑)。私も声優人生をやっていて、そういう感覚になったことは2回ほどしかない。突然おりてくるものなので、言葉ではなかなか説明が難しいのですが、画面の中に“今、私が入り込んだ”ていう感覚が近いですかね。キャラクターがいる世界に自分が立っている、といような。
水樹:その感覚凄く分かります!アスリートの方が“ゾーンに入る”という状態に近いと思うのですが、作品の世界の中に入り込んで「何か匂いも感じる」「湿度も感じる」くらいの感覚になっているんです。ただそういう瞬間に入り込める時って、よりによってテストだったりして(笑)。"あの感覚をもう一度!”と思いながら本番に臨むと、全然そうならないという…。
井上:私もです(笑)。テストの方が緊張しないから、きっとその瞬間に出会えたんだなって。
最後になりますが、「美少女戦士セーラームーン」が世代を超えても多くのファンに愛され続けている一番の理由は何だと思いますか?
水樹:友情と絆、家族の愛、そして運命で繋がる縁、心のどこかで私たちが求めているものが詰まっているからだと思います。そして「美少女戦士セーラームーン」の作品自体は、宇宙規模の戦いが描かれていますが、その日常もすごく大事に描かれているので、壮大なストーリーなのに何故か身近に感じてしまう。私たちは、宇宙の命運をかけて戦うことはできないけれど、うさぎちゃんのように、未来を信じていれば大切な仲間ができたり、いい家族関係が構築できるのではと、不思議と希望を見出せることが出来るのもこの作品の魅力だと思います。
もちろんキャラクターたちも、それぞれ個性的で、自分を投影できるキャラクターがいるというのも大きなポイントで。その絆を描いたストーリーの根底には、とても深い愛があるというところが、世代を超えて響くのだと思います。
井上:「美少女戦士セーラームーン」のテーマは、どの世代にも響きますもんね!でも私は結局のところ、皆"変身したい”んじゃないかなって思うんです。誰もが"自分ではない何か”になりたくて日常を生きていて、もうキラキラすらすることなんて起きないし、ルナなんて出てこないし(笑)。それでも、自分たちにある日突然運命みたいなものが舞い降りてきたら…?って考えると、ときめきが止まらないじゃないですか。「美少女戦士セーラームーン」はそんな私たちの想いを全部叶えてくれるもの。だからこそ大人になってからのほうが染みる瞬間があるというか、セーラームーンは永遠なんですよね。
三石:同感です。だからこそアニメーション作品ではあるんですけれども、やはり大人の方にも観ていただきたいですし、きっと沢山の勇気をもらえると思うので、親子でもカップルでも皆さんに観ていただきたいですね。作品自体は、宇宙や愛など概念的な表現もあるので、お子さんはもしかすると難しいかもしれないけれど、成長していく途中で「あ、これはこういうことなんだな」っていうのが分かる日が必ず来る。これからも色んな世代に愛され続けていく永遠のミラクルロマンス「美少女戦士セーラームーン」です!
【作品詳細】
映画 劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』《前編》
公開日:2023年6月9日(金)
映画 劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』《後編》
公開日:6月30日(金)
声の出演:三石琴乃、野島健児、福圓美里、金元寿子、佐藤利奈、小清水亜美、伊藤静、皆川純子、大原さやか、前田愛、藤井ゆきよ、水樹奈々、井上麻里奈、早見沙織、佐倉綾音、林原めぐみ
原作・総監修:武内直子
監督:髙橋知也
脚本:筆安一幸
キャラクターデザイン:只野和子
音楽:高梨康治
美術監督:空閑由美子(スタジオじゃっく)
アニメーション制作:東映アニメーション/スタジオディーン
配給:東映
©武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」製作委員会