コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)の2024年秋冬コレクションが、2024年1月19日(金)、フランスのパリにて発表された。
男性服を代表するものと捉えられているテーラードジャケットは、19世紀中頃のヨーロッパにおいて、その原型となる形が生み出された。ドレスに見られる華やかな色彩やきらびやかな装飾を極端に抑制し、構築的なフォルムへと仕立てられるテーラリングは、いわば、それを身にまとう身体を理想化し、理性的な造形を具現化するものであったといえる。
モノクロームに純化された、テーラリングの追求──今季のコム デ ギャルソン・オム プリュスを、ひとまずはそう要約できるかもしれない。ノッチドラペルのシングルブレストジャケットを中心に、肩を端正に合わせ、ウエストにはほどよくシェイプを入れたテーラリングの数々は、その確固たるフォルムで身体のシルエットを描きだしてゆく。
しかし、身体を描きだすテーラリングを、無条件な基盤として受け入れるのではない。いわば、テーラーリングの解剖学を通して、その造形を探っているのだ。たとえば、身体にすっと寄り添うはずの両サイドに、スリットやホールを大胆に設けたり、弾性のある素材を組み入れたりすることで、テーラリングの構造を再考。あるいは、ジャケットを二重に重ねたり、ベストのパーツを上に組み合わせたりと、スーツがその内に含む形を豊かに引きだした。
テーラリングの解剖は、このように衣服に裂け目を入れるばかりでなく、くるりと反転することで、裏側に光をあてることでもなされる。あたかも表裏を反転し、白いライニングをむき出しにしたジャケットがそれだ。フロントには「表地」であったはずのファブリックが垣間見えるそのジャケットは、裏地がふんわりと外に向かって広がることで、オーバーサイズのブルゾンのような佇まいを示す。光を反射し、膨張して見える白という色も、この効果に寄与しているといえる。
抑制されたテーラードジャケットの佇まいも、解剖の対象だ。ダークトーンのファブリックに映える白いボタンは、ジャケットのフロントやスリーブ、首回りなど、さながらビジュー装飾のようにあしらわれる。通常、フロントや袖口を留めて機能の役割を担うべく目立たぬよう縫い付けられるボタンは、ここでは過剰に散りばめられることで、豊かな装飾性を発揮している。
このようなテーラリングの解剖学を実行するにあたって、色彩は極限まで純化されている。つまり、ホワイトやブラックを中心に、濃淡さまざまのグレーが取り入れられている。また、素材も、構築的なフォルムをキープするハリのあるファブリックばかりでなく、なめらかな光沢を放つもの、縮絨を施して経年変化を帯びたような風合いに仕上げたものなども取り入れた。