“人類が終わるかもしれない”というディストピア的な世界観の中で描かれている本作。お二人も普段、漠然とした不安や暗い気持ちを抱えることはあるのでしょうか。
あの:ありますね。漠然とした不安や、理由もないけど落ち込むみたいなのは結構昔からあって、今も続いている感じです。
そのような時、どのように前に進んでいますか?
あの:映画を観るとか、何か食べるとかが僕はあまりない方で、落ち込んだ時は自然と自分に向き合っている気がします。自分と向き合って、自分のことをたくさん知る。それでふとした時にすとんって落ちる瞬間があるんです。自分に向き合う時間は正直すごくしんどいですけど、それしか方法がなくて。で、やっぱり曲にしたいなと思う時は曲にするしっていう。自分が自分の1番の理解者になるイメージです。
幾田:その考え方、すごく分かります。私も漠然と不安に駆られたり、どこに向かって生きているんだろうみたいに感じる瞬間があって。今でも大きなステージの前にはプレッシャーや色んな感情に襲われて、足がすくんじゃいますし。そういう時は、お風呂の中で自分と対話したり、ライブの前に瞑想したり、1回ちゃんと自分と向き合う時間を作っています。
幾田さんもあのさんも、“自分と向き合うこと”を1番大切にしているのですね。
幾田:自分が分からなくなってしまう時は、自分と向き合う時間を設けられていない時だな、という1つの指針があるんです。音楽活動の中で悩むこともたくさんありますが、自分との対話の中で「自分の生きがいは音楽で、自分が本当に歌うことが好きだから歌っているんだ」というところに立ち返れると、無敵状態になれる。身の回りの人や環境の引力によって、自分の軸がグラグラしてしまう時もありますが、そういう時こそ自分とちゃんと向き合う時間を作って、軸をちゃんと元に戻してあげれば大丈夫だなって思うようにしています。
門出とおんたんの関係性を語る上で「絶対」というセリフがよく出てきました。お2人にとって「絶対」だと思える存在はいますか?
幾田:絶対に揺らがない人でいうと、家族です。私は、4人きょうだいの1番末っ子なのですが、小さい時からみんながめちゃくちゃ可愛がってくれて、甘やかされて育ったおかげか、本当に自己肯定感が高いし、自分を好きでいられるんです。自分から、歌手としての「幾田りら」とか、YOASOBIの活動としての「ikura」とか、そういうものが全部なくなったとしても、家族は自分を愛してくれて、絶対に傍にいてくれる。そういう人が心の中にいるって思えることが、自分らしくいられることに繋がっていると思います。
あの:そうですね…僕は、自分が絶対だなって思います。 最後決めるのも全部自分だし、これまでここに来るまでも、あんまり人に相談とかもせず自分で決めてきたから。困った時は自分がどうしたいかとか、自分がした決断をなるべく信じるようにしています。周りを頼りつつ、だけどやっぱ最後は自分かなって。
自分のことを絶対的に信じることは本当に難しいことだと思います。自分を好きでいるための、自分らしくあるための秘訣はありますか。
あの:自分のことを信じられないという人も、まずは1回信じて、物事を進めてみること。僕も、いつも自信があるわけじゃないし、別に自信がないのが悪いとも思わない。自信がないけどあるふりをしている人もいっぱいいるだろうし。
でも僕は、自分が決断してきたことで後悔していることが少ないというのがあって、それが“自分がやっぱり正しかった”という何よりの証拠になっているんです。「自信がないけど自分のことを信じて行動してみる」そういう経験を積んで初めて、自分のことを自然に信じられる、好きになってあげられるようになるんじゃないかなと思います。
“自分を保つ”ための趣味や、オフの日の過ごし方とかもあるのでしょうか?
幾田:オフが1日だと基本その日は寝て、次の日のために休みます。2日以上あったら大自然に行って、温泉に入ったり。露天風呂が大好きで、自分の心と体をいたわると100%に戻れるんです。
あの:僕も1日の休みはもう休みじゃないぐらいだと思っているので、回復するために使ってます。趣味とかハマっているものとか全然なくて…家でゲームするくらいかな。意外とオタク気質じゃないんです。最近、息抜きになればいいかなと思ってYouTubeを始めたんですけど、もう飽きてる。(笑)
(笑)。 では今後挑戦したいことは?
あの:挑戦…。あ、サウナ!(笑) かなり流行っているじゃないですか。でも行ったことなくて。幾田さん“サ活”したことあります?
幾田:たまにしますよ!めっちゃいい。“ととのう”を体験すると、世界って広いな、地球って大きいな、って気持ちになります。自分ってちっぽけだな、みたいな。(笑) 精神統一。
あの:やっぱいいな。トライしたいことはサウナです。幾田さんは挑戦したいことあります?
幾田:挑戦したいことはたくさんあるんですが、自分の中で絶対決めていることがあって。それは、老後は海辺か山奥でパン屋さんやりたいってこと。(笑) 毎朝美味しいパンの匂いを嗅ぎながら豊かに過ごしたいです。
あの:平和。(笑)
では最後に。門出とおんたんがどんな結末を迎えるのか、原作と違ったラストが描かれるのか、映画のエンディングにも注目が集まります。ネタバレ無しで、お2人が本作のラストをどう受け止めたのか、お聞かせいただけますか。
幾田:原作のラストでも、映画のラストでも、門出とおんたんの2人は「絶対に絶対的な2人で一緒にいるだろうな」と思います。どんな結末でもそこはもう関係ない、門出とおんたんがお互いのことを大事に思いながら過ごし続けることに変わりはない、という風な向き合い方はずっとしていました。
あの:本当にシンプルになりますが、門出とおんたんがこれからも仲良く、平凡な日常が続いてほしいなという一心です。漫画だけじゃなくて、今のこの世の中も、辛いことや悲しいこと、色々ありますけど、2人のこのちっちゃいところだけでもいい、そこだけでも幸せでいてくれたらなって。そのちっちゃい幸せが、誰にも負けない「絶対」だなって僕は思います。
映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』
公開日:2024年3月22日(金) 全国劇場公開 前後編全2章
※後章は2024年5月24日(金)~全国ロードショー
原作:浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』 小学館『ビッグスピリッツコミックス』刊
監督:黒川智之
シリーズ構成・脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高
〈声優キャスト〉
出演:幾田りら、あの、種﨑敦美、島袋美由利、大木咲絵子、和氣あず未、白石涼子、入野自由、内山昂輝、坂泰斗、諏訪部順一、津田健次郎
美術監督:西村美香
音楽:梅林太郎
アニメーション制作:Production +h.
■あらすじ
3年前の8月31日。突如巨大な「母艦」が東京へ舞い降り、この世界は終わりを迎えるかにみえた。その後、絶望は日常に溶け込み、大きな円盤が空に浮かぶ世界は今日も変わらず廻り続ける。