最新アルバム『スーパー・クリティカル』は、彼女たちのキラキラ光る独創性はそのままに、ファンク/ディスコを核とする1970年代のヴァイブが全編に散りばめられた。作品は、2人がイビザ島へ移住し曲作りに専念して制作。「イビザでクラブに頻繁に出入りして、EDMばかり耳にしているうちに、もっとスローな昔のディスコみたいな曲で踊りたくなった」とメンバーのケイティが語るように、アルバム内の注目曲『ロング・クラブ(Wrong Club)』は原点回帰した彼らのサウンドが話題となっている。
20以上の音楽専門誌で紹介され、UK音楽シーンの中心的存在となったケイティ・ホワイト(vo, gt, bass dr)とジュールズ・デ・マルティーノ(dr, vo)からなるこの男女2人組のユニット。彼らの魅力はセンセーショナルなデビュー以降、全くぶれない究極のDIY主義を貫いていることだ。今回はそんな2人の活動をさらに掘り下げて注目したい。
左から) アルバム『サウンズ・フロム・ノーウェアズヴィル (2012)』、『ウィ・スターテッド・ナッシング (2008)』
ザ・ティン・ティンズの音楽は、作詞作曲、演奏はもちろんのこと、プロデュース、アートワーク制作、そしてPVの振り付けに至るまですべて2人だけでやってしまう究極のDIYスタイルにある。過去の作品『ウィ・スターテッド・ナッシング』や『サウンズ・フロム・ノーウェアズヴィル』のアートワークは自らデザイン・制作した。大ヒットしたデビュー・シングル『グレイトDJ』のプロモーション・ビデオの振り付けもまた、彼らが自ら考案したそう。もちろん10月にリリースしたニュー・アルバムでもこのDIY主義は貫き続けている。
日本では、2008年のデビュー曲『グレイトDJ』がテレビCMやドラマの挿入歌に起用されたことがきっかけで一躍注目を集めた。デビュー作1枚だけで、サマーソニックに異例の3度出演というライヴ人気も絶大だ。
その魅力は、音楽だけではなくファッションにもある。イギリスでファッションリーダーとしても知られているケイティは、ライヴ・ステージやMV撮影で着用する衣装はもちろん、プライベートに至るファッションまで、自己流にカスタマイズするという特技を持っているそう。手ごろな洋服を買い漁っては、全て自分の好きなスタイルにリメイクしてしまうという彼女は、なんと業務用のミシンまで愛用し、ウィッグまで作ってしまうこだわりようだ。
そんなクリエイティヴな彼女にインスパイアされたベッツィ ジョンソン(BETSY JOHNSON)やドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)は、ザ・ティン・ティンズのデビュー当時から楽曲をランウェイのBGMに使用。また2010年には、トミー ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)の香水「LOUD」にCM出演&オリジナル楽曲を提供した。個性的でクリエイティブな2人らしいカッコいいCMも大きな話題に。音楽、演出、ファッションにおけるすべてを自らのアイディアで生み出し、多くのファンを魅了し続けるスーパー・ユニット、ザ・ティン・ティンズ。新作アルバムはもちろん、今後の彼らの活動にますます目が離せない!