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matohu(まとふ)デザイナー堀畑・関口に聞く、matohuのクリエーションとこれからについて

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ロンドンのバービカンセンターにて開催された、日本のファッションをテーマにした「Future Beauty: 30 years of Japanese Fashion」展。1980年から現在までの日本独特のデザインや美をテーマした展示が行われた 。

1月27日、関連イベントとして、ニュージェネレーションデザイナーとして注目を集めているmatohu(まとふ)のデザイナーである堀畑裕之と関口真希子によるトークショーが行われた。人と人との繋がりを大切にし、自分たちの思いが伝わるようにと丁寧に作られたmatohuの服。そんな彼らの作品に対する思いや世界観について、トークショー直前の二人にインタビューを行った。

matohuにとって6年ぶりのロンドン

お二人は以前ロンドンにお住まいだったとのことですが、ロンドンに来れられるのは久しぶりですか?

堀畑:はい。ロンドンには6年ほど前に1年くらい住んでいたのですが、その時以来です。

では、今回の展覧会で日本を代表するデザイナーとしてご自身の作品が展示されるということは、凱旋されるような感じですね。

堀畑:自分達がロンドンに来たときは、まだmatohuの原型はなかったのですが、将来こんなことをやりたいという漠然とした夢がありました。 実はバービカンセンター(展示会場)は当時よくクラシック音楽を聴きに来ていました。

それから6年経ち、ここで自分たちの作品が展示されて、講演のために招待して頂くことになるとは、人生って不思議なものだなと思います。

バービカンセンターでの講演でのmatohuデザイナー堀畑・関口 両氏
バービカンセンターでの講演の様子

ロンドンでの1年間は、今のmatohuにとってどのような時間でしたか?

堀畑:ロンドンにいた間、1年かけてmatohu のコンセプトづくりをじっくりとしました。それがとてもいい時間でした。日本とは全く違う環境のロンドンだったからこそ、改めてピュアな形でできたのだと思います。またボラ ・アクスという若手デザイナーとお互いにフィーリングがよく合って、彼の明るくて自由な雰囲気のスタジオで和気あいあいと働いていました。

そういう経験をしてから自分たちもmatohuをスタートできたのがよかったです。その1年間はいろんな意味で自分達にとっては財産になっています。

今、仕事で毎日忙しくてもくじけてしまわないのは、本当に自由でよい時間を過ごせたロンドンの1年間がどこか心の中にあるからなんです。いろいろな思い出のあるバービカンセンターで講演できるのはとても光栄なことで、どのように聴衆の方が感じてくださるのかとても楽しみです。

matohuのクリエーションについて

matohuを始めてからの6年間で、お二人のクリエーションに対する姿勢は変わりましたか? 10シーズン続いた「慶長の美」を終えて、現在は新たに「日本の眼」というテーマで制作されていますよね。

堀畑:「慶長の美」をテーマとしていた最初の10シーズンは、慶長年間(1596~1615年)の美術工芸品から受けたインスピレーションを服に落とし込んでいましたが、やがてそのやり方が少し窮屈に感じるようになりました。そこで次第に、具体的な美術工芸品の美しさを服にするというプロセスそのものよりも、この工芸品が持っている美しさって何だろうということを探求することに関心が移っていきました。

matohu 2010年春夏コレクション「織部(おりべ)」画像1 matohu 2010年春夏コレクション「織部(おりべ)」画像2
matohu 2010年春夏コレクション「織部(おりべ)」より

モノそのものではなく、それを美しいと感じている美意識を服に転換していく方向に変わっていったんです。その延長線上にあるのが「日本の眼」です。「慶長の美」に比べて、日本の美に対するアプローチがより深くなっていった感じです。

美意識を表現し、伝えるというのはとても抽象的なことですね。そのことについてもう少しご説明していただけますか?

堀畑:見えているものや世界は、日本人であっても西洋人や他のアジア人であっても同じなんです。例えばここに壺があって全員がそれを見ている。ある人は汚い壺だなと思うし、ある人はそれを美しいと思うかもしれない。一つの対象に対して見え方は多数あります。ただそれを美しいと感じる視点を共有することで、今まで美しいと思わなかった人がそこに美を発見できる、それが美意識の面白いところだと思うんですね。

そして、日本人が長い年月をかけて養ってきた、日本美に対する見方はどこにあるのかということをひとつひとつ丁寧に探っていきたいと思ったんです。現代は世界中の人が同じものを見ているグローバルな時代でもあるので、その土地や民族固有の歴史的な見え方というものをお互いにシェアできたらより豊かになれると思います。それによって僕達も今まで知らなかった 他の文化にある美にも気づけるのではないかと思います。

「待とう」という姿勢

日本人が持ってる審美眼を世界の人と共有するため、美しいものに対する見方そのものをどう理解したらいいのかというところまで伝えようとされているんですね。

堀畑:そうですね。ただ、言葉でそれを表現してもなかなか伝わりにくいと思うのですが、僕達はモノをつくる仕事をしているので、モノそのものを通してなら広くいろんな人が直感的に美しいと思えるものを提示できるのではないかと思っています。

関口:自分達も日本文化にまだまだ精通 しているわけではないので、毎回勉強し続けて「こういうことだったのか」と発見してきたのが「慶長の美」でした。次の「日本の眼」でもそんな美意識に触れた自分達が、それを服に落とし込むということの繰り返しでもあります。そして、発見することに対する感動が毎回あって、それが次のステップへの原動力になっていきます。

堀畑:そういう積み重ねの中で僕達自身が成熟するのを待ちたいという気持ちがいつもあります。matohuというブランド名のひとつの意味は「待ちましょう」という意味で、自分達の視点がこれからより広がって、深まっていくのを待ちたいという気持ちで名付けました。いつまでも自分達が新鮮な目を失わなければもっと成熟を深めていけると思っています。

matohu 2010年秋冬コレクション「かさね (秋冬)」画像 matohu 2011年春夏コレクション「かさね (春夏)」画像
左) matohu 2010年秋冬コレクション「かさね (秋冬)」より
右) matohu 2011年春夏コレクション「かさね (春夏)」より

毎回どんどん深まっていくのを感じられる、また新しい視点を自分達が獲得したいという気持ちがさらに起こってきます。そういうやり方を見つけられてよかったと思っています。

ブランドの成長もご自身の成熟も、そして周りの方の理解も全部がひとつの方向に向かって一緒に歩んでいける感じですね。

堀畑:お客様とのコミュニケーションがとても楽しいです。作った服を買ってくださる方々が自分達の問題意識を共有してくださって、こういう視点でものを見たら楽しい、おもしろいとを教えてくださるんです。

例えばこんな本よかったですよ、と持ってきてくれたり、テーマになった器を使ってお茶会をして招待してくださったり。普通は見せない貴重な美術品を特別に見せてくださったこともありました。そういったコミュニケーションを深くできるのがおもしろいです。

matohuのテーマが半年ごとの使い捨てのテーマではないからこそ、お客様も一緒になって楽しんでくださるんだと思います。

インタビューの後に行われたトークショーには200人近い聴衆が訪れ、ロンドン在住のファッションを学ぶ学生や、関係者よりmatohuの世界観や日本の美に対する考え方についての質問が多く寄せられた。

そして、そのひとつひとつの質問に、慎重に言葉を選びながら真摯に回答するふたりの姿がとても印象的だった。

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