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「アートの新たな可能性」
アカデミーヒルズ理事長・竹中平蔵/森美術館館長・南條史生

経済的な豊かさ以上に心の豊かさが着目されてきている今の日本では、ソフトパワー(国がもつ文化や政治的価値観、政策の魅力)が注目されている。その中心的役割の担い手として社会、政治、経済と密接な関係にあり、影響力の大きさに期待を集めているのが、「アート」。総務大臣として活躍してきた竹中と、シンポジウムやプロジェクトで国内外のアーティストや美術館長と美術界の未来について精力的に意見を交わす南條との対談では、アートの持つ新たな可能性を示しながら、日本がアートを育て力にするための方法を探った。

「アートとは何か?」を考える刺激的な一日 中田英寿らアートを語る「六本木アートカレッジ」レビュー
左)南條史生、右)竹中平蔵

実は、日本で国民一人当たりがアート関連の税金として支払っている金額はたったの年間1,000円。フランスの10分の1に過ぎない、と竹中は指摘する。そもそも、なぜ国がアートを支えなければならないのか?その答えとして、「生産性が向上しないアートだからこそ、一部の富裕層だけではなくあらゆる人々にとって身近な存在であるために国がアートを支援する必要がある」と語った。

また、南條は「アートは『柔軟な思考』そのもの。アートのそのスピリットを学ぶことで、仕事も生き方もクリエイティブになれる」と話し、竹中は「アートの受け手側にもそれを理解するだけの教養と視点が欠かせない」とアートの受け手側の可能性や目指すべき方向性について語り合った。「日常生活とアートを切り離して考えるのではなく、全ては結果的に『何が美しいのか、何がクールか?』といった美学的な議論を重ねることで、日本の産業や暮らしそのものをよりよいものへと変革していける」。そんな南條館長の示すアートの新たな可能性に、受講者たちはうなずき目を輝かせていた。

「境界を超えた表現者~表現者はアーティストだ!~」
美術家・会田誠/メディアジャーナリスト・津田大介

美術と言葉という異なった表現方法ではあるものの、既存概念にとらわれず、新しい可能性に向けて表現し続ける二人。そんな彼らの「表現する」ことへのこだわりを探り、対談を通じて受講者ひとりひとりも、表現者(=アーティスト)であることを体感してもらおうというこの講座。

「アートとは何か?」を考える刺激的な一日 中田英寿らアートを語る「六本木アートカレッジ」レビュー
左)津田大介、右)会田誠

会田誠は、社会的問題に対して独自の表現方法で「犬(雪月花のうち”月”)」や「巨大フジ隊員対キングギドラ」、「日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ」など鮮烈な作品を発表し続ける「取り扱い注意のアーティスト」。「嫌われるために作品をつくる。バランスをとるように、率先して他の人がやらないことをやる」と語る彼と、文部科学省の著作権審議会の模様をtwitterで流すなど、メディアジャーナリスト津田大介もまた「誰もやらないこと」にこだわる表現者だ。その誰もやらないこと、もしくは誰もがやろうと思ってもできなかったこと形にするということが、現代アートの本質であることに気付かされる。

また、会田の「日本語」という作品に会場中が釘付けになった。一見、和歌が綴られた美しい和紙の巻物に見えるこの作品は、実際はオンラインの巨大掲示板「2ちゃんねる」に書き込まれた罵詈雑言が書かれている。津田氏からは「2ちゃんねるの罵詈雑言ならストックしているもの沢山があるので提供しますよ」といった言葉も飛び出し、受講生達の笑いを巻き起こしていた。

「チームラボ、デジタルテクノロジー、文化、アート、そして日本」
チームラボ株式会社代表取締役社長・猪子寿之

チームラボはエンジニア、デザイナー、建築家、CGアニメーター、数学者など、様々なスペシャリストから構成されるウルトラテクノロジスト集団。しかし、彼らの活動はこれまでのインターネットという枠には収まらない。ヴェネツィア・ビエンナーレや海外のアートフェアへの出品に続き、カイカイキキギャラリー台北での個展など村上隆からも認められ、さらには「美術手帳」誌で特集されるなどアート界からの視線も熱い。そんなチームラボの代表である猪子は、彼らの得意とするデジタルテクノロジーによってアートの世界で注目される作品の数々を紹介しながら、その背景にある日本文化の特徴とデジタル時代だからこその新たな展望を示した。

さらに猪子は、日本文化の特徴を目的のために行われるはずの行為そのものを消費する点にあると指摘。それに初めて気付いたのは、任天堂から発売されている彼自身も大好きなゲーム「スーパーマリオブラザーズ」がきっかけだったのだそう。ゲームを攻略するための操作そのものに感覚的な気持ちよさを感じた彼は、そこに日本の伝統文化である茶道との共通点を見出した。茶道では、「茶をおいしく飲む」という目的以上に、茶を飲むまでの道具の使い方や礼儀などが重視されているからだ。この考え方が発展してできたのが、行為そのものをインターフェースにするチームラボのプロジェクト。壁に浮遊する書に触れると、虹や雪といった文字が持つイメージ映像が広がるという鑑賞者参加型の巨大インスタレーション「What a loving,and beautiful world(世界はこんなにもやさしく、美しい)」が披露されると、受講者達はその美しさに息をのんだ。

さらに彼が指摘したのは、遠近法のように幾何学的に計算・作図していない単調なものと批判されがちな日本の個展絵画とドラゴンクエストの構図には、同じく日本的な空間認識が受け継がれているということ。このような日本的な空間認識をコンピューター上の仮想の3次元空間によってCGで再現したのが「FLOWER AND CORPSE(花と屍)」や「百年海図鑑」。世界の違った見え方が特有のデザインや産業を生んだことに驚かされ、また、「産業と文化は密接に繋がっていることを意識すれば、日本という国は世界で勝ち残る力を保持出来るはず」と語る。脈々と受け継がれてきた日本の思想や美意識をデジタルテクノロジーを使って紐解いて行こうとする彼らの今後の動向には、世界中から期待が高まっている。

次は、Chim↑Pom、中田英寿、栗林隆が登場!

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伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真1 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真2 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真3 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真4 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真5 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真6 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真7 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真8 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真9 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真10 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真11 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真12 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真13 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真14 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真15 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真16 伊勢谷友介、チームラボ猪子寿之、Chim↑Pom、中田英寿らがアートを語る「六本木アートカレッジ」レポート|写真17

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