リーバイス(Levi's)の「501」から遅れること約20年の1911年にH.D.リー・マーカンタイル社がウエストオーバーオールの製造を開始した。リーはもともと食料品を扱う会社で、労働者向けの労働着の卸もしていたが、オリジナルのワークウェアの生産に乗り出したのだ。
また、この頃には、デニムを使用した労働着の需要が増えてきたことや、リーバイスのリヴェットの特許(1890年まで有効)もすでに切れていたこともあり、アメリカ各地に多くのワークウェアメーカーが存在していました(それらの中には、明らかにリーバイスを真似したものを作るメーカーがあったが、たいていのメーカーは現存していない)。現在も残っているもので有名なものでは、カーハートやオシュコシュなどがあります。
しかし、まだ“ワークウェア”としてのジーンズであり、広く一般に普及することはなかった。ジーンズが“ファッション”化することに一役買うことになったのは、ジーンズを労働着として着ていた労働者の中のカウボーイたち。
カウボーイは当時、勢いよく発展していた映画にしばしば登場。1930年代には映画の中でカウボーイたちはジーンズを着用するようになりました。それを多くの観客が目にするようになる。
リーバイスはカウボーイをイメージさせる広告を展開し、リー(Lee)は「101カウボーイパンツ」を発売。そして、リーバイスの「501」に、カウボーイたちが馬の鞍をリヴェットで傷つけることを嫌がっていたため、「隠しリヴェット(コンシールド・リヴェット)」が採用される(1936年)。その後、サスペンダーボタンが廃止されていく。
1929年に世界恐慌が起こりアメリカの経済も不況に。牛肉の価格下落のため西部の牧場主たちは経営困難な状態になっていった。そこで牧場主たちは「デュード・ランチ(DUDE RANCH)」を思いつく。それは恐慌下であっても、ゆとりのある東部の富裕層たちに、夏の休暇を牧場で過ごしてもらう、いわゆる“牧場観光”のこと。「デュード・ランチ」自体は1930年代よりも前からあったが、30年代には西部の牧場はどこも「デュード・ランチ」を催していました。
「デュード・ランチ」に来る観光客は、映画や宣伝ポスターで見た“ジーンズを穿いたカウボーイたち”への憧れや郷愁感、開拓者たちの精神に対する尊敬などから、自分たちも同じ野外の牧場でジーンズを穿いて食事をしたりして休暇を過ごしていった。
リーバイスは「デュード・ランチ」アイテムとして女性用の「レディ・リーバイス(LADY LEVI'S)」、いわゆる701XXを発売。ここで、女性向けのジーンズが世界に初めて生まれました。また男性用、女性用ともにライダース・ジャケットも発売された。
「デュード・ランチ」は、東部にジーンズを普及するきっかけと、女性向けのジーンズの生産の開始のきっかけにはなったのだが、まだこの時代には、ジーンズは“労働者の服”というイメージが強かったので、一般の人たちが日常的に着ることはなかったよう。「デュード・ランチ」用のイベント衣装・仮装衣装といったものでした。