ハサウェイ役が決まったときの心境は?
素直に嬉しかったですね。ガンダムシリーズには、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅴ』「激突 ルウム会戦」で一度参加させていただいたことがあったのですが、その時はパイロットではなく、スペースコロニーのいち住人でした。今回は、ついにガンダムパイロットになれるという喜びがとても大きかったです。
一方で知れば知るほど、やればやるほど、「ガンダム」作品の大きさを実感して、どんどんプレッシャーになっていきました。公開前に押しつぶされそうでした(笑)。
ハサウェイは、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では壮絶な体験をしました。小野さんはハサウェイをどのようなキャラクターだと捉えましたか。
実はいまだに難しくて(笑)。言葉で表すのが難しいキャラクターです。でも、アムロとシャア、両方が抱いていた想いを叶えようとしているのがハサウェイだと思っています。
アムロとシャアが抱いていた想いとは?
やり方は違えど、2人とも目的は“地球を守ること”でした。シャアは、人間が愚かなことをする前に、地球を寒冷化しようとし、逆にアムロは、人間にはもっと可能性があるし、再生できるという希望をもって、シャアを止めようとしました。どちらも地球のことを考えた上での行動なんですよね。
ハサウェイはその思いを受け継いで、 “地球を守るため”に反地球連邦政府運動に走ります。1000年先も地球で生きられるようにと。ですから僕も演じる上では、マフティーのリーダーとして、このあと反地球連邦政府運動を起こすという目的だけは、心に持ち続けていました。
では、なぜそのハサウェイを難しいキャラクターだと感じられたのでしょうか。
ハサウェイは迷いが絶えないのです。「これが本当に正しいのか」自問自答しながら、常に悩み、苦しんでいます。マフティーとして反地球連邦政府運動を起こそうと強い意志を持ちながらも、それが当たり前のようにバレてはいけないし、ブライト・ノアの息子として好青年でいなければならない。先も見えない中、引くに引けないところまできている状況で、リーダーとしてマフティーの皆を率いて前に進まなければならないわけですから。
相反する思いを持ち合わせているんですね。
正直なことを言うと、演じるうえでも相当悩みました(笑)。ハサウェイは、心と体、表情と声色がずっとバラバラなんです。映像とあわせて見たときに、しっくりこないことがあるというか。例えば、タクシーの中で運転手さんとマフティーについて話すシーンがあるのですが、その時ハサウェイは「自分はマフティーとは関係ないよ」みたいな軽い雰囲気の声を出しているのに、実際の表情は曇っていたり。
でも、その相反する要素を持ち合わせた “違和感”を表現することは、ハサウェイの魅力を引き出すことでもあると感じました。
“違和感”がハサウェイの魅力であると。
はい。現場では、村瀬修功監督やスタッフさんから「ハサウェイの青年らしさ、青さと泥臭さのようなものを出してほしい」と助言をいただいていました。自分の行動・決断に悩むハサウェイの姿って、経験を積んで、失敗もしてきた大人の心には刺さるのではないかと感じています。子供の頃なら難しいことを考えずに突っ走れるだろうし、自分が正しいという信念から思い切ったことができますが、今のハサウェイはそうではありませんからね。
今回の作品は、チーム一丸となって“丁寧に作り上げた”ともお伺いしました。具体的にはどのように進められたのでしょうか。
アフレコが始まる前に、スタッフで集まって、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の世界観だったり、個々の役の設定だったりを話し合いました。いざスタートしてからは、本当に小さな調整の積み重ねでした。
Aのお芝居の仕方は違うからBのお芝居でやる、といった大きな変更や指示ではなく、Aの方向性とは別にBの方向性でもやってみようか? さらに違うCの方向性でもやってみようか? と。あらゆるパターンを試して最善を探りながら進めていきました。実は、完成作品を見るまで、どのテイクが使われたのか分からないところも多かったんです。
演出でこだわった点もあるのでしょうか?
今回の作品は、物語にあえて“余白”を残しているなと感じています。言葉での説明を省いて、映像で匂わせるような演出もあったりと。「あの時、ハサウェイはこういう意図をもっていたのだろうか?」など、見た人同士で熱く語り合ってもらえると嬉しいですね。
■ギギ・アンダルシア(C.V.上田麗奈)
本作のヒロインであり、ハサウェイと同じハウンゼン356便に搭乗、乗り合わせた男性たちを魅了した容姿端麗な少女。全てが謎に包まれているが、エレガントな立ち振る舞いと、同機に搭乗しているという事実が、大きな後ろ盾の存在を想起させる。大人社会の歪みに迎合せず、想いを素直に口にする彼女との出会いによって、ハサウェイもその凍りついた過去をも溶かしていく。
■ケネス・スレッグ(C.V.諏訪部順一)
地球連邦軍将校。階級は大佐。元はモビルスーツパイロットで、「シャアの反乱」でも第一線で戦った経歴を持つが、自身のパイロット特性に見切りをつけ、以来平時の実戦のない連邦宇宙軍で新型モビルスーツの開発を続けていた。反地球連邦政府運動マフティーの過激化に対応すべく、キンバレー・ヘイマンに替わりマフティー殲滅部隊の司令として、南太平洋を管区とするダバオ空軍基地に赴任する。ハウンゼン356便で出会ったハサウェイに、彼の求めるパイロット像を重ねる。
■ガウマン・ノビル(C.V.津田健次郎)
数々の大戦を戦い抜いてきたベテランパイロットのマフティーメンバー。顔に大きな傷を持つのが特徴。搭乗機のコールサインはメッサー2。
■エメラルダ・ズービン(C.V.石川由依)
ハサウェイを迎えにダバオに送られた姉御肌のマフティーメンバー。技量的な問題で正規のMSパイロットになれなかった過去を持つ。
■レイモンド・ケイン(C.V.落合福嗣)
1ギャルセゾンのキャプテン。マフティーメンバー。体格がよく大柄な男性だが、仲間思いな一面も見せる。
■イラム・マサム(C.V.武内駿輔)
マフティーの支掩船ヴァリアントの副長兼参謀格のマフティーメンバー。ハサウェイの事情を知っている良き理解者。