東京都現代美術館で開催中の、日本ファションの30年ををたどる「Future Beauty 日本ファッションの未来性」。日本ファッションが持つ創造性と、その力強いデザインに潜む文化的背景に焦点を当てる本展では、日本が誇る世界的デザイ ナー、三宅一生の作品も展示されている。
「PLEATS PLEASE Making Process 2012」
会場は4つのテーマで構成されており、セクション2「平面性」では、1994年春夏コレクションからブランドとして本格的にスタートした「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」が展示されている。独自の工程から生み出された“イッセイ・プリーツ”の登場は1988年に遡る。以来、リサーチと開発が重ねられ、より軽く、着やすく、扱いやすい機能性をそなえた「衣服のプロダクト」となる「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」が誕生した。
展示作品「PLEATS PLEASE Making Process 2012」は、実際の制作過程が5mのパネルで紹介されている。通常の機械によるプリーツ加工は、上下2枚の紙の間に縫製前の布地を一枚ずつ置いて、プリーツを刻むマシーンにかける。そしてプリーツがかけられた布地を服の形に縫製する。しかし、"イッセイ・プリ—ツ"は、一枚の布地ではなく、ひだに織り込まれる布地の分量を加味した形で服として縫製されたアイテムにプリ—ツ加工をほどこす。展示されたパネルに並ぶ長袖シャツやドレスは、紙の間から取り出せばすぐに着用できる完成品としてマシーンから出てくる"イッセイ・プリーツ"の特徴を表している。また、この作品に使われているアイテムの柄は、1972年春夏シーズンに発表されたイラストレーターの湯村輝彦とのコラボコレクションを復刻している。
「132 5. ISSEY MIYAKE IKKO to LONDON」 2012年
「132 5. ISSEY MIYAKE」は、三宅一生と研究開発チームのReality Lab.(リアリティ・ラボ)による、現在活動中のプロジェクト。「デザイン界のオスカー」と称される「デザイン・オブ・ザ・イヤー2012」ファッション部門最優秀デザイン賞にも輝いた。
展示されているのは、衣服に革命を起こした、3D「立体造形」シリーズとフラットシリーズの構造を合わせたフラット3Dシリーズ。20世紀のグラフィックデザイン界を牽引した田中一光によるポスターの色彩や技法をインスピレーションソースに、再生ポリエステル素材をつかい、日本の伝統的な板締め絞りやオーバープリントという染色技法で表現されている。最先端の再生繊維とゆがみやにじみ感の味わいある手仕事とが融合する。現代のものづくりに対するメッセージがこの服には込められている。
セクション3の「伝統と革新」に展示されている、刺し子地を使った作品は、1970年に制作され、 1971年にニューヨークで発表された。日本の伝統技法の手仕事である「刺し子」を織りで表現した布地を使った作品。ワコールとの共同開発による「ボディウエア」「コラン」、東レのウルトラスエード素材「エクセーヌ」を使用し「パピヨン」が制作したブーツがコーディネートされている。Tシャツのプリントデザインは70年初期にテキスタイルディレクターとして「ISSEY MIYAKE」の服づくりに加わった皆川魔鬼子(現ハート(HaaT)ディレクター)が手掛けた。
ISSEY MIYAKE 「コンバット」1971年
また、1971年に1972年春夏コレクションとして発表された「コンバット」は、テリー・ジョンスンこと湯村輝彦による、身に着けるだけで気分が楽しくなるイラストのプリントと、日本の柄であるななめ縞、市松の大小を組み合わせたデザイン。このシリーズは、40年超の時を経て、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」の2013年春夏コレクションで復刻される。
その「コンバット」と背中合わせに展示されているのが、津村耕祐の「ファイナルホーム」、続くセクション4「日常に ひそむ物語」では、「アストロ・ボーイ・バイ・オーヤ」のデザイナー大矢寛朗、小野塚秋良が手がけた「ズッカ」、「ネ・ネット」の高島精一、そして、2000年から2007年春夏まで「ISSEY MIYAKE」のデザイナーを務めた滝沢直己が2004年にアーティストのタカノ綾とコラボした作品が並ぶ。いずれも、三宅一生の仕事場から輩出されたデザイナーたちだ。
他にも、三宅一生に関連するものでは、横尾忠則デザインの「ISSEY MIYAKE」のパリ・コレクションのインビテーションがセクション1とセクション2をつなぐ空間に展示されている。
1970年代から日本ファッションを牽引してきた三宅一生の軌跡と、現在もなお尽きることない創造力で新しい服のありかたを追求する三宅一生とReality Lab.とのクリエイションに今、注目だ。