映画『キャラクター』が、2021年6月11日(金)に全国ロードショー。主演は菅田将暉が務める。
着想源となったのは、“もしも売れない漫画家が殺人犯の顔を見てしまったら?”“しかも、その顔を「キャラクター化」して漫画を描いて売れてしまったとしたら??”というアイディア。登場人物それぞれが幾重にも交錯するダークエンターテインメントが、10年もの歳月をかけたオリジナル原案をもとに、豪華キャストを迎えて映像化される。
主人公の山城圭吾は、漫画家として売れることを夢見みている。画力はあるが、お人好しな性格ゆえに人の悪を描けず苦悩。才能なく万年アシスタント生活。家のスケッチに向った先で、無残な姿になり果てた4人家族を発見。殺人犯・両角との出会いをきっかけに、人生が大きく動かしていく。
演じるのは、『糸』『花束みたいな恋をした』など話題作で主演を演じた菅田将暉。彼は次のように話す。「オリジナル脚本でキャラクターという題材。キャラクターとは個性でありその人の生き様。今とても重要なテーマだと思い向き合っていきました」
山城と出会い運命を狂わす天才的な殺人鬼・両角。山城は両角をキャラクターにサスペンス漫画を描き始めると…欠けていた本物の「悪」を描いたことで漫画「34」が異例の大ヒット。しかし漫画で描かれた物語を模した事件が発していく。そして再び両角は山城の前に姿を現す。
『キャラクター』で映画初挑戦となるSEKAI NO OWARIのボーカル・Fukaseは、次のようにコメント。「オファーを頂いた時は正直とても悩みました。果たして自分に務まるのか、ご迷惑をかけてしまうのではないかと。しかし、1年間以上の長い時間をかけて準備することができたので、撮影が始まると程よい緊張感の中非常に楽しく過ごさせて頂いてクランクアップを迎えた時には涙が溢れそうになりました」
映画『キャラクター』で天才的な殺人鬼・両角役を務めたFukaseにインタビューを実施。SEKAI NO OWARIのボーカルとして知られるFukaseが、当初断ることも視野に入れたという、俳優デビューを実現するまでの道のりや、実際の役作りについて話を伺った。また後半には、アーティストと俳優業にまつわる<共通点>についても、Fukaseならではの持論を展開。チャーミングな人柄が伺える、ユニークなたとえ話も必見だ。
■Fukaseさん初の俳優デビュー作となった『キャラクター』ですが、そもそも両角役はどのように決まったのでしょうか?
最初はプロデューサーの方からオファーをいただいたのですが、僕自身<演技>に対する知識も自信もなかったので、当初はお断わりするつもりでいました。当時から、『キャラクター』には俳優界の錚々たるキャストが揃うことを把握していましたし、その中で超ビギナーの僕が加わることって、<楽器も触ったことないのに、音楽フェスのトリの一個前をやる>くらいの感覚なんですよ、本当に(笑)それから僕自身も映画がすごく好きなので、自分のような未熟な演者が一人加わることで、その世界観を壊してしまうことだけは、どうしても避けたかったのです。
その旨をプロデューサーの方にお伝えしたうえで、監督と一度繋げていただいた際に、「最悪、そのまんまでいいですけどね」と言われて。“一体どういう意味なんだ?!どういう目で俺のことを見ているんだ?!”と混乱したのですが、結局、家族やバンドメンバーからも「殺人鬼ぴったりじゃん」としか返ってこなかった(笑)
メンバーにいたっては、今まで殺人鬼とバンド組んでるくらいの感覚でいたのかもしれないですね。“Fukaseはいつか殺るんじゃないか”みたいな(笑)
そんなこんなで、最終的に誰も僕を止めてくれる人がいなかったんですよ。それでもプロデューサーや監督は「Fukaseさんならできる!」と熱いオファーを送り続けてくださいましたし、事前に演技の勉強ができるほど、撮影までの時間も十分にあったことから、この役を引き受けることを決意しました。もちろんバンドメンバーの全面的なサポートと理解にも感謝しています。
■Fukaseさん演じる両角役は、映画の中でも重要なカギを握る殺人鬼でした。原作を持たないオリジナル脚本でもありましたが、両角のキャラクター像は明確な設定があったのでしょうか?
いいえ。両角の設定は当初からだいぶ変更されました。完全なキャラクター像も存在していなかったので、どのような人物像を作り上げるか、という点では苦戦しました。
そんな時に、神木隆之介くんから「Fukaseくんの演じる殺人鬼は、優しい殺人鬼だと思うんだ」と、以前アドバイスしてくれた言葉をふと思い出しまして。すごく矛盾したワードだけど、自分はボーカリストなので、まずは<声>から“優しい殺人鬼”を再現してみようと、普段よりもワントーン上げた丸み帯びたイントネーションで喋ってみたんですよ。そうしたら、そのアンバランスさが妙にしっくり来てしまって、どんどん両角という殺人鬼のイメージが沸き上がってきたんです。
そこから視線が目に合わない感じとか、落ち着きのない手の動きとか、“両角ならきっとこうするだろう”という仕草も、両角というキャラクター像に加えていきました。
■確かに両角の挙動不審な仕草は、より一層不気味さを増していましたが、台本には無いものだったということですか?
はい。カメラが回って初めて菅田君と対面した時に、自然とあの仕草が出てきたんですよね。身体が勝手に反応したというか。そんな僕を見ていた監督たちが、「Fukaseくん、それいいね!」と喜んでくださって、見事現場採用になりました(笑)
■俳優デビューとは思えない才能ですね…。実際に役作りの上で、参考にした作品やモデルとなった人物はいるのでしょうか?
実はありません。殺人鬼モノの作品を友人がピックアップしてくれたのですが、僕自身<役作り>もクリエイティブの一環だと捉えた部分があったので、既存のものに頼ることなく、0から1を生み出したいという気持ちが非常に強かったのです。
それは僕が普段のクリエイターとして意識していることでもあって、もし仮に何かを参考にして“カッコよく見えてしまった”場合、それがパクリにならないように削っていく作業って、僕にはクリエイティブに感じられない。もちろん自分のフィルターを通して、アレンジを加えることができるテクニックって純粋に素晴らしいなと思うのですが、僕自身には向いていないというか。その過程で悩んでしまうこと自体、僕には精神的に不健康に感じてしまうんですよね。
■映画『キャラクター』では殺人事件が描かれることもあり、だいぶハードなシーンも多かったと思います。そもそも、こういったジャンルに抵抗はありませんでしたか?
僕、今でもお化け屋敷が入れないほど怖がりなので、少し前までは、そういった類の作品も観れなかったんですけどね。実際現場も血まみれ姿での撮影が多かったのですが、毎日血糊を塗られていると不思議と慣れてしまって(笑)撮影中に血だらけの夢をみたことがあるのですが、その状態は僕の日常と化していたので恐怖すら感じませんでした。
■そんな血だらけの撮影現場だったとは…
当時は音楽の別の仕事もあって、ラブソングを書いていたんですよ。ある時、菅田君に「僕この血だらけの部屋で殺人鬼やりながら、普段はガッチガチのラブソング作っているですよ」なんて現場で話していたら、割と真顔で「でも、それ何か共通することありません?両角と」と言われて。なんかそれが妙にグサッと僕に響いたので、家に帰って歌詞を一気に書き上げて、スタッフの方に見せたら「ちょっと卑屈すぎる」というコメントをいただきました。(笑)
どうして菅田君の言葉を真に受けてしまったのだろうという思いと、そりゃ自分は殺人鬼を演じているんだから、卑屈なラブソングになるわなと、納得しながらおかしくなってしまって。ちなみに“卑屈”と言われた歌詞の部分はカットされたので、いつかその部分は菅田君と一緒に歌おうぜって話しているんです(笑)責任取ってもらわないとね。