司会:特に印象的だったエピソードはありますか?
歌磨呂:僕、この『Mgirl』の時に結構時間がなくて。お誘いを受けて、やりたいんだけど時間がなくて、でも当日即興で大きなキャンバスを立てて絵を描くことだったら出来そうって言って、10mくらいの絵を描いたんです。撮影のことを考えると3時間くらいで描かないといけなくて、ヤバいなって思ってたんですけど、なんか全然疲れを感じなかった。
蜷川:本当?
歌磨呂:うん。その後、対談だって実花さんとしたもんね。
蜷川:結構遅くまで話してたよね。
歌磨呂:帰りの車は眠かったですけど、全然乗り越えられて。僕が描いてると、実花さんが「うわー!すごーい!良いじゃん!」とか、「可愛い!」ってみんなが言ってくれたりとか、常にそういういい空気が流れてて。僕は結構地味なことやってるんで、ずっとしこしこ絵とか描いて。なんかこういうのって、クリエイターにとってはすごく幸せだなって思う。僕は実花さんにいつもそういう話をするんですけど、ありがとうございますって思ってます。
蜷川:すごく良い撮影だったんです。なんでそういう風になっていくのかっていうのは分からなくて、そこに技も何もないんですけど、やっぱり一緒にやる人のことを好きになりながらやるんで。写る人もそうだし、例えばこういう風にガッツリ組む時の方だったりとか、自分が信頼して呼んだ人に関しては、「こういう風にして下さい」とは一切言わなくて、なるべく自由にやって欲しくて。でもそれって実は、「自由にやって下さい」って言われるのが一番プレッシャーなんだよね(笑)。頼まれる側としては。
歌磨呂:そうだね。
蜷川:「自由に一番良い所を出して下さい。後は引き受けます」って言われるのが。例えば私も『さくらん』を撮った時に、安野モヨコさんに好きにやって下さいって言っていただいたり、秋元康さんに『ヘビーローテーション』の時に好きにやって下さいって言われた時、その重さって言ったらない訳ですよ。一番重い(笑)。だけど、一番燃えるし、そんなこと言ってくれる現場は中々ないから、超頑張らないといけないって思うでしょう?信頼してもらえてるんだなって思うから、なるべく自分が好きな人とやる時はそういう風にするように心がけていて、だから多分歌ちゃんはきっとすごく大変で、だけどそれによって出来てくるものもすごく良くて、ハッピーで。っていう感じだった気がする。
歌磨呂:すごく大変だけど、フォローしてくれるから。「良いじゃん!」って言われるとすごく嬉しいんです。「大丈夫かなぁ?」って思いながら描いてるので、「良かったんだ!」って思えるから。周りを見てるというか、なんだろう。ごめんなさい、なんか。
蜷川:ううん。ありがとう!なんかあたしが褒められる会みたい(笑)。
歌磨呂:本当に、すごくいつも勉強させてもらってて。
歌磨呂:そうなんですよ。会わないでやる仕事が一番事故る。直接声とか聞くと、それ以上のものが伝わったるするので、デザインも起こしやすかったり。
司会:実花さんは対談の中でも仰っていましたが、自分で「こういう風にやってあげたい」って思える相手が本当にいないんだ、って。そのあたりのお話をお聞かせ頂ければと。
蜷川:基本的に、私は後輩を育てようというような気持ちは持つことがあまりないんですよ。それは、自分がベストな仕事をして、それが最終的に、例えば見てくれた人が幸せになったりとか周りの人も一緒に良い所に行けたりとか、そうなればいいなっていうのはあるけど、それはあくまでも順位的には下の方で、まずは私が死ぬ程良いもの作るっていうのがとにかく一番。だから後輩を育てようとか後輩にいい知り合い紹介しようとか1回も無かったんだけど(笑)。
でもなぜか歌ちゃんだけは、ちゃんと紹介しようとか、彼が良い所に行けるようになんか手助けできることはないかなって、ふと寝る前に頭よぎったりとか。なんかしてあげないといけない気になる“何か”がある。
歌磨呂:なんでだろう(笑)?
蜷川:分かんない(笑)。ダメだからじゃない?日常生活が(笑)。詳しく知ってるわけじゃないけど(笑)。