企画展「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ─あなたの眼はわたしの島─」が、茨城の水戸芸術館現代美術ギャラリーにて、2021年9月20日(月・祝)から10月17日(日)まで開催される。なお、当初は8月7日(土)からの開幕を予定していたものの、変更となった。
ピピロッティ・リストは、スイスを拠点に国際的に活躍する現代アーティストであり、ヴィデオ・インスタレーションの先駆者として知られている。1980年代以降のミュージック・ヴィデオの手法ともつながる、ジェンダーや身体、自然との共生といった現代社会に通ずるテーマを扱うリストの作品は、美術における映像表現の新しい領野を切り拓いてきた。
「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ─あなたの眼はわたしの島─」は、約30年にわたるリストの活動の全体像を紹介する展覧会。身体や女性としてのアイデンティティをテーマとする初期作品から、現代美術の国際展「ヴェネツィア・ビエンナーレ」に出品された代表作、自然と人間との共生を主題とした近作まで、約40点の作品を展示する。
1997年のヴェネツィア・ビエンナーレで発表された《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に(Ever Is Over All)》は、本展にも出品されるリストの代表作。街を歩く女性が、ハンマーで車の窓ガラスを次々に、楽しげに叩き割ってゆく様子がスローモーションで投影され、もう一方の壁には、赤い花の多彩なクローズアップ映像が互いに重なりつつ映しだされる。
同作は、2つのイメージが重なりあって投影される新しい映像インスタレーションの手法を提示するものとして注目を集めるとともに、フェミニズムの記念碑的作品としても評価されてきた。
人間と環境は、リスト作品における大きな主題のひとつだ。楽園追放が起こらなかった世界を夢想する《もうひとつの身体》、身体の内側と外側とが皮膚を介して浸透しあう《不安はいつか消えて安らぐ》、そして人間と環境にまつわる記憶の断片を紡ぎだす《マーシー・ガーデン・ルトゥー・ル トゥー/慈しみの庭へ帰る》などでは、人間の身体と自然界を取りまく多彩なイメージが混ざりあう、夢の連なりのような映像を展開している。
水もまた、創作上の重要なモチーフである。ライン川で撮影された《4階から穏やかさへ向かって》は、葉の裏についた小さな気泡、多様な生物、あるいは葉の虫食い穴から漏れてくる光などを、クローズアップで捉えた作品。こうした断片的な映像は天井から吊るされた雲状のスクリーンに投影され、重厚な音楽が流れるなか、観客はランダムに置かれたベッドに横たわって映像を見ることで、さながら水中にいるかのような感覚を体験することができる。
そのほか会場では、美術館の展示室内でありながらもリビングルームのようにリラックスしつつ作品を体験できる、映像と家具が溶けあった大規模なインスタレーション空間を展開するほか、普段は捨てられる透明や白色のパッケージを活用した関連イベント作品《イノセント・コレクション》も展示する。
企画展「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ─あなたの眼はわたしの島─」
会期:2021年9月20日(月・祝)~10月17日(日)
※当初は2021年8月7日(土)の開幕を予定していたものの変更(今後、さらに会期が変更となる場合あり)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所:茨城県水戸市五軒町1-6-8
開場時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
※9月20日(月・祝)は9:30から開館(ギャラリーの入場には優先入場予約が必要)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
入場料:一般 900円(700円)
※( )内は20名以上の団体料金
※高校生以下、70歳以上、障害者手帳などの所持者と付添者1名は無料(学生証、年齢のわかる身分証明書が必要)
※学生とシニアのための特別割引デー「First Friday」:学生証の所持者と65歳~69歳は、毎月第一金曜日(9月3日、10月1日)に100円で観覧可
※優先入場予約実施日(予約方法は美術館ホームページを確認):9月18日(土)・19日(日)・20日(月・祝)、10月9日(土)・10日(日)・16日(土)・17日(日)
■終了した会場
・京都国立近代美術館
会期:2021年4月6日(火)〜6月20日(日)
※当初は6月13日(日)までの会期を予定していたが変更
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町
【問い合わせ先】
水戸芸術館(代表)
TEL:029-227-8111