トム ブラウン(THOM BROWNE)の2021年秋ウィメンズ&メンズコレクションが発表された。
ウィメンズとメンズを合同で発表するのは3度目となる、今季のトム ブラウン。いわゆるウィメンズ/メンズやフォーマル/スポーティのように二項対立的に分類されるウェアの要素をアッサンブラージュすることで、大胆にうねり、波打つようなフォルムを生みだした。
均整のとれたフォーマルスーツの上に重ねたのは、力強いゴールドとともにたっぷりと裾にかけて広がるオフショルダードレス。とりわけバックは重厚なドレープを織りなす一方で、豊かに波打つスカート部分はパッファー仕様に。エレガントなドレスをスポーティな素材で揺さぶるとともに、シックな装いを見せるためのスーツスタイルと、身体にぴたりと寄り添う「べき」ドレスとの位置関係を、くるりとひっくり返している。
一方、タキシードやチェスターコートのテーラリング的ディテールは、ウエストからトップにかけて絞り、スカートを大きく膨らませたドレススタイルとアッサンブラージュ。とりわけ豊かに膨らんだスカート部分には、光沢感のあるパフ素材や、流れるようにひだを作るシアー生地、あるいは雪の結晶柄で刺繍を施したフェアアイルレースなどを組み合わせ、素材ごとに異なるフォルムをポリフォニックに形成している。
衣服のシルエットは、一方で身体とぴたりと密着し、他方で自由なフォルムをかたち作るといったように、これらの両極を大きく揺れ動く。タキシードのような均整のとれたセットアップスタイルや、ウエストを絞るコルセットなどが身体性を強調すると思えば、ダイナミックに隆起するスカート、大きく膨らんで波打つようにギャザーを寄せたシャツのスリーブなどに見るように、素材の特質を活かしつつ身体のシルエットから離れて変幻自在なフォルムを生み出している。
そのように自在に変幻を示すフォルムにおいて、静かに震え、時に大きく波打つプリーツは象徴的なモチーフだ。ドレスやジャケットを織りなすプリーツは、うねり、蛇腹のように褶曲し、激しくねじれ、相対立するはずの衣服の表面と裏面とが互いに入れ替わることすら起こっているのだといえよう。