企画展「MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」が、東京都現代美術館にて、2022年7月16日(土)から10月16日(日)まで開催される。
「MOTアニュアル」は、現代の美術表現のいち側面を切り取って紹介するグループ展だ。18回目となる「MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」では、他者について語り、記述することの困難さに向き合い、別の語りを模索する試みに着目。高川和也、工藤春香、大久保あり、良知暁の4名のアーティストを迎え、新作や再構成によるインスタレーション、映像を展開する。
高川和也は、鬱病患者や戦争体験者の言葉の収集を行うなど、言葉が人の心理に与える影響に関心に関心を抱き、映像による制作を行なってきた。本展では、ラッパーのFUNIらとの協働のもと、自身がラップに挑戦する新作映像を発表。感情を言葉で表すとき、何を得て何を失うのか、その作用を探るセルフドキュメンタリーとなる予定だ。
工藤春香は、リサーチ・コレクティヴ「ひととひと」のメンバーであり、社会的な課題へのリサーチに基づいて、語る言葉を持たない人びとへの想像から、テキストやオブジェ、映像から構成されるインスタレーションを手がけている。本展では、これまでの作品で扱ってきた旧優生保護法や相模原殺傷事件を踏まえ、相模湖の歴史とそれにまつわる社会構造、そして制度により見えづらくされている存在の声と視点をうつしだす作品を展開する。
大久保ありは、自らの経験や夢を基点としたフィクションに基づいて、パフォーマンス、印刷物、そしてテキストとオブジェによるインスタレーションなどを発表してきた。記憶や語りが持つ曖昧さや多重性を映しだすその作品は、歴史のなかで宙吊りにされ、忘却されたものにふれようと試みるものである。本展では、過去の自身の作品を再構成。時間の組み換えや語りの主体と客体の反転により、ある語りがつねに別の可能性を内包することを示してゆく。
良知暁は、投票制度などの近現代史にまつわるリサーチに基づく作品制作や、ごく日常的な行為を通した芸術実践を行っている。本展では、2020年の個展で発表した「シボレート / schibboleth」を再構成。1960年代にアメリカ・ルイジアナ州で実施された投票権をめぐるリテラシーテスト内の一節を軸とした同作では、読み書き発音といった発話の差異が、恣意的な判断の装置として、不可視なままに差別に加担することになる様相を考察する。
4人のアーティストはいずれも、言葉や物語を起点に、時代や社会が抑圧する存在の輪郭をいかにして描くか、あるいは人びとの生活を取り巻く複雑に制度化された環境をいかにして細やかに捉え直すことができるのかを主題化している。その対象は時として、社会のなかで語ることが避けられる問題でもある。そして言葉は、他者と文化を共有する手段であると同時に、その差異ゆえに対立を引き起こしうるものでもある。本展では、そうした言葉の両義性に対峙しつつ、慣れ親しんだ言葉の外部にある物語へと想像をめぐらせる展示を展開してゆく。
企画展「MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」
会期:2022年7月16日(土)〜10月16日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 3F
住所:東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
開館時間:10:00〜18:00(展示室入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(7月18日(月・祝)、9月19日(月・祝)、10月10日(月・祝)は開館)、7月19日(火)、9月20日(火)、10月11日(火)
観覧料:一般 1,300円、大学生・専門学校生・65歳以上 900円、中学生・高校生 500円、小学生以下 無料
※開催内容は変更となる場合あり
■参加作家
大久保あり、工藤春香、高川和也、良知暁
■同時開催
・企画展「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」
・コレクション展「MOTコレクション コレクションを巻き戻す 2nd」
【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)