「箱男」、それは人間が望む最終形態、すべてから完全に解き放たれた存在。ダンボールを頭からすっぽりと被り、都市を徘徊し、覗き窓から一方的に世界を覗き、ひたすら妄想をノートに記述する。カメラマンである“わたし”は、街で偶然目にした箱男に心を奪われ、自らもダンボールをかぶり、のぞき窓を開け、遂にその一歩を踏み出すことに。しかし、本物の「箱男」になる道は険しく、数々の試練と危険が襲いかかる。“わたし”をつけ狙い「箱男」の存在を乗っ取ろうとするニセ医者、すべてを操り「箱男」を完全犯罪に利用しようと企む軍医、 “わたし”を誘惑する謎の女・葉子......。果たして“わたし”は本物の「箱男」になれるのか。
映画『箱男』は、作家・安部公房が1973年に発表した同名の長編小説「箱男」を映画化した作品。頭からダンボールを被り都市を徘徊する「箱男」の姿を描きながら、“人間が自己の存在証明を放棄した先にあるもの”を問う。監督を務めるのは、安部公房本人から映画化を託された石井岳龍。主演を、永瀬正敏が務める。