音楽家・坂本龍一を追ったドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』が、2017年11月4日(土)に角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開される。
『Ryuichi Sakamoto: CODA』 は、2012年から5年の長期間に渡る本人への密着取材、そして膨大なアーカイブ素材から実現している。2014年患った大病を経て、過去の旅路を振り返りながら新たな楽曲が誕生するまで、坂本龍一の音楽的探求に正面から向き合った作品だ。
2017年3月には、8年ぶりとなるオリジナル・アルバム「async」がリリースされたが、カメラはその楽曲制作の現場にも密着。アルバム制作の様子の一部始終を捉えた本作は、坂本龍一の最終楽章の始まりとしてスクリーン上で奏でられる。
また、第74回ベネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門に公式出品されることが決定。坂本龍一本人も2013年にコンペティション部門の審査員として参加したゆかりの深い映画祭で、日本での公開に先駆けてワールドプレミアを果たすことになった。
作中では、過去の坂本龍一の音への探求の描写が、積み重なるコラージュのように現在の坂本の作曲プロセスと交差。その一部始終を捉えた映像がスクリーンに映し出される。
坂本龍一は、1978年に『千のナイフ』でソロデビューし、同年に細野晴臣、高橋幸宏とイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成。散解後も、音楽・映画・出版・広告などメディアを越え活動してきた。1984年には、自ら出演し音楽を担当した『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞、映画『ラストエンペラー』の音楽で米アカデミー賞ほかを受賞し、活動の中心を欧米に移行させた。こうして彼の革新的なサウンドを追求する姿勢は、世界的評価を得てきた。
そして、世界に衝撃が走った2001年9月11日、米同時多発テロ。彼は、ニューヨークの自宅近くで起きた圧倒的な暴力、それが生み出す世界の不均衡と非対称を感じつつも、人間の暴力性の生物学的なルーツを追い求め、音楽の原点を探究したのだ。
3.11以後には、宮城県名取市で被災ピアノと出会った坂本。自然の猛威によって水に溺れたピアノの音を聞いて、坂本は「痛々しくてその鍵盤に触れるのも辛かった」と語っていた。しかし、今ではその壊れたピアノの音色がとても心地良く感じるという。時と共にその被災ピアノの「自然の調律」の音は、サンプリングを通じて作曲プロセスの一部となり、新たな表現へと生まれ変わる。
予告編では、坂本の音楽的変化のきっかけにもなった、津波をかぶったピアノとの出会いのシーン、予期せぬガン告知を受けた後にこぼれた本音や闘病生活、様々な場所で<音>を集め、それが坂本の紡ぎ出す<音楽>とひとつになる様子など、“坂本龍一の今”が捉えられている。さらに、『ラストエンペラー』製作当時に坂本さん自身が撮った本邦初公開となる秘蔵フィルム、本編に盛り込まれている貴重な映像の一部も盛り込まれた。
代表作にして、映画音楽家としての出発点でもある『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲「メリー・クリスマス・ミスター・ローレンス」の美しい旋律も印象的だ。
【作品詳細】
『Ryuichi Sakamoto: CODA』
公開日:2017年11月4日(土) 角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
監督/プロデューサー:スティーブン・ノムラ・シブル
出演:坂本龍一
配給:KADOKAWA