『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』の舞台は現代よりも女性の立場が弱かった時代。女性の生き方に関して感じたことはありますか。
作品では、1930年代のリアルなジェンダーが描かれています。映画の前半では、夫が全ての選択をし、妻は従うだけですが、徐々に夫婦間のパワーバランスが変化していきます。私個人は、人間関係は平等であればあるほど、お互いの愛情は強くなっていくと考えているので、アントニーナにとって、夫婦間の関係性が変化していったことは大事なことだったと思います。
女優をやっていく上での一番のモチベーションは何ですか。
今まで語られていない物語を語ることが一番のモチベーション。また、観客が自分の姿を投影できるような人物を演じたり、作ったりすることです。あとは、演じることで固定概念をなくして、女性達の後押しをしていきたい。それも私にとって重要なことです。
女優として、自分が意見を発信していく力をお持ちだと感じますか。
私も持っていますが、それは誰もが持っている力だと思います。現代において素敵なことは、SNSという情報発信できるプラットフォームが誰にとってもあること。誰もが発言することができます。何か困難なことがあった時に、それがうやむやにならないよう個々が声を上げ続けられることはとても良いこと。過去であれば、問題が起こっても世に出ないまま無視されていたかもしれません。
SNSで女性のためにいろいろな発言をしていますが、きっかけを教えてください。
『ゼロ・ダーク・サーティ』が公開された後に、アメリカ国内で、他のキャストと、私の間で喧嘩があったっていう噂を書かれたんです。フェイクニュースです。すぐにFacebookに、記事は嘘で、彼女とは仲が悪くないということを伝えました。
そもそも映画業界に入ったときは、自分の意見を言うこと自体が恥ずかしかったし、あのような形でメディアを否定するような事を発言するのは「気難しい女優だよね」って言われそうで怖かったのですが、そうやって意見を表明することによって、嘘の噂に振り回されるような存在ではない、ということを認識してもらえたんです。
だから、その出来事以降は、他の女優や、女性達をサポートする意味でも声を上げ続けています。
最後に、アントニーナの姿勢を通して、観客に届けたいことは何でしょうか。
アントニーナは権力も無く、有名でもない普通の女性でしたが、愛と思いやりを使うことで300人の命を救いました。彼女が“正しい”と思ったことをするため、また愛のために払った犠牲にはすごくインスピレーションを受けますよね。この作品を見てくださった人達が、そんな「愛」を感じ、刺激を受け、自身も他の人の人生に何か変革をもたらすことができるんだと感じてくれたら、とても嬉しく思います。
1939年、ポーランド・ワルシャワ。ヤンとアントニーナ夫妻は、ヨーロッパ最大の規模を誇るワルシャワ動物園を営んでいた。アントニーナの日課は、毎朝、園内を自転車で巡り動物たちに声をかけること。時には動物たちのお産を手伝うほど、献身的な愛を注いでいた。しかしその年の秋には、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。動物園の存続も危うくなる中、夫のヤンから「この動物園を隠れ家にする」という驚くべき提案をされる。人間も動物も、すべての生けるものへの深い愛情を持つアントニーナはすぐさまその言葉を受け入れた。ヤンがゲットー(ユダヤ人の強制居住区域)に忍び込みユダヤ人たちを次々と救出し、動物園の檻に忍び込ませ、アントニーナは得意のピアノや温かい食事で、彼らの傷ついた心を癒していく。時にそのピアノの音色は、「隠れて」「逃げて」などの合図になることもあった。この“救出活動”がドイツ兵に見つかったら自分たちだけでなく我が子の命すら狙われてしまう。夫のヤンが不在になることも多い中、アントニーナはひとり”隠れ家“を守り、決してひるむことなく果敢に立ち向かっていった。いくつもの危険を冒しながら、いかにして300もの命を救ったのか。
【作品詳細】
『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』
公開時期:2017年12月15日(金)、TOHO シネマズ みゆき座他にて
監督:ニキ・カーロ
脚本:アンジェラ・ワークマン
出演:ジェシカ・チャステイン、ヨハン・ヘルデンベルグ、マイケル・マケルハットン、ダニエル・ブリュール
原作:ユダヤ人を救った動物園(亜紀書房)
原題:The Zookeeper’s Wife
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