映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』が2017年12月15日(金)に全国公開される。
原作は、作家ダイアン・アッカーマンによるノンフィクション「ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語」。第二次世界大戦中のポーランド・ワルシャワで、動物園の園長夫妻ヤンとアントニーナがユダヤ人を動物園に匿い、300名もの命を救った姿を描いた感動の実話だ。
自らの命の危険を冒してでも、ナチス・ドイツに対して勇敢に立ち向かっていった、彼らの強い信念。そして人も動物も母性で包み込むアントニーナの深い愛情。それは絶望の淵へ立たされたユダヤ人たちを勇気づける、大きな希望となった。本当に大切なものを見つめる心、戦争でも奪えない命の輝きを描いた作品となっている。
主人公・アントニーナを演じるのは、アカデミー賞作品賞他多くの賞レースにノミネートされた『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステイン。『女神の見えざる手』や『モリーズ・ゲーム(原題)』など数々の話題作に出演している。『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』では、強さと優しさを兼ね備えた美しい女性を熱演。
そんなジェシカ・チャステインにインタビューを実施。作中での演技についてや、女優として伝えていきたいメッセージを聞くことができた。
動物たちと一緒に生き生きと演技をしている姿が印象的でした。
動物達と仕事をするのは、スピリチュアルな経験でした。アントニーナは全ての生き物が奇跡だと思っていたのですが、彼女の動物との接し方にもその考えが表れています。動物達と心を通わせることで、奇跡的な存在である彼らを称えているんです。
動物達に接するにあたり気を付けたことはありますか。
動物達が安心できる、健康的な環境作りを心掛けました。そのために、動物をコントロールしようとして何かを強制することは絶対にせず、動物がやりたいことに私達人間が合わせていきました。その姿勢が動物達に伝わって、彼らが心地良さそうにしているのが私にもわかりました。
動物たちに合わせるとはどのようなことでしょうか。
例えば、赤ちゃんライオンに哺乳瓶でミルクをあげるシーン。リハーサルでミルクをあげているうちにお腹がいっぱいになってしまって、本番でミルクを飲んでくれなかったんです。そんな状態で哺乳瓶を無理に口に持っていくのは可哀そうですから、ニキ・カーロ監督の提案でお昼寝させてあげた。場面の設定を変更したのです。そうしたら、眠ってくれてうまくいったんです。
動物の触れ合いのシーンは、合成を使っているわけではないのですか?
私と動物が触れ合っているシーンは合成ではありません。例外的に、赤ちゃんの象は、現場では人形を使い、CGで生き物に加工しています。それ以外の、動物と私のシーンは全て実際の動物と一緒に撮影をしています。
赤ちゃんの象は、実は人形だったのですね。
はい。赤ちゃんの象が苦しんでいる場面では、人形を使ったせいで、大人の象のリリーが全然興味を持ってくれなくて(笑)。かなり一緒に時間を過ごしていたから知っていたのですが、リリーは、りんごが大好き。だから、赤ちゃん象の人形の下と私の体にりんごをたくさん隠して、演技をスタートしました。そうすると、リリーはりんごを探そうとして一生懸命鼻を動かしていた。彼女にとっては、ただのゲームだったんですよね。でもお互い安心して演技をすることができました。
役を選ぶにあたって意識していることはありますか。
自分が見ている世界の中をしっかりと体現しているキャラクターを大切にしています。
今回は過酷な状況の中で勇敢な行動をとった実在の人物を演じました。
アントニーナは、周囲への共感力が素晴らしいですよね。彼女は勇気のあるヒーローではありますが、命を救うために使うツールは、武器ではなく“愛“。映画の典型的なヒーロー像とは異なる、思いやりを持つヒーローである点が、彼女の魅力だと思っています。
過去の役からも、女性だからこそ表現できる、独特なヒーロー像を感じます。
今まで演じてきたキャラクターは、男性社会の中で働いている女性の役が多かったのですが、現実の世界でも女性を取り巻く状況は同じだと考えています。
『ゼロ・ダーク・サーティ』と『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』は方向性が違いますが、どちらも映画で見るようなステレオタイプな女性像とは正反対の女性だと思うのです。女性がこうあるべきだという固定観念は、ある意味映画の影響で出来上がってしまっている側面があると思うので、それは映画の中から変えていけたら良いですね。