Q.ところで、時計作りのノウハウはどうやって学んだのですか?
友達伝いに、時計作りのプロデューサーを見つけました。想像しているよりパートナーを見つけるのは難しいことではなく、比較的早い段階で見つかりました。
時計のデザインは、独学で学び私自身が担当しています。そこからの作り方は、パートナーである彼らが教えてくれる。特にプロトタイプを作るのは、思っているよりハードな試みではなかったんです。もちろん長期的なチャレンジであれば、とても困難だったでしょうけど、モックバーグスタート時は、短いターンでの時計作りだったので。そういう面ではラッキーだったかもしれないです。
Q.オンラインで展開をスタートするのは、とても現代的。販路を決めたきっかけは何でしょう。
オンラインは、マーケットをチェックするのに最適だと思ったんです。早い段階で反応がわかる。売れているか売れていないかの答えもすぐに確認できる。それに、インスタグラムやFacebookなどのSNSを使えることもポイントでした。
もし、お店からスタートするとなると、そこに販売店が加わるので、直接カスタマーとのやりとりは生まれず商品に関するフィードバッグを確認することが難しかったはず。ウェブサイトは、直接カスタマーの反応がすぐ確認できましたし、SNSにオフィシャルサイトのリンクを貼れば、オンラインへ引っ張ってくることもできましたので。
Q.初めてのチャレンジ、結果はいかがでしたか。
たった1型、ブラウンとゴールドの2色の展開だったのですが、クレイジーなほど反応がよくて。予想していたより、ずっといいスタートダッシュだったんです。
スタート時は在庫を持っていなかったので、プレオーダーからセールスをスタート。まず商品の写真を撮影して、それをウェブサイトにアップする。購入していただいても、デリバリーまではどうしても16週間かかってしまう。そんな環境なのに、みんな一気にオーダーしてくれました。16週間もかかるのにですよ、驚きました。そこで、私は持っている資金すべてを使って在庫を確保しました。
成功の1番の決め手は、マーケティングが上手く動いたことだと思います。私には兄がいるのですが、彼はマーケティングのエキスパートなんです。私は商品のデザインを決めて、彼はマーケティングを担当する。今でも私たちの強みといえばマーケティングだと思っていますね。
Q.マーケティングの成功の秘訣は何でしょう?
SNSです。スタートアップの企業なので、少ない予算でもできるSNSは、大きな鍵を握っているとわかっていました。本当に初期の頃から、市場に大きな力を持っていることに気付きSNSに注力してきました。
まずは、モックバーグのSNSアカウントを持たなければならないと思って、Facebook、インスタグラム、ピンタレスト、タンブラーなど、やれることはすべてトライしました。そして様々なSNS戦略を考える。常に考えていたことは、どうやったらフォロワーが増えるのか、どうしたら人々はLIKEを付けてくれるのか、#モックバーグ付きの投稿をシェアしてくれるのか。シンプルですがそれだけ。
そこからは、インフルエンサーに働きかけたり、フォロワーを多く抱える大きなアカウントとコラボレーションしたり、写真のシェアに関してエンゲージメントをとったり。どんな時も大切にしてきたのは、フォロワーとの関わりです。モックバーグに関して人々とコミュニケーションを重ねていくうちに、ファンがついてきました。
その代わり、従来のメディアはすべてスキップ。いわゆるトラディショナルと言われるようなメディアとは、コンタクトを取りませんでした。ブランドが成長してきた今でもその姿勢は変わっていません。大切にしているのはソーシャルメディアです。時に雑誌に載ることはありますが、ブランドの価値、そして私たちが時計ブランドであることが一番伝わるものを選んで、絞っています。雑誌『KINFOLK』などの掲載はブランディングのためです。おそらく将来的にもこの姿勢は変えないと思います。
Q.お話を聞く限り、サクセスストーリーばかりですが、苦労したことはありましたか?
振り返ると全てが大変でした。今じゃ考えられないほど、スタートの頃はよく働き、打ち込んでいましたしね。
難しかったことは、すべてを完璧にするための選択。素材の選び方、細部のこだわり。毎年、毎月、毎日、どこをとっても常に向上するようにやってきているので、しっかり長い期間をかけて少しずつ学んできました。
また、プロダクトデザインだけでなく、生産、マーケティング、人材など、会社という組織全てがうまく回って最高でなければならないと考えていて。そうしないとモックバーグがうまくいかないので、全てコントロールするために努力してきました。
Q.現在何名のチームで動いているのでしょうか。
全員で6名です。小さい会社なので、みんなやることがたくさん。
でも、これは全員で望んだ結果でもあります。高いクオリティを維持していかなくてはいけない中、人を雇うよりは、どうやったら効率的にできるかを考えている方がやりやすいと思ったのです。物流は、モックバーグの社員ではなく、他のところと契約して頼んでいて、工夫しながら皆で一丸となって頑張っています。
Q.現在、モックバーグは何ヵ国で展開していますか?
スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドといった北欧を中心に、ハンガリー、ブルガリア、英国、オランダ、ドイツなどのヨーロッパと台湾。そして、遂に日本がスタートします。
日本は、スカンジナビアの文化と似ている部分が多い。魅力的な国ですよね。トラディショナルなスウェーデン文化に、もっとクールなひねりを効かせたというか。街中で見かける女性は、みんな細かい部分に気を使っていてオシャレ。わずかにオリエンタルな要素を含んでいるところも素敵です。きっとモックバーグはうまくいくはず、日本と相性がよいことを望んでいます。
Q.出身地・スカンジナビアの文化は、モックバーグをデザインする上でも意識されていますか?
アイデアのベースは、スカンディナヴィアデザインです。大きなダイヤモンドやビジューといったデコレーションは付けず必要最小限。重くなく肌になじむ機能性。素材もできるだけ軽いものを選んでいます。
シンプルでミニマリスティック、そして機能性が高い。これらが備わっていることこそが、スカンディナヴィアの文化なんです。デザインというのは機能性にとても近い。腕がどう感じるか、重くないか。デザイン面と機能面を重ねて仕上げた、モックバーグの時計は、スカンディナヴィアの文化を象徴しているようなものです。
Q.時計をデザインする際、他に意識していることはありますか?
ジュエリーのような雰囲気であることも大切。時計としての役割だけでなくブレスレットのような感覚で付けて欲しいと思っていて。キラキラと光るようパーツの角を磨き、高級感を出しました。また、通常の時計にはないジョイント部分をつけることで、よりアクセサリー感覚でつけてもらえるようにデザインしています。
また、コントラストのある配色もポイントです。ゴールドとブラックのコンビなど、女性が作った女性らしいデザインになっていると思います。
Q.機能面にはなぜ着目を?
昔、大きな時計を身に着けているとき、パソコンで作業をすると重くて。すぐに外したくなっていました。その経験が根底にあって、軽さを追求するようになりましたね。モックバーグを着けてからは重さによるストレスはなくなりました。
Q.最後に、モックバーグを今後どのように成長させていきたいですか?
元々、時計やネックレス、リングといった小物、アクセサリーがとても好きだったので。モックバーグを国際的なアクセサリーブランドとして成長させていきたいですね。もちろん、日本での成功も願っています。