2012年3月、イヴ・サンローラン(Yves SAINT LAURENT)の新クリエイティブ・ディレクターにエディ・スリマンが就任し、大きな話題となったのは記憶に新しい。エディ・スリマンは2013年10月、メゾンの"サロン・ド・クチュール(フィッティング・サロンを指す)"とメンズ、ウィメンズ ウェアのアトリエをパリ7区リヴ・ゴーシュ(左岸)にある、"ホテル・セネクテレ"へと移す決断をした。ホテル・セネクテレは、1688年にトマス・ゴベールが国王のために建築した建造物で、デザインスタジオは、いままで通りロサンゼルスに構える。
パリ7区は、イヴ・サンローランのプレタポルテコレクションが最初に販売されたブティックの所在地であり、イヴ・ サンローラン自身が住居を構えたことでも知られる、メゾン所縁の地だ。今回の移設は、メゾンを原点回帰へと導き、再構築させるための動きだといえる。
イヴ・サンローランのプレタポルテラインができた当初のブランド名は、「イヴ サンローラン リヴ・ゴーシュ」。ブティックをパリ7区、リヴ・ゴーシュに開設したのは、当時、右岸に多かったクチュールのブティックと反対にあったためだ。オートクチュール主流だったファッション界に、プレタポルテという新しい概念を切り開いたイヴ・サンローランのごとく、エディ スリマンは新生イヴ・サンローランを引っ提げて、どのような革命を起こしてくれるのか。今後の動向から目が離せない。