展覧会「河鍋暁斎の底力」が、東京ステーションギャラリーにて、2021年2月7日(日)まで開催される。
幕末から明治にかけて活躍した絵師・河鍋暁斎は、狩野派に親しみつつも、稀有な形態把握能力でもって独特の作風の日本画や浮世絵を手掛けた。展覧会「河鍋暁斎の底力」では、完成度が高い一方で弟子の手が入ることもあった完成作品“本画”ではなく、下絵や画稿などから、暁斎の卓越した“生の筆遣い”を紹介する。
暁斎の下絵や画稿は、本画にはない独自の魅力を湛えている。その1つは“筆の勢い”だ。《日本武尊の熊襲退治 下絵》 や《河竹黙阿弥作『漂流奇譚西洋劇』米国砂漠原野の場 下絵》などに見るように、絵筆を執った暁斎の頭の中に溢れるさまざまなイメージが一気にぶつけられたかのような画面は、アイディアを的確に形にしてゆく暁斎の手の素早い動きをいきいきと伝えるようである。
一方、画面を埋め尽くすように描きこまれた“無数の線描”も、画稿類に独自の迫力を与えている。例えば《女人群像 下絵》では、女性の髪の毛や身体のしわ、身にまとう衣服のひだといった、力の集中する細部が執拗に描かれる。こうした細部は、本画では「綺麗に」整えられてしまうだろうが、下絵では生々しく残され、迫力やダイナミックな動きを表現するのだ。
また、宴の席などで客を前にして描かれる“席画”も紹介。客が注文する多種多様な画題を、下描きもなしに短時間で描かなければならない席画は、絵師の実力を如実に表すものだ。《松上一烏之図》をはじめとする席画の数々からは、暁斎がこなした多岐にわたる画題と見事な表現力を垣間見られそうだ。
暁斎の画稿のなかでも《鳥獣戯画 猫又と狸》は、二股の尻尾をもつ猫の妖怪を描いたユニークな画題とユーモアあふれる描写でよく知られる。本展では、従来知られていた《猫又と狸》の画面の上に続く、新発見のピースを公開。緊張感の漂う描写から作品制作のプロセスを窺うことができるのも、下絵や画稿を見る魅力の1つである。
展覧会「河鍋暁斎の底力」
会期:2020年11月28日(土)〜2021年2月7日(日) ※会期中に一部展示替えあり
[前期 2020年11月28日(土)〜12月27日(日) / 後期 2021年1月2日(土)〜2月7日(日)]
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
休館日:月曜日(1月11日(月)、2月1日(月)は開館)、12月28日(月)〜1月1日(金)、1月12日(火)
開館時間:10:00〜18:00
※2021年1月15日(金)・22日(金)・29日(金)、2月5日(金)の夜間開館は中止(1月8日までの金曜日は20:00まで開館)
※入館は閉館30分前まで
入館料:一般 1,200円、高校・大学生 1,000円、中学生以下 無料
※障がい者手帳等の持参者は100円引き(介添者1名は無料)
※チケット購入方法の詳細に関しては、決まり次第は美術館サイトにて告知
※予定は変更となる場合あり
【問い合わせ先】
TEL:03-3212-2485