企画展「上田 薫」が、埼玉県立近代美術館にて、2020年11月14日(土)から12月23日(水)まで開催される。
上田薫は、写真を使用して対象を精巧に描きだす画家だ。殻を割った瞬間に落ちてくる生玉子をはじめ、スプーンから流れ落ちそうなジャム、そして水の流れや空など、一瞬で姿を変える対象を現実以上にリアルに捉えるその作品は、リアリズム絵画のなかで独自の位置を占めている。
企画展「上田 薫」では、従来まとまったかたちで取り上げられることの少なかった上田薫の歩みを、最初期から現在にまで至る作品約80点を通して紹介。空間の広がりと時間の流れを切り取り、何気ない日常を鮮烈な描写へと昇華する上田の世界に迫る。
東京藝術大学で油彩を学び、主に抽象画を製作していた上田は、1956年に映画ポスター国際コンクールで国際大賞を受賞したことをきっかけに、グラフィックデザインを手掛けるようになる。しかし1970年、対象だけを画面いっぱいに拡大して写実的に描く表現に目覚めたのであった。本展では、抽象絵画やポスターコンクール受賞作などの最初期の活動を振り返るとともに、独自のリアリズムの出発点となった作品の数々を展示する。
1970年代の上田は、スプーンから滴るジャムといった“動くもの”、すなわち現象に目を向け、作品に“時間”の要素を持ち込んだ。代表作である「なま玉子」シリーズは、移ろうものの一瞬の姿を克明に捉える一例である。
移ろう“時間”を作品に取り込んだ上田は、続いて泡やシャボン玉といったモチーフを取り上げ、皮膜に写り込んだ周囲の光景や上田自身の姿を描いた。「あわ」シリーズなどに見られる、透過や反射、屈折といった光の性質への関心は、コップや川の流れといったのちのモチーフへと展開することとなる。
川の流れを描いたオールオーバーの構図は、2000年以降の作品において、「Sky」 シリーズの“空”や、一面に並んだ玉子の殻といった新しい空間表現へとつながってゆく。会場では、《サラダ E》などの近作に加え、作者自身の手や後ろ姿を描いた4点の最新作も紹介する。
企画展「上田 薫」
会期:2020年11月14日(土)~12月23日(水)
※当初は2021年1月11日(月・祝)までの会期を予定していたが、臨時休館のため12月23日(水)をもって終了
会場:埼玉県立近代美術館
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
休館日:月曜日(11月23日(月・祝)、1月11日(月・祝)は開館)、12月28日(月)~1月5日(火)
開館時間:10:00~17:30(入場は17:00まで)
観覧料:一般 1,100円(880円)、大高生 880円(710円)
※( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下、障害者手帳などの提示者(付添1名を含む)は無料
※併せてMOMASコレクション(1階展示室)も観覧可
※休館または会期などの変更の可能性あり(最新情報は美術館ホームページにて確認)
【問い合わせ先】
埼玉県立近代美術館
TEL:048-824-0111 (代表)