高畑充希主演、映画『浜の朝日の嘘つきどもと』が2021年9月10日(金)に公開。福島では、8月27日(金)より先行公開される。映画は、『百万円と苦虫女』『ロマンスドール』のタナダユキが監督・脚本を務める、オリジナルストーリーとなる。
映画『浜の朝日の嘘つきどもと』の舞台となったのは、福島・南相馬に実在する「朝日座」。1923年に創業した、その歴史深い映画館は、様々な災禍も免れ、戦後の映画全盛時代を迎えたのちは、地域に根付いた映画館として多くの人々に愛されてきた場所だ。
とはいえ、時代が大きく変わった現代では、そんな「朝日座」もかつての勢いを失ってしまった。監督・脚本を務めたタナダユキは、そんな風前の灯となった映画館を<一人の女性が存続を守ろうとするストーリー>を通して、エンタメ文化へのエールともなる作品を制作した。
主演を務めるのは、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』『ヲタクに恋は難しい』など、話題作への出演が絶えない高畑充希。高畑は本作品でタナダユキと初タッグを組む。
茂木莉子/浜野あさひ(高畑充希)
経営が傾いている「朝日座」を立て直すべく東京からやってきた主人公。地元住民と共に東へ西へ奔走し、くじけそうになりながらも奮闘していく。
また、主人公・茂木莉子のもとに集う登場人物は以下の通り。バラエティから実力派俳優まで、個性豊かなキャストが勢揃いする。
田中茉莉子(大久保佳代子):莉子の高校時代の恩師。高三の一学期でドロップアウトしてしまい、居場所のない莉子を自宅に迎える。
森田保造(柳家喬太郎):福島県・南相馬に実在する映画館「朝日座」の支配人。
岡本貞雄(甲本雅裕):「朝日座」再建に協力する岡本不動産で働く。
チャン・グオック・バオ(佐野弘樹):技能実習生で茉莉子のボーイフレンド。
市川和雄(神尾佑):「朝日座」存続を巡り、森田らと対峙するオフィス I 社員。
浜野巳喜男(光石研):莉子の父でタクシー会社社長。
松山秀子(吉行和子):「朝日座」の常連で資産家の未亡人。
公開に先駆けて、映画『浜の朝日の嘘つきどもと』で主演を務めた高畑充希と、主人公の恩師・田中茉莉子役を演じた大久保佳代子にインタビューを実施。“映画館存続”にかける奮闘劇を描いた本作で特に印象に残っているシーンから、キャリアに関することまで話を伺った。
■まるで本物の先生と生徒のような、自然な距離感が印象的でした。おふたりの距離感はどのように作られていったのでしょうか。
大久保:特別に意識していたことはなかったかと思います。高畑さんと一緒に撮影した最初のシーンは、作品の中ではふたりの仲が深まっているシーンでした。
お会いしたばかりでしたので、先生と生徒の自然な関係性を表現できるか不安でしたが、意外と平気で。「さすが、女優さんだな」と、思いました。
高畑:私は、パーソナルスペースの大きさが大久保さんと似ているような気がしていました。大久保さんも一人の時間が好きですよね?(笑)
大久保:はい、好きです。(笑)
高畑:私も一人の時間が好きですし、結構マイペースな方なのですが、たまに、初対面であってもパーソナルスペース内に“ぐわん”って入ってくる方いるじゃないですか?(笑)私はそういう時、結構驚いてしまうタイプなので大久保さんとは最初から絶妙な距離感が保たれていて、なんとも心地良かったことを覚えています。
大久保:たしかに、他人に対する距離感や感覚が似ていたのかもしれませんね。
■そんなおふたりが劇中で話す会話の中には、人間味のある深い言葉や、大切なことを思い出させてくれる言葉が散りばめられていたかと思います。特に印象に残っているセリフはありますか?
高畑:作品の中にはタナダさんが言いたいのだろうなと思うセリフが沢山あって、どれも思い入れがありますが、その中で特に印象的だったのは「一番大切なのは、今日食べる米」というセリフです。
大久保: 私も、そのセリフは心に響きました。印象的なシーンでしたよね。
高畑:撮影中は、<自分にとって大切なこと>を改めて考えていた時期だったので、深く心に残っています。作品の舞台となった福島は穏やかな場所で、当時の混沌とした都会を離れて自分だけにフォーカスできる大切な時間となりました。
大久保:私は、警察署の取調室で言った「友達(浜野あさひ)のことは裏切れませんから」という言葉が印象に残っています。セリフを実際に口に出すことで、先生と生徒の関係ではなく、茉莉子先生は、あさひのことを友達だと思っていたのだということに気が付きましたし、しっくり来ました。
■本作は、生徒と恩師の映画を通した絆の物語でもあると思いますが、おふたりにとって師匠のような存在、または人生に影響を与えた人はいらっしゃいますか。
高畑:毎現場ごとくらいにいますね。第一線でずっと活躍されていらっしゃる方は、人間力が高いですし、自分で思いもしないような考え方も持っていらっしゃるので。価値観やモチベーションの持ち方、突き進み方など、毎回勉強になることがありますし、それによって自分自身がどんどん変わっていくような気がします。
今回の映画では、ずっと一緒にお仕事をしたいと思っていたタナダさんから影響を受けたと思います。タナダさんは、男前でかっこよくて、とにかく決断が早い。私も含めて、現場にいる人たちが不安にならないような環境を作ってくださる方でした。信頼もできますし、すごく安心してお仕事に臨めました。
大久保:私は、特定の人がいるわけではないのですが、高畑さんのお話を聞いていて、同じような仕事をしている“女性芸人”と呼ばれる人たちのことを、良い意味でも悪い意味でも意識しているなと思いました。
近場で言うと、仲の良いいとうあさこさんとか。彼女が毎回“気力”だけで全力でお仕事をしている姿を見ると、今日はちょっと怠け気味だったから頑張らなきゃなとか、刺激を受けますね。(笑)そこから何かを教えてもらって、今に繋がっているような気もします。
■本作は映画の魅力を様々な角度から教えてくれる“映画愛”に溢れた作品でしたが、おふたりが最近心を打たれた映画はありますか?
大久保:頻繁に映画を見ることはしないのですが、自宅で長く過ごしていた期間は、代表作と呼ばれる作品を見返していました。『アルマゲドン』や『インディ・ジョーンズ』シリーズといった映画って、<名作>と呼ばれるだけあって、どんなに時を経てもやはり面白いんですよ。現実世界でしんどい時でも、ひとつのフィルムが一瞬で色んな時代や場所に連れて行ってくれるというか。鬱々とした気分が、どんどん晴れていったことを今でも覚えています。
それからバラエティ番組などで、「アベンジャーズみたいだな!」というツッコミがよく出るのですが、実は一度も観たこともないのに、周りに合わせて笑っていたんです。(笑)それもプロとしていけないなと、まじめに反省し、これを機会にきちんと拝見しました(笑)
高畑:(笑) 私は、1年程前に映画館で『ジョジョ・ラビット』や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を立て続けに見たのですが、その2作品が自分自身にすごくヒットしました。その後、映画館に行くことができなくなってしまったので、2作品の楽しかった思い出は2ヶ月ぐらい覚えていたほどです。
『ジョジョ・ラビット』は戦争をこの切り口で描くのかと驚きましたし、めちゃくちゃ泣きました。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』は、ずっと前からある作品で、私も内容は知っていましたが、描き方や絵力、衣装などが素敵で、“女性でよかったな”という気持ちになりました。