展覧会「没後70年 南薫造」が、福岡の久留米市美術館にて、2021年7月3日(土)から8月29日(日)まで開催される。
南薫造は、明治末から昭和にかけて、政府主催の美術展「官展」の中心画家として活躍した洋画家だ。若き日にイギリスに留学して水彩画に親しんだ南は、帰国後、“日本の印象派”の画家として評価される。その一方で、大正期に大きな潮流となる創作版画運動の先駆的存在として位置付けられる木版画制作を手掛けるなど、油彩画以外の分野でも新しい時代の美術を模索した。
展覧会「没後70年 南薫造」は、南の全貌を紹介する大規模回顧展。現存する南の代表作のみならず、イギリス留学時代に描いた水彩画、そして朋友の富本憲吉と切磋琢磨した木版画などを展示する。
南薫造は、何気ない風景や飾らない人物をみずみずしく描いたことで高く評価された。とりわけ風景画を得意とし、農村や海景といった瀬戸内のみならず、アジア各地の情景を完成度の高い画面にまとめあげている。本展では、《春(フランス女性)》や《坐せる女》、《少女》をはじめとする人物画、そして《瀬戸内海》や《すまり星》といった風景画など、南の清澄な感受性と高い技術を見て取れる作品の数々を展示する。
南薫造の作品は、明るい色彩と柔らかい筆致が織りなす穏やかな作風を特徴としている。会場では、点描などを用いて爽やかな初夏の農村を描いた代表作《六月の日》など、“日本の印象派”というにふさわしい油彩画を目にすることができる。
ところで南薫造は、当時多くの画家が向かったフランスではなく、イギリスを留学先に選んだ。それは、ターナーをはじめ優れた水彩画家を数多く輩出するイギリスで水彩画を学ぼうとしていたからかもしれない。《うしろむき》といった水彩画からは、繊細な光や色調のニュアンスを巧みに捉えた、透明感あふれる作風にふれることができるだろう。
南薫造はその晩年、疎開先である広島県内海町の生家で制作に打ち込んだ。本展では、《曝書》や《生家の近く》など、瀬戸内海や近在の風景、そして家族の姿を伸びやかなタッチで描いた作品を紹介する。
展覧会「没後70年 南薫造」
会期:2021年7月3日(土)〜8月29日(日) 水彩、版画、日本画は半期展示
[前期 7月3日(土)〜8月1日(日) / 後期 8月3日(火)〜8月29日(日)]
会場:久留米市美術館 2階
住所:福岡県久留米市野中町1015(石橋文化センター内)
休館日:月曜日(8月9日(月・休)は開館)
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
入館料:一般 1,000円(800円)、シニア(65歳以上) 700円(500円)、大学生 500円(300円)、高校生以下 無料
※障がい者は手帳の提示により、本人と介護者1名は一般料金の半額
※( )内は15名以上の団体料金
※上記料金にて石橋正二郎記念館も観覧可
■終了した会場
・東京ステーションギャラリー
会期:2021年2月20日(土)〜4月11日(日)
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
・広島県立美術館
会期:2021年4月20日(火)〜6月13日(日)
住所:広島県広島市中区上幟町2-22
【問い合わせ先】
久留米市美術館
TEL:0942-39-1131