企画展「ホー・ツーニェン 百鬼夜行(ひゃっきやこう)」が、愛知の豊田市美術館にて、2021年10月23日(土)から2022年1月23日(日)まで開催される。
映像やインスタレーション、サウンド、演劇といった領域を横断しつつ作品を展開する作家、ホー・ツーニェン。その出身地であるシンガポールは、19世紀にはイギリス領となり、太平洋戦争中には日本の軍政下に置かれていた。ホーは、シンガポールを軸にアジア全域にまたがる物語を紡ぎ、近代以降のアジアの正史からこぼれ落ちてきたものを亡霊のように呼び起こしてゆく。
これまでにホーは、日本で2つのプロジェクトを手がけている。「あいちトリエンナーレ2019」豊田会場の《旅館アポリア》では、旧旅館を会場に、戦中にこの旅館に宿泊した特攻隊員、京都学派の思想家、あるいは南洋に派遣された映画監督の小津安二郎らを登場させ、当時の空気を蘇らせた。そして2021年春、山口情報芸術センターで展開した《ヴォイス・オブ・ヴォイド─虚無の声》では、 このうち京都学派の哲学者に焦点を合わせ、戦争を支えたとされる思想を時代の複雑さの中で再考した。
企画展「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」は、日本をテーマとする一連のプロジェクトの最終章。近代から現代に至る日本の“妖怪”に着目し、アニメーションを軸とした映像作品を展開する。
なぜ妖怪に着目するのか。日本で昔からあらわされてきた妖怪は、時代ごとの政治的・宗教的・芸術的コンテクストによって形成されてきたものであり、正史とは異なる人びとの感情や無意識を映しだすものだといえる。20世紀以降に妖怪は「見えなくなった」ものの、今その姿はアニメや漫画の世界に見出すことができる。
本展では、日本の妖怪のイメージのみならず、ホーが新たに考案した妖怪も加えて、アニメーションで制作された100の妖怪が登場。近代から現代までの日本の大衆文化を反映してきた“妖怪”に着目し、戦争を挟んだ日本の文化史や精神史を浮かび上がらせる。
ホーは、アジアの広域に生息していたものの、植民地政策の拡大とともに徐々に姿を消していった“虎”を、アジア全体を表すイメージとしてしばしば使用してきた。日本に虎は生息していなかったものの、中国文化の影響を受けて平安時代から絵画に描かれ、日本文化にも根付いてきた。本展でも、第二次世界大戦中にシンガポールで活躍し、ともに「マレーの虎」と呼ばれたふたりの日本人、山下奉文と、1960年代のヒーロー番組「怪傑ハリマオ」のモデルになった谷豊が、妖怪の姿を借りて登場する。
企画展「ホー・ツーニェン 百鬼夜行(ひゃっきやこう)」
会期:2021年10月23日(土)〜2022年1月23日(日)
会場:豊田市美術館
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
休館日:月曜日(1月10日(月・祝)は開館)、年末年始(12月27日(月)〜1月4日(火))
開館時間:10:00〜17:30(入場は17:00まで)
観覧料:一般 1,000円(800円)、高校・大学生 800円(600円)、中学生以下 無料
※( )内は前売券および20名以上の団体料金
※障がい者手帳の所持者および介添者1名、豊田市内在住または在学の高校生、豊田市内在住の75歳以上は無料(要証明)
※前売券は、豊田市美術館(9月20日(月)まで)、T-FACE B館2階インフォメーションカウンター(10月22日(金)まで)にて販売
※そのほかの観覧料の減免対象者・割引などについては、美術館ウェブサイトを確認、あるいは美術館へ問い合わせのこと
※会期、関連事業の内容、来館者の受入態勢などは変更となる場合あり(最新情報は美術館ウェブサイトにて確認のこと)
■同時開催
コレクション展:絶対現在
会期:2021年10月23日(土)〜2022年1月23日(日)
【問い合わせ先】
豊田市美術館
TEL:0565-34-6610