展覧会「没後190年 木米」が、東京・六本木のサントリー美術館にて、2023年2月8日(水)から3月26日(日)まで開催される。
木米(もくべい)は、江戸後期の京都を代表する陶工・画家である文人だ。1767年京都に生まれた木米は、古陶磁を熱心に研究して作陶に取り組み、煎茶器から茶陶まで多岐にわたる作品を手がけた。その特徴は、古今東西の古陶磁の特徴を因習にとらわれず結びつけてゆく創造性にあった。一方、50代後半からは精力的に絵画も手がけ、清らかで自由奔放な作風で山水画を中心に制作している。
ここで、当時の日本における「文人」とは、詩書画を能くする中国の文人に憧憬を抱き、中国の学問や芸術の素養を身につけた人びとである。独自のネットワークを築きあげた日本の文人は、互いの個性を尊重しつつ、めいめいに文人としての生き方を追求した。そのなかでも、木米の個性的な作品の数々は、当時の文人が憧れるところであった。展覧会「没後190年 木米」では、陶磁や絵画をはじめとする木米の名品を通して、その生涯と交友、芸術の全貌を紹介する。
木米のやきものは、中国や朝鮮、日本の古陶磁に着想を得ている。しかし、それらの外見を模倣するのではない。木米は、中国の書籍や古器の鑑賞から得た中国陶磁の豊富な知識に基づいて、さまざまな古陶磁から形や文様の一部を抜きだし、それらを独自の視点で再構成することで、強い個性を持つ作品を生みだしたのだった。本展では、《染付龍濤文提重》(重要文化財)や《染付輪花形浙江名勝図皿》など、さまざまな古陶磁の要素を独自の視点で組み合わせたやきものの数々を紹介する。
木米は、若い頃から中国的な教養のひとつとして絵画を嗜んでいたものの、制作年のはっきりする作品はとりわけ50代後半以降に集中している。その背景には、京都に集った文人との交流に触発され、諸芸に秀でた文人としての生き方をあらためて自覚したことなどが考えられる。そしてその作品の特徴が、友人への贈り物として描いたものが多い点だ。いわば私信ともいうべきこれらの絵画からは、木米の人柄を垣間見ることができよう。会場では、現存作例の中でも最初期の山水図《高士観瀑図》や、茶の聖地・宇治の実景に基づく悠大な山水図《兎道朝潡図》(重要文化財)などに加えて、希少な花卉図や仏画の名品も紹介する。
また、文人・木米の魅力を「交友」という視点からも紹介。木米の人となりを伝えるものに、次のような壮大な遺言がある──「これまでに集めた各地の陶土をこね合わせ、その中にわたしの亡骸を入れて窯で焼き、山中に埋めてほしい。長い年月の後、わたしを理解してくれる者が、それを掘り起こしてくれるのを待つ」。この言葉を語ったとされる相手が、親友の南画家・田能村竹田(たのむら ちくでん)であった。また、晩年には、儒学者の頼山陽(らい さんよう)をはじめ、当代一流の文人とも交流している。本展では、田能村竹田による《木米喫茶図》や、木米が友人に宛てた書状などを展示し、その人物像に光をあてる。
展覧会「没後190年 木米」
会期:2023年2月8日(水)〜3月26日(日) 会期中に展示替えあり
会場:サントリー美術館
住所:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
開館時間:10:00〜18:00
※金・土曜日、2月22日(水)、3月20日(月)は20:00まで開館
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:火曜日(3月21日(火・祝)は18:00まで開館)
入館料:一般 1,500円(1,300円)、高校・大学生 1,000円(800円)、中学生以下 無料
※( )内は前売料金、前売券は11月30日(水)から2月7日(火)まで販売
※チケットは、サントリー美術館受付(開館日のみ)、サントリー美術館公式オンラインチケット、ローソン チケット、セブンチケットにて販売
※あとろ割:国立新美術館、森美術館の企画展チケット提示で100円割引
※割引の併用不可
※会期や開館時間などは変更となる場合あり(最新情報については美術館ウェブサイトにて確認のこと)
【問い合わせ先】
サントリー美術館
TEL:03-3479-8600