1956年ジャマイカ、西キングストン地区。デューク・リードが開業した酒場トレジャー・アイルには“トロージャン”と名付けられた巨大なサウンド・システムが備わっており、夜な夜な人々が集うダンスフロアと化していた。
やがてリードは地元のシンガーやバンドを集め、オリジナルのレコードを吹き込む。デリック・モーガンが唄う「Lover Boy」は大ヒットを記録。その後も多くのシンガーを輩出し、ジャマイカ発のリズム&ブルースは独特の進化を遂げ、スカやロックステディ、そしてレゲエが誕生した。
一方、ジャマイカ独立を機に多くのジャマイカ人が移住したイギリスに、アジア系ジャマイカ人の実業家リー・ゴプサルがいた。ジャマイカで誕生したレゲエに新たなビジネスのチャンスを見出し、1967年に英国初のレゲエ専門の音楽レーベル「トロージャン・レコード」を立ち上げる。
イギリスに渡った“トロージャン”は多くのジャマイカ人に愛されただけでなく、労働者階級の白人ユースカルチャーとも共鳴。1970年4月26日ウェンブリー・スタジアムで開催されたレゲエ・フェスティバルには一万人を超える若者でスタジアムは満席となり、レゲエは大きなムーブメントを巻き起こした。しかしやがてトロージャン・レコーズの事業は傾き始め、倒産の危機を迎えてしまうのである。
映画『ルードボーイ トロージャン・レコーズの物語』は、レゲエの誕生に大きな影響を与えながら、わずか数年で表舞台から姿を消した伝説のレーベル「トロージャン・レコーズ」の栄光と転落を描く音楽ドキュメンタリー。アーカイヴ映像や再現ドラマ、リー・スクラッチ・ペリーをはじめとするミュージシャンの語りによって、伝説的レゲエレーベルの舞台裏に迫る。