特別展「生誕130年記念 北川⺠次展—メキシコから日本へ」が、愛知の名古屋市美術館にて、2024年6月29日(土)から9月8日(日)まで開催される。その後、東京の世田谷美術館、福島の郡山市立美術館に巡回する。

北川⺠次、約30年の大規模回顧展

北川⺠次(きたがわ たみじ)は、洋画家や壁画家、絵本作家、美術教育者など、多面的に活躍した芸術家だ。1894年静岡に生まれた北川は、1914年に渡米して美術を学び、21年からは約15年にわたってメキシコで画家・美術教育者として活動。36年に帰国すると洋画壇で活躍し、戦後は子どもの美術教育や壁画制作にも取り組んでいる。その広範な活動は、芸術と社会の関わりに目を向けるものであったといえるだろう。

特別展「生誕130年記念 北川⺠次展—メキシコから日本へ」は、約30年ぶりとなる北川の大規模回顧展。絵画約70点を含む約180点の作品と資料を通して、北川がメキシコで学び、日本への帰国後も貫いた芸術の信念を紹介するとともに、美術教育者としての側面にも光をあてる。

「民衆を描く」姿勢

序盤では、北川作品における民衆へのまなざしに着目。アメリカ時代の北川は、現代の都市生活をありのままに描こうとする社会派の画家たちから、「民衆を描く」姿勢を学んでいる。これは、北川の生涯にわたる大きなテーマのひとつとなった。会場では、《アメリカ婦人とメキシコ女》や《鉛の兵隊(銃後の少女)》などを展示し、現実を見つめ、その背後にある社会の矛盾をも描きだす北川の姿勢を紹介する。

壁画と社会的メッセージ

北川は、メキシコの壁画運動からも影響を受けている。北川が滞在していた1920〜30年代のメキシコでは、政治的なメッセージを伝える媒体として、誰もが目にすることができる壁画が注目されていた。北川は帰国後、メキシコの風俗を壁画のような大画面に描くようになり、戦時中や戦後には壁画を志向した画面構成で社会的な主題の作品を手がけている。本展では、《タスコの祭》や《雑草の如くII》といった作品を通して、絵画によってメッセージや思想を表現しようとした北川の仕事に光をあてる。

美術教育と絵本

終盤では、メキシコの美術教育からの影響を中心に紹介。メキシコ時代の北川は、アカデミズム的な教育を否定する前衛運動「¡30‐30!」に加わるほか、野外美術学校の教育に携わり、自発的な表現や制作を尊重する理念を学んだ。こうした経験のもと、帰国後に絵本制作を行うとともに、戦後には児童美術学校を開設している。会場では、絵本『マハフノツボ』をはじめ、美術教育と絵本にまつわる作品と資料を目にすることができる。

展覧会概要

特別展「生誕130年記念 北川⺠次展—メキシコから日本へ」
会期：2024年6月29日(土)〜9月8日(日)
会場：名古屋市美術館
住所：名古屋市中区栄2-17-25(芸術と科学の杜・白川公園内)
開館時間：9:30〜17:00(金曜日は20:00閉館)
※入場はいずれも閉館30分前まで
休館日：月曜日(7月15日(月・祝)、8月12日(月・振)は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)
観覧料：一般 1,500円(1,300円)、高校・大学生 900円(700円)、中学生以下 無料
※( )内は前売および20名以上の団体料金

■巡回情報
・東京会場
会期：2024年9月21日(土)〜11月17日(日)
会場：世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)
・郡山会場
会期：2025年1月25日(土)〜3月23日(日)
会場：郡山市立美術館(福島県郡山市安原町字大谷地130-2)

【問い合わせ先】
名古屋市美術館
TEL：052-212-0001