企画展「黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化」が、東京の印刷博物館にて、2025年4月26日(土)から7月21日(月・祝)まで開催される。

活版印刷術、活字書体とドイツ文化

15世紀半ばのドイツでは、ヨハネス・グーテンベルクが活版印刷術を完成させた。テキストの複製は主に手写であった当時、活版印刷術は一気にヨーロッパ中へと広がり、約500年にわたって文字印刷の主流となった。

ドイツにおいて、この活版印刷術は、魔術や魔法を意味する「ディ・シュヴァルツェ・クンスト(die schwarze Kunst)」と呼ばれ、独自の出版印刷文化が育まれるようになった。企画展「黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化」では、活版印刷術と活字書体が文化形成に与えてきた影響を、ドイツの出版物を軸とする約70点の作品を交えて紹介する。

活版印刷術の黎明期

中世末期のヨーロッパにおいて、「書籍」が手書きによる写本を意味するなか、グーテンベルクが発明した活版印刷術は、その概念を大きく変えることになった。アジアではすでに、可動式活字を組みあわせてテキストの複製が行われていたものの、グーテンベルクは、鉛合金による活字やプレス機を使用し、アジアとは異なる活版印刷術を打ち立てたのであった。本展の第1部では、ヨーロッパの活版印刷術黎明期に着目し、旧約聖書零葉などの作例を取り上げる。

印刷物、情報の伝搬から社会変革へ

グーテンベルクが確立した活版印刷術は、たちどころにヨーロッパ各地に広がり、宗教書や古典作品ばかりでなく、同時代の書物が複製されるようになった。こうして書物が多くの人々に浸透するなか、図版とともにさまざまな情報が印刷物として可視化され、文化や思想の変化を促すこととなる。これを象徴する例が、マルティン・ルターらによるドイツの宗教改革だろう。第2部では、アルブレヒト・デューラーの『黙示録』やルターによるドイツ語著作などを展示し、印刷物と社会変革の関わりを探ってゆく。

書体とナショナリティ

活版印刷術の発明後すぐ、ローマン体と呼ばれる活字書体が登場したものの、ドイツでは、グーテンベルクが聖書印刷に用いたブラックレター(ゴシック体)が20世紀にいたるまで使用された。やがてブラックレターは、ドイツ文化を象徴する書体となるばかりでなく、ナショナリティと結びついて政治的な意味を担うようになった。第3部では、ブラックレターが担った象徴性に光をあてつつ、この書体を用いた印刷物を紹介する。

展覧会概要

企画展「黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化」
会期：2025年4月26日(土)〜7月21日(月・祝)
会場：印刷博物館
住所：東京都文京区水道1-3-3 TOPPAN小石川本社ビル
開館時間：10:00〜18:00
休館日：月曜日(5月5日(月・祝)、7月21日(月・祝)は開館)、5月7日(水)
入場料：一般 1,000円、学生 500円、高校生 300円
※中学生以下、70歳以上、障がい者手帳などの所持者および付添者は無料
※20名以上の団体は各50円引き
※5月5日(月・祝)は無料

【問い合わせ先】
印刷博物館(代表)
TEL：03-5840-2300