映画『ムーンライト』が、当初2017年4月を予定していた公開日を繰り上げ、3月31日(金)よりロードショー。公開規模も予定より大幅に拡大される。なお、本作は第89回アカデミー賞で作品賞を受賞している。
ブラッド・ピット率いる映画製作会社プランBエンターテインメントが手がけた『ムーンライト』は、マイアミを舞台に、自分の居場所とアイデンティティを探すある少年の成長を、少年期・ティーンエージャー期・大人になるまで、の3つの時代構成で描いたヒューマンドラマ。
ドラッグ、いじめ、虐待、父親の不在と、たくさんの傷を負いながらも強く生きる主人公シャロンは、時代に分けてトレバンテ・ローズ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバートの3人の俳優が演じている。
その他、麻薬常習者の母親を『007』シリーズのナオミ・ハリス、主人公の少年の面倒を見る麻薬ディーラーを人気ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」などに出演するマハーシャラ・アリらが出演。監督・脚本は、『ムーンライト』が長編2作目となる新鋭バリー・ジェンキンス、そしてエグゼクティブプロデューサーをブラッド・ピットが担当している。
「第26回ゴッサム・インディペンデント・フィルム・アワード」では、作品賞、審査員特別賞、観客賞、脚本賞の最多4部門を受賞。『スポットライト 世紀のスクープ』、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』、『それでも夜は明ける』と、同賞で作品賞を受賞した作品がそのままアカデミー賞作品賞に輝いていたが、第89回アカデミー賞では『ムーンライト』も同様に作品賞を受賞した。
アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、助演女優賞(ナオミ・ハリス)、編集賞、撮影賞、作曲賞と8部門でノミネートされ、作品賞、脚色賞、助演男優賞合計3部門を受賞。第74回ゴールデン・グローブ賞授賞式においても、ドラマ部門の作品賞を受賞した。そのほか、各映画祭や映画批評家協会賞など含めると307部門ノミネート、132部門以上の受賞を果たしている。
監督のバリー・ジェンキンスは、作品賞を受賞した第89回アカデミー賞授賞式にディオール オム(DIOR HOMME)のタキシードで登場。白いコットンシャツにシルクのボウタイをスタイリングし、フォーマルなルックに仕上げていた。
アカデミー賞では、作品賞発表の際、間違ったタイトルが呼ばれてしまうという前代未聞のハプニングで会場は混乱。結果的には簡略化したスピーチをしたジェンキンス監督。彼は、シングルマザーの元育ち、また、そんな母も薬物中毒という貧困家庭で育った。夢なんてかなうはずないと自身を否定し、自分自身にリミットを設けてきたという。
そんな彼がアカデミー賞を受賞できたら…と次のようなスピーチを考えていたそうだ。
「この映画の元になった戯曲を書いたタレル・アルバン・マクレイニーと僕は“シャロン”です。僕たちはあの少年そのものなんです。『ムーンライト』を観たら、あのような環境で育ってきた少年が、大人になってアカデミー賞に輝く作品を作るとは誰も思わないでしょう。僕も自分についてそう繰り返し思っていました。自らの夢を抑え込んで、否定してきたんです。周りに否定されたわけではなく、自分自身が。だから僕たちに自分を投影している人は、これを機に自分自身を愛して。なぜなら、そうすることによって夢を見るだけでなく、許されないと思っていた夢を実現できるかもしれないからです。」
助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリは次のようにコメント。
「多くの恩人に巡り合いました。キャスト、スタッフ素晴らしいチームでした。キャスト皆からインスピレーションを受けました。妻に感謝しています。4日間前に娘が生まれたんですが、その間もずっとサポートしてくれていました。ありがとう。」。
映画『ムーンライト』(原題:MOONLIGHT)
公開日:2017年3月31日(金)、TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー
監督・脚本:バリー・ジェンキンス
エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピット
キャスト:トレバンテ・ローズ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホーランド
【映画紹介】
学校では“チビ”というあだ名でいじめられ、麻薬常習者の母親のポーラ(ナオミ・ハリス)からは育児放棄をされているシャロン(アレックス・ヒバート)はマイアミの貧困地域で暮らしている、内気な性格の男の子。生活の中で行き場を失ったシャロンだったが、彼にとっての唯一の救いは、自分の親代わりになってくれる、近所に住む麻薬のディーラーの男・ホアン(マハーシャラ・アリ)とその妻、そしてたった一人の男友達のケビンだった。そんな日々の中、シャロンは、ケビンに惹かれている自分に気づく。しかし、このコミュニティでは、この感情は受け入れてもらえないと、幼いながらも勘づいていたシャロンは、誰にも、もちろんケビンに対してもそのことを伝えられずにいた。そんな時、ある事件が起きて…。