東京・三鷹の森ジブリ美術館の企画展「手描き、ひらめき、おもいつき」展が、2019年11月16日(土)から2021年5月まで開催される。
「手描き、ひらめき、おもいつき」展は、今まで三鷹の森ジブリ美術館で行われてきた企画展示や、三鷹の森ジブリ美術館設立に至る経緯、建物の構想などに焦点を当てた展覧会。三鷹の森ジブリ美術館という建物と多彩な展示の歴史を、宮崎駿監督自身が描いた絵や文章を中心とする、約640点の膨大な資料と共に紹介する。
第一室では、第1回目の企画展示『千と千尋の神隠し』をはじめ、宮崎駿自身が携わった企画展示について紹介。どのようにして企画が生まれ、何を考えて修正し、伝えたいものに近づけていったのか。当時描かれた企画書やスケッチなどの資料を通して、スタジオジブリならではの創作プロセスに迫る。
展示物制作への力の入れ方は様々だが、宮崎監督が自身の伝えたいことを形にする際には、主に下記の4つの傾向があるという。イメージボードや漫画、言葉、絵など、様々な表現を駆使して理想に近づけていくという手法は、アニメーション作りにも共通しているのだろう。
1.“展示内容”や“展示したい物”が頭の中で確立している時は、イメージボードにてその詳細を丹念に描き、展示スタッフに制作の指示を出す。
2.“企画のテーマ”の内容や伝え方が難しいものは、思考の過程が伝わりやすい、漫画にて表現する。
3.“言葉での表現”が最も伝わりやすい時には、執拗に言葉を紡ぐ。
4.“補足”につけるイラスト1枚においても、面白さを追求した絵を描く。
たとえば、2002年に行われた企画展示「天空の城ラピュタと空想科学の機械達展」は、宮崎監督自らが『天空の城ラピュタ』という映画を生んだ“発想の原点”を披露したもの。この中では、映画に登場させた乗り物や炭鉱の町で起こった追撃騒動、空に浮かぶラピュタなどのイラストを新たに描いただけではなく、なんと短編の映画まで作ることで、その発想の源を解説している。
中でも、宮崎監督が特に興味を注いだのが乗り物だ。19世紀のイギリスで蒸気機関の発明と共に生まれた初期のSF小説を愛する宮崎監督は、そこに登場する“生き物”の雰囲気を残した珍妙奇妙な乗り物に多大な影響を受けているという。最初に紹介した傾向では「1」に該当するものだが、この展示において宮崎監督は、空想の力で作り出した乗り物や機械達を、緻密なイラストに描きおこしている。
一方の第二室では、スタジオジブリが美術館を作ろうと思い立った経緯や、アイデアが描きとめられたイメージボードを紹介。中でも特に注目したい展示物は、完成したジブリ美術館の作りがひと目でわかる立体模型だ。
立体模型の周りには、設計図面にまで修正を入れる宮崎駿の「建物」への思い入れが見て取れる図面や、構想段階のイメージボード、各展示エリアのアイディアを描いた資料などを展示することで、実際の美術館の姿と比較しながら見ることができる。