抽象彫刻のパイオニア・澄川喜一(すみかわきいち)の大規模個展「澄川喜一 そりとむくり」が、横浜美術館にて、2020年2月15日(土)から5月24日(日)まで開催される。
尚、横浜美術館は2020年3月31日(火)まで全館臨時休館。4月1日(水)以降の予定は横浜美術館公式ウェブサイトにて告知。
澄川喜一は、戦後日本の抽象彫刻を牽引してきた人物。彫刻家をこころざして東京藝術大学に進学し、彫刻専攻科で塑像(そぞう)を中心とする具象表現の基礎を学んだ後、藝大で教職につきながら数々の作品を発表した。やがて、木や石などの自然素材に対する深い洞察をへて、日本固有の造形美と深く共鳴する抽象彫刻「そりのあるかたち」シリーズを展開。このテーマは、今なお追究し続ける澄川のライフワークとなっている。
一方で、公共空間における造形の分野でも精力的に活動。東京湾アクアライン川崎人工島「風の塔」や東京スカイツリー(R)のデザイン監修など、都市の巨大構造物に関わる多彩な仕事でも注目を集めている。横浜市内においては野外彫刻や多くの公共造形物を手がけ、2013年には横浜文化賞を受賞した。
「澄川喜一 そりとむくり」は、首都圏の公立美術館では初開催となる、澄川喜一の大規模個展。最新作を含む約100点の作品や資料を通じて、60有余年におよぶ澄川の創作活動の全貌を明らかにする。
木彫の巨匠・平櫛田中(ひらくしでんちゅう)や、塑像(そぞう)の第一人者・菊池一雄から彫刻の基礎を学び、具象彫刻を出発点としながら、やがて先鋭な抽象彫刻に転じつつ、巨大な野外彫刻や建築分野との協働へと創作の領域をひろげていった澄川。
会場では、1959年に新制作展の新作家賞を受賞した《S君》や半抽象彫刻「MASK」シリーズなど最初期の作品や、東京藝術大学の助教授となった1975年以降に発表し、平櫛田中賞を受賞した代表作《そりのあるかたち-1》を通じて、創作活動の理知的な展開を垣間見ることができる。
澄川は思春期から青年期を過ごした山口県岩国市の名橋・錦帯橋(きんたいきょう)に魅了された経験を、自らの創作活動の起点としてしばしば語っている。戦禍をまぬがれた木造の橋の複雑な構造美と、下に向かってゆるやかに湾曲する「反り(そり)」、その逆に上に向かってゆるやかに湾曲する「起り(むくり)」のシンプルなかたちが、澄川の美の原点となっているのだ。
その後、東京藝術大学における具象彫刻の追及をふまえ、木という自然素材をみつめ、それに向き合う過程で、木の中に「そり」と「むくり」という自身にとっての本質的なかたち・美を見出していった澄川。今もなお取り組み続けるライフワーク「そりのあるかたち」シリーズに、彼の美学が遺憾なく表現されている。
1980年代以降、全国各地の野外彫刻を手掛けた澄川。環境や景観と切り離すことができない野外彫刻の追及から、やがて建築分野などとの協働による公共空間の造形や、都市の巨大構造物に関わる仕事にも積極的に取り組むようになる。現在、澄川の屋外彫刻・環境造形の仕事は、全国28都道府県120点以上に及ぶ。
会場では東京湾アクアライン川崎人工島「風の塔」や東京スカイツリー(R)のデザイン監修をはじめ、横浜市「鴨池橋」や、みなとみらい線馬車道駅《金波・銀波》などのプロジェクトを振り返る。
【詳細】
「澄川喜一 そりとむくり」
会期:2020年2月15日(土)~5月24日(日)
※横浜美術館は2020年3月31日(火)まで全館臨時休館を実施。4月1日(水)以降の予定は横浜美術館公式ウェブサイトにて告知。
場所:横浜美術館(神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4番1号)
開館時間:10:00~18:00 ※5月の金曜・土曜は20:00まで ※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜日
観覧料:一般 1,500円(前売1,300円/団体1,400円)、大学・高校生 900円(前売700円/団体800円)、中学生 600円(前売400円/団体500円)、小学生以下 無料、65歳以上 1,400円(要証明書、美術館券売所でのみ販売)
※前売券は2020年2月14日(金)まで販売
※団体料金は有料20名以上(団体券は美術館券売所でのみ販売、要事前予約)
※毎週土曜日は高校生以下無料(要生徒手帳、学生証)
※障がい者手帳を持参者と介護者(1名)は無料
※観覧当日に限り本展の観覧券で「横浜美術館コレクション展」も観覧可
チケット取扱い:横浜美術館(前売りはミュージアムショップ)、セブンチケット(セブンコード:080-416)、イープラス ※電子チケット「スマチケ」も利用可能。
【問い合わせ先】
横浜美術館
TEL:045-221-0300(代表)