松岡さんご自身は、出版業界や本にどのような思い入れがありますか?
松岡:私は、本がなかったらとても生活ができない、と思うくらい本は身近な存在ですし、本屋さんも大好きです。
本屋のどのようなところが好きですか?
松岡:やっぱり匂いが好きです!あと、本屋さんに行くと、全く出会う予定ではなかった本と出会えるところが好き。書店員さんが書いたポップに惹かれることもあるし、全然平積みにもなってないしポップもないけど、「なんか今日はこのコーナーが気になるな」と思ってタイトルに惹かれて本を買うこともあります。手に取ってみたり、2,3ページ読んでみて「ああ、読みたいぞ」と思ったりとか。
印象的だった“本との出会い“を教えてください。
松岡:ありがたくもいっぱいあるんですけど……。あ!私の大好きな作家の益田ミリさんにのめり込むきっかけも本屋さんでの出会いでした。
もともと、女優さんの先輩から益田さんの漫画『すーちゃん』を貸してもらったところから私の“益田さん生活“は始まったのですが(笑)、その時は益田さんが漫画の他にエッセイも書かれていることを知らなくて。本屋さんで益田さんの本を見かけた時に「『すーちゃん』かな?」と思って手に取ったら、それが『永遠のおでかけ』というエッセイでした。
『永遠のおでかけ』を読んでからはもう、ますます益田さんの書くものが大好きになって、本屋さんで見かける度に買っています。去年も益田さんの新刊が出ていたのですが、時間つぶしに入った本屋さんで「わー!新刊だ!」って嬉しくなって。そういうのも本屋さんならではですよね。
松岡さんは幼少の頃より俳優として長い期間活動されています。
松岡:8歳の時に芸能界に入ったので、芸歴で言うと18年になります。
8歳からキャリアをスタートさせたきっかけは?
松岡: 私は自分で選んで芸能界に入ったというよりは、私の家族が先に事務所に入って、その手続きについていったら「ちょっとやってみる?」と声を掛けられたところから始まりました。その場で「うん!」と答えたから今ここにいるのだとは思いますが、特に何かきっかけがあったとか、自分の意志で芸歴をスタートさせたわけではありませんでした。
8歳から18年間活動を続けるのはすごいことだと思います。
松岡:いえいえ、“芸歴18年”と言うとよく「苦労したんだね」「がんばったね」と周りの方は言ってくださるのですが、親の庇護下にいる子どもとしてやっていた時期が長かったので。
例えば、20歳から18年間演技に向き合ってきた人とは時間の流れが全く違う訳です。私には食事も寝るところもありましたし、洋服だって親に買ってもらって。1人で俳優を志してやってきた方たちの18年間とはとてもとても比較にならないというか……。うーん、体感で言うとまだ10年くらいですかね(笑)。きゅっと縮めて。
俳優として生きていく上で大事にしていることは何ですか。
松岡:生活を大切にすることです。料理を自分で作って食べることもそうだし、本を読むこと、洗濯をすること、お掃除をすること。たまにはいつも掃除してない場所を掃除してみるとか……。やはり1人暮らしをするようになってから意識するようになったのですが、生活をきちんとすることは最近特に大切にしています。
今までの活動を振り返って、転機となった出来事はありますか。
松岡: 2020年の春からしばらく舞台公演の無い時期が続いていて、夏頃に三谷幸喜さんの「大地」という舞台作品を観たんです。「大地」を観て、「お芝居は夢や希望を見せられるものなんだ」と改めて実感しました。
自分の無力さに胸が痛くなる日々を過ごして、本当は私もお医者さんみたいに、看護師さんみたいに命を救いたいけれど、そうはいかない。自分1人ではできないことが多すぎる、と思っていました。
でも「大地」を観て、もしかしたら私の演技でも「誰かを救えるのかもしれない」と確信することができた。改めて体全体で実感することができたんです。
舞台「大地」を観たことで芝居の持つ力を実感できた、と。
松岡:「本当にお芝居で誰かの人生を変えることができるんだ」と思えたのです。
振り返ってみれば、たとえば私が引きこもりの役をやった時には、引きこもりになった子から「学校に行ってみようと思います」というお手紙を頂いたり、産婦人科が舞台のドラマ「コウノドリ」に出演した時には、ドラマを見た学生さんから「助産師の学校に通うことにしました」とか「看護師になりました」というお手紙を頂いたりしたこともありました。
私の演技を見て人生の大きな選択をする人がいるって本当に奇跡みたいなことだけれど、演劇やドラマ、映画にはそれだけの力がある。私のお芝居が誰かの人生にとって、何かの救いや変化のきっかけのようなものになればいいな、と思っています。
映画『騙し絵の牙』は、2021年3月26日(金)公開。塩田武士による小説が原作となっており、小説発案当初から映像化や大泉洋主演のキャスティングまで視野に入れて描かれたという異色の作品だ。4年にわたる取材をもとに出版界の光と闇を描いた社会派ミステリー作品が、豪華キャストとともに映像化されている。
【映画情報】
映画『騙し絵の牙』
公開日:2021年3月26日(金)
原作:塩田武士『騙し絵の牙』(KADOKAWA)
出演:大泉洋、松岡茉優、宮沢氷魚、池田エライザ、斎藤工、中村倫也、坪倉由幸、和田聰宏、石橋けい、森優作、後藤剛範、中野英樹、赤間麻里子、山本學、佐野史郎、リリー・フランキー、塚本晋也、國村隼、木村佳乃、小林聡美、佐藤浩市
配給:松竹
〈あらすじ〉
手出版社「薫風社」に激震走る!かねてからの出版不況に加えて創業一族の社長が急逝、次期社長を巡って権力争いが勃発。専務・東松(佐藤浩市)が進める大改革で、雑誌は次々と廃刊のピンチに。会社のお荷物雑誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水(大泉洋)も、無理難題を押し付けられて窮地に立たされる…が、この一見頼りない男、実は笑顔の裏にとんでもない“牙”を秘めていた!嘘、裏切り、リーク、告発。クセモノ揃いの上層部・作家・同僚たちの陰謀が渦巻く中、新人編集者・高野(松岡茉優)を巻き込んだ速水の生き残りを賭けた“大逆転”の奇策とは!?
【衣装クレジット】
・エトロ/エトロ ジャパン TEL:03-3406-2655
・ジミー チュウ TEL:0120-013-700
・イレアナ・マクリ 伊勢丹新宿店 TEL:03-3351-7374
・リーフェ ジュエリー TEL:03-6820-0889
ヘアメイク:伴まどか
スタイリスト:山田梨乃