取材中に、そういった高度なシーンを体現していたのが、剣心と縁が体当たりで剣を交える場面だ。力強く跳ね返された一方の威力によって、バラバラと建物の壁が崩れていくバトルシーン特有の爽快な演出なのだが、全てスタッフの手作業で行われるこのシーンは、あらゆる要素のタイミングが一致しなければ、完成に至ることができない難しさを持つ。
開始の合図と共に、ワイヤーを引っ張る大勢のスタッフ。力いっぱい壁へと駆けあがり、剣を交える剣心と縁。しかしワイヤーの力加減や、ふたりの息が少しでもずれると、アクションとしては完結に至らず、バラバラと後方で空しく崩れ落ちた壁のセットを、また‟元通り”にするために、美術チームが駆け足でやってくる。
もうワンテイク…もうワンテイク…。映像にすれば、わずか数秒であろうこのバトルシーンだが、取材中に<完成>を見届けることは叶わなかった。
「ひとつのアクションが終わるごとに、舞台セットに草一本も生えないような感じになってます。」と笑いながら応える大友監督の表現は、決して大袈裟なものではないのだと直感的に感じる。チーム一眼となった莫大な熱量が、一瞬一瞬の演技に落とし込まれていることを、数時間という撮影風景の中で確かに感じることが出来たからだ。
「どんなに狭い場所でも、色んな工夫をこらして、動きだけで十分に伝わるアクションを、俳優や谷垣さん率いるアクションチームと共に作ってきました。そしてそんなアクションを魅せることはもちろんだけれど、美術セットや衣装、色んな‟仕掛け”を作るチームの支えや工夫があって、『るろうに剣心』は作られています。シリーズ史上最も高度なアクションシーンを用意した最終章。スタッフ・演者皆でギリギリまで追い込んだ『るろうに剣心』は、皆さんの期待を…・軽く超えているはずです(笑)」そう冗談交じりにも語る大友監督の表情は、最終章を迎える安堵と共に、確かな自信を垣間見せていた。
『るろうに剣心 最終章 The Final』4月23日(金)
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督・脚本:大友啓史
主題歌:ONE OK ROCK「Renegades」
出演:佐藤健 武井咲 新田真剣佑 青木崇高 蒼井優 伊勢谷友介 土屋太鳳 有村架純 江口洋介
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』6月4日(金)
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督・脚本:大友啓史
出演:佐藤 健 有村架純 高橋一生 村上虹郎 安藤政信 北村一輝 江口洋介
■映画『るろうに剣心 最終章 The Final』あらすじ
かつては“人斬り抜刀斎"として恐れられた緋村剣心だが、新時代の幕開けとともに、斬れない刀=逆刃刀”さかばとう”を持ち穏やかな生活を送っていた。最狂の敵・志々雄真実が企てた日本転覆の計画を阻止するため、かつてない死闘を繰り広げた剣心達は、<神谷道場>で平和に暮らしていた。しかし、突然何者かによって東京中心部が攻撃される。剣心とその仲間に危険が及んでくる。それはいったい誰の仕業なのか?何のために攻撃してくるのか?剣心は仲間とともに新時代への一歩を踏み出すことができるのか?
今まで明かされたことの無い剣心の過去に大きく関係し、決して消えることのない十字傷の謎へとつながっていく。