ディズニー映画『クルエラ』が、主演にエマ・ストーンを迎えて映画化される。1961年に公開されたディズニー映画『101匹わんちゃん』のヴィランとしておなじみのクルエラ・ド・ビルだが、本作では全く違う角度から生い立ちに迫っている。
1970年代のロンドンを舞台に、デザイナーを夢見る少女エステラが、復讐心に取りつかれたファッショナブルなクルエラへと変貌する、反抗的な若き日々を描く。
クルエラが大きく変貌した理由には、1970年代ロンドンにおけるファッションムーブメントが関係している。今回はその時代背景とともに、破壊的かつ復讐心に満ちたヴィランでありながら、流行を発信するアイコニックな存在であるクルエラのファッションを紐解いていく。
少女エステラは、ファッションデザイナーになる夢を実現すべく、ロンドンへと飛び立った。日々裁縫やデザイン画に打ち込みながら、清掃員としても働いていた中、彼女の旺盛な悪戯心を気に入った若い2人組の泥棒と友だちになり、3人で力を合わせればロンドンのストリートで生き抜けることを知る。
そんなある日、ファッション界のレジェンド的存在であるカリスマデザイナーのバロネスと出会い、あることをきっかけにエステラは覚醒。強気で大胆なパンクファッションに身を包み、自信の欲望に目覚めたクルエラとして生きていく。
物語の舞台となる1970年代ロンドンでは、社会やファッション・シーンにおいて非主流から沸き起こったムーブメントと、すでに軸を成していた主流の間で、文化的な衝突が起こっていた。この衝突のうちに、クルエラの人格が成り立ったといっても過言ではない。
主流と言えるのが、後にモッズ・ルックを生み出したマリークヮント(Mary Quant)といった伝説的なブランドが象徴する上層階級の人々のファッションの世界。一方で、非主流にあたるのが、その経路を外れたパンク・ムーブメントの「スクワッター(不法占拠者)」たちによる、独創的で野心的な独学のデザイナーたちが活躍する世界だ。
ちなみに、この非主流は、セックス・ピストルズのマネージャーであり、パンク・ムーブメントのトレンドセッターとして知られるマルコム・マクラーレンと、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)のショップ「セックス」に端を発したと言われる。攻撃的で過激なファッションや音楽は、当時不況下にあったロンドンの若者たちの心を掴んでいった。
そして映画の中でのクルエラはというと、非主流=パンク・ムーブメントの世界でアイコニックな存在として生きている。
ファッション史に大きな分岐点をもたらした1970年代ロンドンの世界を表現するため、もっとも重要な本作の“衣装”を担当したのが、2度のアカデミー賞に輝く衣装デザイナーのジェニー・ビーヴァン。キャラクターが“生き生きとロックする”コスチュームを調達すべく、専門家によるチームを招集した。
彼女は「これは私がこれまでやった中で最も大きな仕事です。」と語っている。なぜなら、『クルエラ』では、エマ・ストーンに47着の衣装チェンジがあり、エマ・トンプソンに33着、ジョエル・フライとポール・ウォルター・ハウザーにそれぞれ30着の衣装を提供したという。
クルエラの衣装は、“ブラック”“レッド”“ホワイト”のカラーリングをメインとし、大胆不敵に表現されている。