企画展「ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」が、愛知県美術館にて、2022年1月22日(土)から3月13日(日)まで開催される。
ドロテ&コンラート・フィッシャー夫妻によって、1967年にドイツ・デュッセルドルフで立ち上げられたフィッシャー・ギャラリーは、ドイツ国内に限らずヨーロッパ諸国やアメリカの同時代作家をいち早く紹介し、ミニマル・アートとコンセプチュアル・アートの国際的な展開において重要な役割を担ったことで知られる。
フィッシャー・ギャラリーに保管されていた作品や資料は、近年デュッセルドルフのノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館に収蔵された。企画展「ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」では、これらの作品や資料、そして日本国内で所蔵される作品を展示し、1960年代から70年代にかけてのミニマル・アートとコンセプチュアル・アートの動向を紹介する。
1960年代の若い作家は、50年代にアメリカを中心に興った抽象表現主義に対して、憧れとともに反発心を抱いていた。彼らは、抽象表現主義の絵画に見られる直感的な色彩やフォルムの配置、身振りの痕跡のように作家の個性を示す表現性を退け、幾何学的で単純な形の絵画や彫刻を手がけた。これらはミニマル・アートと呼ばれるようになる。
フィッシャー・ギャラリーは、ミニマル・アートの代表的な作家であるカール・アンドレを最初の展覧会で取り上げている。工業的に生産された金属の板やブロックを用いて制作されたアンドレの作品は、人の手で容易に解体・再構成されうるものであり、作品や作家に対する従来の考えを揺らがせた。また、同ギャラリーで60年代に紹介されたダン・フレイヴィンは、規格化された既製品の蛍光灯をあえて使用することで、制作に直感的な判断が入り込む余地を排除したのだった。
さらにソル・ルウィットは、1968年にフィッシャー・ギャラリーで発表した新作《隠された立方体のある立方体》を実現するために、コンラート・フィッシャーに宛てて作品の指示書を送っている。ここで作品は、作家の手で直接作られるのではなく、制作指示書を通して技術者によって制作されるのであり、指示書はミニマル・アートにおける作品制作の様相をよく示すものだといえる。
ミニマル・アートの作家が新たな美術のあり方を提示してゆくなかで、芸術制作において重要なのは作品の構成を決めるコンセプトだとする考え方が現れる。そうした態度は、起床時間を記した絵葉書を知人に毎日送り続けた河原温などにも見ることができる。また、ギルバート&ジョージは自らを「生きた彫刻」と捉え、彼らの行為の記録が物理的な作品として残されることになった。
18人の作家を取り上げる本展では、作品ばかりでなく、作品の制作プロセスを示す書簡や指示書、作品の発表当時の様子を示す写真資料などを豊富に展示。直感的・個性的な表現の偏重からの解放、作品制作を担う唯一の存在としての作家の否定、そしてコンセプトの重視など、現代美術の源流となった1960年代から70年代の美術動向を振り返る。
企画展「ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」
会期:2022年1月22日(土)〜3月13日(日)
会場:愛知県美術館
住所:愛知県名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター 10階
開館時間:10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)
※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日
観覧料:一般 1,400円(1,200円)、高校・大学生 1,100円(900円)、中学生以下 無料
※( )内は前売券および20名以上の団体料金
※上記料金で同時開催のコレクション展も観覧可
※身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳のいずれかの所持者、また、その手帳に「第1種」または「1級」と記載のある場合の付添者は1名まで、各料金が半額(当日会場にて、各種手帳(ミライロID可)を提示)
■出品作家
カール・アンドレ、ダン・フレイヴィン、ソル・ルウィット、ベルント&ヒラ・ベッヒャー、ハンネ・ダルボーフェン、河原温、ロバート・ライマン、ゲルハルト・リヒター、ブリンキー・パレルモ、ダニエル・ビュレン、リチャード・アートシュワーガー、マルセル・ブロータース、ローター・バウムガルテン、リチャード・ロング、スタンリー・ブラウン、ヤン・ディベッツ、ブルース・ナウマン、ギルバート&ジョージ
【問い合わせ先】
愛知県美術館
TEL:052-971-5511 (代)