篠原涼子が、2022年3月12日(土)公開の映画『ウェディング・ハイ』で主演を務める。演じるのは“絶対にNOと言わない”敏腕ウェディングプランナー中越真帆だ。
バカリズムが脚本を務めた『ウェディング・ハイ』は、“結婚式”が舞台のドタバタ群像コメディ。篠原涼子にインタビューを実施すると、物語やキャラクターの魅力をたっぷりと語ってくれた。
そして話題は、篠原涼子が考える“役者という仕事の醍醐味”にも。芸能界入りした当初、「女優だけは絶対にやりたくなかった」と考えていたという篠原涼子が、30年以上も演じ続けている理由とは?
・映画『ウェディング・ハイ』は、バカリズムさんによるコミカルなストーリー展開が魅力ですね。
スピード感のある“ドタバタ劇”に仕立てられていて、とても面白かったです。バカリズムさんの脚本は、キャラクター設定がとても細かくて。 “ウェディング”ムービーですが、結婚式の主役である新郎新婦だけでなく、裏方であるウェディングプランナーや参列者にいたるまで、登場人物一人ひとりの生きざまをしっかりと丁寧に描いているのが印象的でした。
・個性豊かな登場人物の中で、篠原さんは主人公のウェディングプランナー中越真帆を演じました。
中越は、絶対にNOと言わない敏腕ウェディングプランナーという設定。“敏腕”と聞くとスマートなイメージを持つ人もいると思うのですが、中越は「一生懸命だけど、パーフェクトじゃない」というところがすごく魅力的でした。無理難題を押し付けられても、「一生に一日しかない日を大切にしてあげたい!」「NOと言わずに、なるべくやってあげたい!」と頑張っちゃう気持ちには、私自身もすごく共感できましたね。
・人間味にあふれたキャラクターでしたね。
不器用な部分が見え隠れして、誰もが共感ポイントがあるようなキャラクターでした。私がこれまで演じてきた役の中には、まるで血が通っていないかのような(笑)クールなキャラクターもいましたが、そういった人物とはまた違った魅力がありましたね。なんでもパーフェクトにできるわけではないけれど、だからこそ、みんなが応援したくなるような魅力がありました。
・中越のキャラクターを作りあげる上で、意識したポイントはありますか。
実は『ウェディング・ハイ』の監督を務めた大九明子さんの表情や動きを、役作りの参考にさせてもらったんです。大九監督とは今回の撮影で初めてご一緒させていただいたのですが、お話しているうちに「大九監督って、中越に似てるな」って気がついて(笑)。
・大九監督と中越に、近しいものを感じたのですね。
そうなんです。大九監督は、第一印象はさばさばしていて、しっかり者という感じ。でも、撮影が進むにつれて、ちょっとした隙がみえてきて(笑)。監督として髪を乱しながら現場を取り仕切っている大九さんと、ウェディングプランナーとして走り回っている中越の姿が重なりました。『ウェディング・ハイ』は出演者が多いですから、撮影現場そのものもまさに“ドタバタ劇”だったんです。
・個性的な登場人物が次から次へと出てくるところも、『ウェディング・ハイ』の見どころですね。
共演者のみなさんは、編集でカットするのがもったいないと思うくらい、存在感のある演技をしていました。みんな「みてくれ!みてくれ!」という“でたがり”な感じで、濃いメンバーでしたね(笑)。そういう私も普段は“やりたがり”なんですが(笑)、今回は他のキャラクターがあまりにも個性的だったので、我を出しすぎないようにこころがけて演じました。
・主演だけれど、他の役者さんをたてるように演じたと。
結婚式の裏方であるウェディングプランナーという役柄もあって、あくまでも結婚式の主役である新郎新婦、参列者をたてることを意識して演じました。共演者の方の演技が引き立つように、でしゃばりすぎず、あくまでも控えめに、ということを意識しましたね。
・特に印象に残った共演者の方はいますか?
高橋克実さんの「笑わせようとせず、さりげなく笑いにもっていく」というお芝居は参考になりました。私は、コメディだから「人を笑わせよう、明るく演じよう」とか、シリアスな作品だから「重々しい空気を出そう」とか、そういう演技は一番やっちゃいけない、と常々思っているので。
・作品のジャンルに捉われないように演じているのですね。
はい。作品のジャンルや、キャラクターの肩書に捉われすぎないことが、演じる上では大事だなと。コメディであれミステリーであれ、あくまでも作品の中の人物が「何を思って」「どう動くだろう」ということだけを考えて演じるようにしています。
・コメディからミステリーまで様々な作品に出演し、30年以上、女優業を続けています。そもそも、芸能界入りのきっかけは何だったのでしょうか。
もともとはアイドルとして芸能界に入りました。実は私、芸能界に入る時に「女優だけは絶対にやりたくない」と思っていたんです。
・役者の道に進むつもりがなかったのですね。その理由は?
セリフを暗記することができないと思っていたからです。覚えることが、とにかく苦手で(笑)。あと、自分に正直で不器用な性格なので、人前で演技をするなんて器用なことはできないと思っていました。演じるうえでは、笑いたくない時に笑ったり、泣きたくない時に泣いたり、その時の自分の気持ちとは違う演技をしなければならない場面もあると思っていたので。
・自分に嘘をつかなければならないような場面で、上手く演じる自信がなかったのですね。
はい。役者という仕事に憧れはあるけれど、「自信が無い私なんかがやっちゃだめだ」という想いが強かったです。「下手な演技をして、笑われちゃう、恥ずかしい」と思っていました。
・「絶対にやりたくなかった」という女優の世界で、いま現在は大きな存在感を放っています。
ありがとうございます。ここまで連れてきてくれた周囲のみなさんに感謝ですね。絶対にNOと言わない『ウェディング・ハイ』の中越のように、私自身も基本的にはYESマンで。気が小さいので「やれっ」と言われたら「はいっ」と言ってやっているうちに、女優業がどんどん楽しくなっていきました。「変顔をするシーンなんて、ちょっと嫌だなー」と心の中では思っていても、「やらないと今日は帰れないんだ」と考えなおして、「はい!わかりました!」と言って、ここまでやってきました(笑)。
・演技が楽しくなったきっかけは、何だったのでしょうか?
自分の演技を見てくれた人からの“誉め言葉”が、自信や勇気になりました。私は、褒められると木に登る性格なので(笑)。私の演技を見て、褒めてくださったみなさんの言葉一つひとつが、女優業を頑張る糧になっています。褒められると、仕事へのモチベーションが上がる。その気持ちが感謝に変わり、たくさんの人へ作品を届けたいという意欲が湧いてくる。私の中では、そんなサイクルが回っています。
・褒められることで好循環が生まれて、女優として成長していったのですね。
そうですね。お芝居を見てくれた方からの誉め言葉やエール、それからスタッフや共演者の方々に、女優・篠原涼子が“育てられてきた”という感覚があります。
・女優として存在感を放つようになった篠原さんがいま思う、役者という仕事の醍醐味は何でしょうか。
多くの人たちに支えられて舞台に立つことができる、それこそが女優という仕事の醍醐味だなと。1つの作品が出来上がるまでにたくさんの人が関わっていますから、裏方も表舞台に立つ役者も一体となって、チームとしてものづくりをしている瞬間に一番やりがいを感じます。汗水たらして、私たち役者をバックアップしてくれるスタッフのみなさんの働きぶりを見て、“手作り感”のようなものを感じる瞬間も好きです。
・チームとしてものづくりをしている瞬間に、やりがいを感じるのですね。
チーム一体となって楽しい作品を作れるような人間になることが、これから目指したい理想の役者像でもあります。実は、若い時に撮影でご一緒させていただいた緒形拳さんの振る舞いが、今でもずっと記憶に残っていて。その時の経験からも、現場でのチームワークを大切にしています。