草彅剛にインタビュー。草彅は2022年8月19日(金)公開の映画『サバカン SABAKAN』に出演する。
映画『サバカン SABAKAN』 は、1986年の長崎を舞台に、“イルカを見るため”に冒険にでる二人の少年の〈ひと夏〉を描いた青春物語。草彅は、少年の一人・久田孝明の大人時代を演じる。
映画『ミッドナイトスワン』で日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞を受賞するなど、確かな演技力で多くの人々を魅了する俳優でありながらも、音楽、司会、YouTubeなど枠にとらわれずにマルチに活躍し続ける草彅。公開に先駆けて実施したインタビューでは、『サバカン SABAKAN』の魅力から、数ある活動を通して感じる俳優業の面白さに至るまでたっぷりと話を伺えた。
■『サバカン SABAKAN』は、草彅さんが朗読を務めるラジオドラマとして発表される予定だったそうですね。当初、作品からどのような印象を受けましたか?
『サバカン SABAKAN』は、何か特別に大きな事件が起こる作品ではないですが、劇中に登場するピュアな心を持った少年たちがとにかく魅力的。ラジオドラマを収録する過程で、物語の世界に入り込んでしまうほど感動したことを覚えています。
■収録時には続きが読めないほど泣いてしまったとか?!
久ちゃん(久田孝明)と竹ちゃん(竹本健次)が登場するシーンでぐっとくる場面があるのですが、僕はナレーションだから泣いてはいけないのに、読めなくなるほど泣いてしまいました(笑)。その時は監督に5分ぐらい待ってもらってから、撮り直しましたね。
■そんな感動作『サバカン SABAKAN』が映画化されると聞いて、どんなことを思いましたか?
“ようやく世に出すことが出来る”と思ってめちゃくちゃ嬉しかったです。涙を流しながら取り組むほど感動した作品だったのに、「ラジオドラマの企画はなくなった」とある日突然言われて悔しい思いをしたので尚更そう思いましたね。
ほぼ収録を終えていたにも関わらず企画倒れになってしまったラジオドラマに続き、僕は映画の出演も決まったわけですが、実は僕の役柄はラジオドラマにはなかったものだったんですよ。当初から作品に関わっていた僕を映画に出さないのは申し訳ないと思って、監督がわざわざ作ってくれたんじゃないかな(笑)。何はともあれ真相は分かりませんが、僕の役があった方がより物語が分かりやすくなったので、携わることができて良かったなと思います。
■ 今振り返ってみて、ラジオドラマの現場は必要だったと感じますか?
はい。監督の中にあったラジオドラマが、僕と会ったことで色々と膨らんで、新しい構想が出来たと思うので、 『サバカン SABAKAN』という作品を最も良い形で届けるにはラジオドラマが必要だったと思います。いい意味でラジオドラマは“大きなリハーサル”だったんじゃないかな。
■映画で描かれていた少年時代の思い出は、大人になった彼らの心の支えであったと思います。草彅さんにとってそのような思い出はありますか?
この映画のように、小さい頃に友だちと過ごした日々は、今の僕を作り上げるうえで欠かせない思い出です。幼少期は田舎で暮らしていたのですが、友だちと一緒に田んぼや畑で昆虫を捕まえたり、川でザリガニを捕まえたり、毎日のように自然と触れ合っていました。映画と同様に僕も80年代に幼少期を過ごしたわけですが、スリリングなことも味わえた自然からは学ぶことが多かったですし、それを友だちと一緒に経験することで心が強くなった気がします。
■今の仕事にも活きている、と。
はい。やはり役作りをするにはリアルな経験が何よりも大事。幼少期の記憶は芝居をする上ですごく活きていると思います。
■そんな大事な日々を過ごした幼少期から、変わらずに好きであり続けるものはありますか?
山や海といった自然は今でも好きかな。もちろん都会的なものに憧れる時期もありましたが、『サバカン SABAKAN』の舞台である長崎のような自然豊かな風景が落ち着きます。
あとファッションも昔から好き。「この半ズボン嫌だから学校に行きたくない」とか小さい頃から文句つけていました(笑)。
■ 『サバカン SABAKAN』のテーマの一つに“友情”がありますが、草彅さんにとって友だちとはどのような存在ですか?
“1番大事なもの”だと思っています。もちろん家族も大事ですけど、やっぱり友だちといた方が強くなれる。あと、初めて訪れる場所や初めて知る感覚など、何においても人生で初めてを体験する時には、隣に友だちがいた気がします。しかも友だちと一緒にいる方が色々なことに気付きやすいと思うんですよね。だから、友だちは自分を成長させてくれる大切な存在。そんな風に思っています。
■新しいことに挑戦する時も、友だちの影響を受けるのでしょうか?
はい。近くにいる人の影響はダイレクトに受けやすいので、自分が挑戦することすべてと言えるほど友だちきっかけが多いと思います。
■実際に、枠にとらわれずにあらゆることに挑戦されていますが、ご自身を突き動かす原動力は何でしょうか?
好きなものを買うことかな。ヴィンテージギターや古着など欲しいものが沢山あるので、そのために仕事をしようって思います。あとは美味しいものを食べること。仕事が終わったらこんな美味しいものが食べられると思う気持ちもモチベーションになっています。頑張ったら好きなものを買える、美味しいものを食べられる、ご褒美があると思うと結構頑張れるので、ぜひみなさんもトライしてみてほしいです。
■ちなみに今、欲しいものは何ですか?
ヴィンテージのデニムです。たくさん持っているのですが、 欲しいものは尽きません。
■草彅さんの出演作は、トランスジェンダーを題材にした『ミッドナイトスワン』、映画初出演の子役が主演を務める『サバカン SABAKAN』と、挑戦的な作品が続いていますね。
そうですね。でも特に自分では作品を選んでいなくて、マネージャーさんが選んでくれています。作品も役もすべてが縁なので、僕はいただいたものをやるだけ。ただ素敵な縁が続いているだけです。
■作品と向き合う時に大切していることはありますか?
監督を信頼することです。監督は、チームのボスあり、作品をハンドリングする存在なので、全身全霊で監督の声や気持ちに耳を傾けることを意識しています。
■多方面で活躍されている草彅さんですが、俳優業にはどのような魅力を感じていますか?
初めて会う人、初めて行く場所、初めて知る感情など、様々な初めてを経験することで、“新しい自分”に出会えることが俳優業の魅力だと思っています。
たとえば先日は、『拾われた男』という作品の撮影で、アメリカ・ミシガン州にあるカラマズーという場所に行ったのですが、元々見たことも聞いたこともない場所だった。そういう知らない場所に行けるということが、僕の人生においてとてもスペシャルなことですし、その場所で役を演じることで、“こういう感情が湧き出てくるんだ”って感じながら、新しい自分に出会えるというのがお芝居の素敵なところだと思います。
■大人になるとどうしても好奇心が薄れてきてしまうと思いますが、そのようなことはないのでしょうか?
『サバカン SABAKAN』で演じた僕の役柄もそうですが、大人って大抵のことに慣れて、何をやるのも億劫で動かなくなってしまいますよね。でも色々なことを経験して、色々な知識を深めた大人だからこそ、また子どもから始めるような感覚で好奇心を持って生きると、さらに人生が楽しくなると思うんです。だから僕は、全然好奇心が尽きませんし、むしろ毎日時間が足りなくて困るくらいやりたいことがいっぱいあるんです (笑)。
僕には小さな甥がいるのですが、一緒に遊ぶたびに子どもの頃のピュアな気持ちを思い出しますし、彼からたくさんのことを学びます。『サバカン SABAKAN』という作品にも、それと同じように好奇心旺盛だった子どもの頃の気持ちを取り戻せる要素がたくさん詰まっているので、ぜひ大人にも見てほしいです。
公開日:2022年8月19日(金)
出演:番家一路、原田琥之佑、尾野真千子、竹原ピストル、村川絵梨、福地桃子、ゴリけん、八村倫太郎、茅島みずき、篠原篤、泉澤祐希、貫地谷しほり、草彅剛、岩松了
監督:金沢知樹
脚本:金沢知樹、萩森淳
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