フランス映画『あのこと』が、2022年12月2日(金)にBunkamura ル・シネマ 他にて全国順次公開公開される。
2021年ヴェネチア国際映画祭にて、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ率いる審査員満場一致で最高賞である金獅子賞を受賞した映画『Happening(英題)』が、映画『あのこと』として日本公開。
『あのこと』の物語の舞台は1960年代のフランス。当時のフランスでは法律で中絶が禁止され、処罰されていた。そんな中、望まぬ妊娠をした主人公の大学生・アンヌは自らが願う未来をつかむため、あらゆる解決策を模索。迫りくるタイムリミットに焦燥しながらも、1人で戦うアンヌの12週間が描かれる。
『あのこと』の特別な魅力は、アンヌと身も心も“一体化”したかのような没入感だ。アンヌの「恐怖と怒りと情熱」を一部始終“体感”できる、溺れるほどの臨場感が観客に迫る。アンヌが時の経過とともにどんどん孤立し追い詰められていく様子や、全編を通してアンヌにぴったりと肉薄した鬼気迫る映像が、ヒリヒリとした鮮烈な「体験型」映画体験をもたらす。
監督を務めるのは、本作をきっかけに世界中から注目を集めるオードレイ・ディヴァン。原作は、アニー・エルノーが自身の実話を基に書き上げた小説『事件』だ。尚、アニー・エルノーは、日本時間2022年10月6日(木)、ノーベル文学賞受賞が発表された。
〈アニー・エルノーから映画『あのこと』への手紙〉
映画『あのこと』を鑑賞し、私はとても感動しています。オードレイ・ディヴァン監督に伝えたいことはただ一つ。「あなたは真実の映画を作った」ということです。
ここでいう真実味というのは、法律で中絶が禁止され、処罰されていた1960年代に、少女が妊娠することの意味にできる限り、真摯に近づいたという意味です。この映画は、その時起こったことに、異議を唱えるわけでも判断を下すわけでもなく、事実を劇的に膨らませているわけでもありません。オードレイ・ディヴァンには、1964年のあの3ヶ月間に私に起きた残酷な現実のすべてを、臆せず見せる勇気がありました。また、「23歳の私自身」でもあるアンヌを演じるのは、アナマリア・ヴァルトロメイ以外には考えられません。当時のことを覚えている限りでは、彼女はとてつもなく忠実かつ正確に演じています。
20年前、私は本の最後に、1964年のあの3ヶ月間に私に起きたことは、私の身体があの時代と当時のモラルを「総合的に経験」した結果だと書きました。中絶が禁止されていたあの時代から、新しい法律の制定へ。私が描いた真実を、オードレイ・ディヴァン監督は、映画の中で余すことなく伝えてくれました。
主人公のアンヌを演じるのは、アナマリア・ヴァルトロメイ。子役時代に『ヴィオレッタ』で娘役を務めるなど活躍し、『あのこと』の演技でセザール賞を受賞した。
〈映画『あのこと』あらすじ〉
1960年代、中絶が違法だったフランス。大学生のアンヌは予期せぬ妊娠をするが、学位と未来のために今は産めない。選択肢は1つ。
アンヌの毎日は輝いていた。貧しい労働者階級に生まれたが、飛びぬけた知性と努力で大学に進学し、未来を約束する学位にも手が届こうとしていた。ところが、大切な試験を前に妊娠が発覚し、狼狽する。中絶は違法の60年代フランスで、アンヌはあらゆる解決策に挑むのだが──。
【詳細】
映画『あのこと』
公開日:2022年12月2日(金)
監督:オードレイ・ディヴァン
出演:アナマリア・ヴァルトロメイ、サンドリーヌ・ボネール
原作:アニー・エルノー『事件』
配給:ギャガ
2021/フランス映画/カラー/ビスタ/5.1ch デジタル/100 分/翻訳:丸山垂穂