企画展「近代日本の視覚開化 明治──呼応し合う西洋と日本のイメージ」が、愛知県美術館にて、2023年4月14日(金)から5月31日(水)まで開催される。
明治時代の日本は、近代国家として欧米諸国に比肩するため、西洋の知識や技術を学ぶとともに、日本のイメージを対外的に示すことを試みた。こうしたなか、日本の政治経済や人びとの生活は大きく変化することとなる。これは造形活動の領域にも当てはまる。「美術」という概念がもたらされ、その訳語が生まれたのも、この時代のことである。
近代への転換期に西洋から伝えられた知識や技術は、当時の日本の人びとに新たなものの見え方や見方、見せ方を育むものであった。企画展「近代日本の視覚開化 明治──呼応し合う西洋と日本のイメージ」では、明治期日本にもたらされた「視覚」の在り方に光をあて、絵画や写真、彫刻、印刷物、工芸などから、日本と西洋のイメージが交錯するさまざまな表現を再考してゆく。
幕末の日本では、西洋の新しい技術を研究し、実践する人びとが現れるようになった。たとえば開港地の横浜では、初代五姓田芳柳(ごせだ ほうりゅう)をはじめとする五姓田派が、西洋絵画を擬似的に模した従来の技法と、西洋絵画の技法を同時に実践している。第一章では、模倣から始まり次第に本格化してゆく絵画や写真などの展開を、初代五姓田芳柳《西洋老婦人像》や五姓田義松《鮭》などの作品とともに紹介する。
明治時代、政府は殖産興業を念頭に、西洋の技術の学習と利用を奨励し、美術教育の体制も整えた。その例として、明治9年(1876年)に開校した日本初の官立美術教育機関「工部美術学校」を挙げることができる。第二章では、明治時代の美術教育に着目し、工部美術学校や東京美術学校などにおける美術の専門教育、小学校をはじめとする普通教育の図画教育、そして図画教科書などに光をあてる。
第3章では、明治時代の印刷技術と出版物にフォーカス。明治前期、印刷物には江戸時代以来の木版が用いられていたものの、大量印刷が可能な銅版印刷や石版印刷が西洋からもたらされたことにより、印刷技術の主流は徐々にこれらへと移ることになる。また、文字については活版印刷が実用化され、雑誌や書籍、新聞などの新しいメディアが急速に浸透した。ここでは、木版、石版や銅版といった多様な印刷技術に加えて、地図、美術雑誌、そして肖像など、当時出版されたイメージの数々を紹介する。
開国後、日本の技術やイメージをアピールする場となったのが、国内外で開催された博覧会であった。実際、陶磁や漆器、七宝など、高度な技術で制作された日本の工芸は海外で高く評価されている。こうしたなか、政府は輸出工芸を積極的に促し、多くの職人がその制作に参入するとともに、民間の輸出産業が発達することになった。第4章では、明治時代に日本から海外に発信された造形に着目し、初代宮川香山や森村組などの作品を展示する。
企画展「近代日本の視覚開化 明治──呼応し合う西洋と日本のイメージ」
会期:2023年4月14日(金)~5月31日(水)
会場:愛知県美術館
住所:愛知県名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター 10階
開館時間:10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)
※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日
観覧料:一般 1,500円(1,300円)、高校・大学生 1,200円(1,000円)、中学生以下 無料
※( )内は前売および20名以上の団体料金
※上記料金で本展会期中にかぎりコレクション展も観覧可
※割引については美術館ウェブサイトを参照
【問い合わせ先】
愛知県美術館
TEL:052-971-5511(代表)